たーくん。

Open App

目移りするほど、ずらっと並んだ神社近くの夜店。
今日は、月に一度の夜店が出る日で、俺は松田さんと一緒に来ていた。
松田さんは同じクラスの女の子。
俺が好意を抱いてる子だ。
勇気を出して松田さんに夜店へ一緒に行こうと誘ったら、来てくれた。
だが、合流してから一言も話していない。
こういう時は、男の俺から話しかけるべきだろう。
「あのさ」
「あのね」
「あっ」
松田さんも俺に話しかけようとしたのか、声が被る。
「鈴木君からどうぞ」
「いや、レディファーストで松田さんからどうぞ」
「じゃあ……私から言うね。今日、鈴木君が誘ってくれたことがすごく嬉しかったの。私から誘おうと思ってたけど、勇気が出なくて……」
「そうだったんだ」
「鈴木君は?」
「あっ、えっと……松田さん、今日は来てくれてありがとうな。俺も一緒に来れてすごく嬉しいよ」 
「よかった……ありがとう鈴木君」
お互い言いたいことが言い終わり、再び会話がなくなる俺達。
目の前には、仲良く手を繋いでいるカップルが歩いている。
……お互い、嬉しい気持ち同士なら、いいよな。
恐る恐る手を伸ばし、松田さんの手を……握った。
「あっ……」
松田さんは驚いてたけど、ゆっくり握り返してくれた。
「夜店、見て回ろっか」
「うんっ、どこから行こっか?」
「うーん……そうだな……」
俺達、二人だけの時間が始まった。

7/15/2025, 10:22:59 PM