ひび割れたティーカップの底で
眠っていた砂時計が ふいに息をつく
流れる粒は 過去でも未来でもなく
ただ 今という名のきらめき
白いうさぎは 遅刻の理由を忘れて
懐中時計を花に植えた
やがて咲いたのは 数字のない時刻
誰も急がぬ やわらかな午後
涙をひとつ落とせば
それは小さな湖となり
大きい瓶も持たぬまま 渡ることになるけれど
足先に触れる水は 不思議とあたたかい
帽子屋は 名前のない帽子を差し出し
「似合うかどうかなど どうでもいい!」と笑う
鏡の向こうのあなたは
少し違う顔で 同じ頷きを返す
まっすぐでなくとも ほどけたままでも
揃わぬ靴音で歩く道にも
ちゃんと風は吹き 物語は続く
だから
欠けたままの月も
迷ったままの心も
それでいい
4/5/2026, 2:01:48 AM