たーくん。

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7/16/2025, 10:18:19 PM

羊の毛よりモコモコでフワフワの雲の布団。
目が覚めると、私はここで寝ていた。
上には太陽が昇っていて、明かりにしては眩しすぎる。
なんで私はここで寝ていたのだろう?
確か……今日は仕事が休みだからベッドで昼寝していて……。
気がついたら空の上で寝ていた。
……謎過ぎる。
まぁ何度か雲の上で寝てみたいって考えたことはあったけど、神様が気紛れで願い事を叶えてくれたのかな?
折角だし、今の状況を楽しもう。
だけど、どこまで歩いても雲しかなく、同じ風景が続くだけ。
「もう!なんなのよここ!」
太陽に向かって文句を言った瞬間、突然雲に穴が開き、真下へ落ちていく。
「きゃあああ……あ?」
気がつくと、私は床と頬を合わせていた。
どうやら、私はベッドから落ちたらしい。
「夢……か」
真昼の夢は、少し痛くて怖い夢だった。

7/15/2025, 10:22:59 PM

目移りするほど、ずらっと並んだ神社近くの夜店。
今日は、月に一度の夜店が出る日で、俺は松田さんと一緒に来ていた。
松田さんは同じクラスの女の子。
俺が好意を抱いてる子だ。
勇気を出して松田さんに夜店へ一緒に行こうと誘ったら、来てくれた。
だが、合流してから一言も話していない。
こういう時は、男の俺から話しかけるべきだろう。
「あのさ」
「あのね」
「あっ」
松田さんも俺に話しかけようとしたのか、声が被る。
「鈴木君からどうぞ」
「いや、レディファーストで松田さんからどうぞ」
「じゃあ……私から言うね。今日、鈴木君が誘ってくれたことがすごく嬉しかったの。私から誘おうと思ってたけど、勇気が出なくて……」
「そうだったんだ」
「鈴木君は?」
「あっ、えっと……松田さん、今日は来てくれてありがとうな。俺も一緒に来れてすごく嬉しいよ」 
「よかった……ありがとう鈴木君」
お互い言いたいことが言い終わり、再び会話がなくなる俺達。
目の前には、仲良く手を繋いでいるカップルが歩いている。
……お互い、嬉しい気持ち同士なら、いいよな。
恐る恐る手を伸ばし、松田さんの手を……握った。
「あっ……」
松田さんは驚いてたけど、ゆっくり握り返してくれた。
「夜店、見て回ろっか」
「うんっ、どこから行こっか?」
「うーん……そうだな……」
俺達、二人だけの時間が始まった。

7/14/2025, 10:33:14 PM

外から聞こえてくるセミの合唱。
季節はもうすっかり夏だ。
……夏って、どのタイミングで呼ぶべきだろうか?
暑くなったら夏?
梅雨が明けたら夏?
七月になったら夏?
セミが鳴き始めたら夏?
海開きになったら夏?
どれが正しいのだろう?
そうだ、SNSのアンケート機能で皆に聞いてみるか。
「うーむ……」
結果、どれかが飛び抜けて多い訳ではなく、ほぼ同じぐらいだった。
夏の基準を決めるのは難しいな……。
まぁ、人それぞれという訳で……いっか。
俺は冷蔵庫に冷やしていた缶ビールのプルタブを開け、喉を潤した。

7/13/2025, 11:20:20 PM

窓から涼しい風が入ってくる我が家。
今日は俺の十五歳の誕生日だ。
親父は真剣な表情で、俺に語り始めた。
「実はな。お前は俺達の子供じゃない。魔王の子なんだ。偶然、魔王の城でお前を拾ってな……。お前が十五歳になった時に言おうと、母さんと決めていたんだ」
「だからか……俺の顔は紫色だし、角が生えてるし、魔法が使えるから、なんか皆とは違うなって思ってたんだよ。全く気づかなかったぜ」
「いや、そこまで気づいてるなら分かるでしょ!?母さんは、ずーーーっと言いたくて仕方なかったんだからね!?」
俺と親父の会話を傍で聞いていた母さんが、会話の間に入ってきた。
「何はともあれ、お前は魔王の子だろうと俺達の子供だ。これからもそれは変わらない。改めてよろしくな」
「そうよ。周りから何を言われても、私達はあなたの味方だから」
「親父……母さん……ありがとう」
だが、俺は心の奥で、世界を滅ぼしたくてウズウズしていた。

7/12/2025, 11:01:45 PM

空から入ってくる緩やかな風。
同時に、りーん、りーんと鳴らす風鈴の音。
だが、セミの合唱に風鈴の音が負けている。
ならばと思い、こちらも数で勝負しようと風鈴の数を増やす。
りーん、りーん。
りーん、りーん。
りーん、りーん。
増やした結果、セミの合唱に勝利することが出来たが、今度は風鈴の音がうるさくなってしまった。
結局、風鈴を一つだけ残し、全て外す。
りーん、りーん。
風鈴は多いより、一つの音で堪能するほうがいい。

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