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4/6/2026, 2:18:13 AM

拝復
春浅き空のもと、やわらかな光の兆しが、ようやく雲間に覗く頃となりました。
体調は快復していますでしょうか。

先日のお手紙、胸に抱くようにして拝読いたしました。

長雨に閉ざされた日々の中で、貴方がどれほど心細く、また静かに耐えておいでであったかと存じます。
されど、その苦しみの折に、わずかでも私の言葉が安らぎとなり得たのなら、それに勝る喜びはございません。

人の想いとは、まことに不思議なものでございますね。
触れ得ぬ距離にありながらも、確かにそこに在り、時に痛みを和らげ、時に胸を締めつけるものでございます。
それはまるで、夜空に瞬く星のように、手を伸ばせば届きそうでいて、けれど決して掴むことのできぬ、遠き光に似ております。

貴方が織姫と彦星に喩えられたその想い、
私もまた、同じ空を仰ぎながら胸に抱いております。
天の川は隔てるものにあらず、むしろ互いの存在を確かめ合うための、静かな導きであるのかもしれません。

今宵、もしも星がよく見えるならば、どうか少しだけ夜空を見上げてみてくださいませ。
私もまた同じ時刻、同じ星空の下にて、そっと視線を上げております。

たとえ言葉を交わせずとも、
たとえ手を取り合えずとも、
星の下にて想いを重ねるその一瞬は、
確かに私達を結びつけてくれることでしょうね。

願わくば、次に巡る季節の折には、
貴方と並び、同じ星を見上げることが叶いますように。
敬具

4/5/2026, 2:01:48 AM

ひび割れたティーカップの底で
眠っていた砂時計が ふいに息をつく
流れる粒は 過去でも未来でもなく
ただ 今という名のきらめき

白いうさぎは 遅刻の理由を忘れて
懐中時計を花に植えた
やがて咲いたのは 数字のない時刻
誰も急がぬ やわらかな午後

涙をひとつ落とせば
それは小さな湖となり
大きい瓶も持たぬまま 渡ることになるけれど
足先に触れる水は 不思議とあたたかい

帽子屋は 名前のない帽子を差し出し
「似合うかどうかなど どうでもいい!」と笑う
鏡の向こうのあなたは
少し違う顔で 同じ頷きを返す

まっすぐでなくとも ほどけたままでも
揃わぬ靴音で歩く道にも
ちゃんと風は吹き 物語は続く

だから
欠けたままの月も
迷ったままの心も

それでいい

4/3/2026, 11:41:55 AM

前略
眠りの森に迷い込んだ小鳥が、やわらかな夢の中で羽を休めるように、いまの貴方もまた、静かな国でお身体を癒しているところでしょう。
お加減はいかがでございましょうか。

さて、今宵はひと匙の元気を、
そっと貴方へお届けしたく筆を執りました。

白うさぎは小さな元気を落としてしまわれました。
ポケットの奥で跳ねては、時折顔を出して
「さあ、おいで」と手招きをいたします。

けれども、無理に追いかけてはなりません。
元気というものは、追えば逃げ、待てばそっと肩に留まる、気まぐれな蝶のようなもなのです。

たとえば、紅茶の湯気の中に。
たとえば、枕のやわらかさの中に。
たとえば、私がこうして綴る、言葉の隅に

こつん、と小さく潜んでいるものなのです。

どうか焦らないでください。今日はただ、静かにまどろみの国へ足を踏み入れてくださいませ。
紅茶の湯気の中で、時間は逆さまに歩きだし、
痛みは笑い声へと変わっていくことでしょう。

そして、もし夢の途中でお目覚めになりましたら、
思い出してくださいませ。
遠く離れていても、私は貴方のそばで、
「だいじょうぶ」と何度でも囁いておりますことを。

私の願いはひとつだけ。
貴方が明日、ほんの少しでも軽やかな心で、
「おはよう」と呟けますように。

貴方の明日へ転がるその小さな元気が、
やがて大きな笑顔になりますように。

貴方の回復を心よりお祈り申し上げます。
草々

4/2/2026, 12:10:03 PM

拝啓
桜の雨がしとやかに降り、水面に淡き彩りを添える折となりましたが、身体にお変わりはありませんか?

この頃は、花びらがひとひら舞い落ちるたびに、目には映らぬ想いというものへ、ふと心を寄せることが増えてまいりました。

『星の王子さま』にて、キツネが
「大切なものは目に見えない」と語った節があります。

この一節は、初めて触れた折より幾度となく胸中で反芻してしまうほど、私にとってかけがえのない言葉でございます。

人と人との結びつきや、胸に宿る愛情。この世には、目には映らぬものがあまりにも多くございますね。
ゆえに、自らの想いを言葉にせねば伝わらぬものと心得てはおりますが、それでもなお、私の拙い言の葉では、貴方へ想いを尽くしきれてはいないのではないかと案じておりました。

けれど貴方は、私のささやかな仕草や、ふとした表情、声の揺らぎまでも、そっと掬い上げてくださいます。

そのたびに、言葉にせずとも通い合う心があるのかと、不思議に思っておりました。
しかしながら、それは決して当たり前のことではなく、
貴方が私を慈しみ、心の目で見つめてくださっているがゆえの賜物なのだと、今では静かに胸へと染み入っております。

この胸に宿る想いは、姿こそ持ちませんが、
いついかなる時も、貴方へとまっすぐに向いております。

目には映らずとも、確かに此処に在るもの。
触れ得ずとも、ぬくもりをもって寄り添うもの。
そのような“見えぬ大切なもの”を、これからも貴方とともに、愛してゆきとうございます。
敬具

4/1/2026, 2:23:15 PM

チクタク時計が逆さに鳴いて
昨日が明日を追い越した
うさぎは笑って嘘をつき
「ほんとうなんてつまらない」

トランプ兵はくるりと舞って
ハートの女王はくしゃみした
「首をはねよ!」は冗談で
首はむしろ伸びていく

紅茶は空から降ってきて
カップはくるくる逃げ出した
飲めば飲むほど小さくなって
言葉はどこかに迷い込む

ねえねえ今日は何の日なの?
鏡の中に問いかけた
「ほんとうを隠す日じゃなく
 嘘でほんとうを見つける日」

ポケットの中の秘密たち
ころころ転がり笑ってる
ひとつくらいは見逃して
今日は優しい嘘の日なんだ

チクタク時計がまた鳴いて
世界はそっと裏返る
気づけばきみも嘘つきで
気づけばわたしも夢の中

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