たーくん。

Open App
6/26/2025, 11:23:06 PM

じめじめと蒸し暑い自宅のトイレ。
窓を開けてても、蒸し蒸しする。
早く用を足して仕事に行かないといけないのに、奴が俺の邪魔をしてきた。
奴とは……蚊のことだ。
俺が踏ん張っている最中に、耳の辺りを飛び回る蚊。
何度も何度もしつこく飛び回りやがるから、ペチンッ!と素早く耳を叩く。
自分の耳を叩いたからキーンとしたが、「ぷぅ~~ん……」という蚊の最後の声は確かに聞いた。
……俺の屁じゃないぞ?
邪魔者はいなくなったから、これで心置きなく踏ん張れる。
「ん“ん“ん“!」
ぷぅ~~ん。
これも俺の屁じゃないぞ?
蚊め……まだ生きていやがったか。
手のひらを確認すると、蚊の遺体はなかった。
今度こそ粉々にして息の根を止めてやる!
ペチンッ!ペチンッ!ペチンッ!
蚊を目で追いながら何度も叩くが、回避される。
くそっ!今度こそ!
コンッ!コンッ!コンッ!
ドアのノック音がトイレ内に響く。
「おーい、まだか?」
親父がドア越しから話しかけてきた。
スマホの時計を見ると、いつも家を出ている時間より五分過ぎている。
蚊を仕留めるのは諦めて、急いで出さなくては。
「もう少しだから待ってくれ!ん“ん“ん“!」
俺は飛び回る蚊を睨み付けながら、踏ん張った。

6/25/2025, 10:16:39 PM

スマホのメッセージ画面に映るハートマークの絵文字。
妻とのメッセージのやり取りで、たまに送られてくる。
俺達夫婦は付き合っていた頃も、結婚してからも、お互いそれほど愛を伝えあっていない。
なんとなく気が合い、そのまま付き合って結婚したって感じだ。
たまに送られてくるハートマークの絵文字を見ると、俺達夫婦なんだなと改めて実感する。
妻への返信メッセージを打ち込み、最後にハートマークの絵文字を付けて送信した。
俺達の愛は他の夫婦に比べて大きくはないけど、絵文字のような小さい愛が日々積み重なって、老後にはきっとバカでかくなっているだろう。
妻が既読したのを確認したあと、俺は「愛してるよ」とメッセージを追加送信した。

6/24/2025, 10:22:23 PM

快晴過ぎる真っ青の空。
「空はこんなにも青くて美しいのに、どうして俺の服はこんなに汚れているんだ」
「私のスカートの中を下から覗こうとしたから当然でしょ」
地面に倒れている俺の身体を、女性が靴で踏んでいる。
もしやこれはご褒美なのでは?
「なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い……」
まるで汚物を見るような目で俺を見ていて、更にご褒美をもらう。
「まさか転けたフリして覗こうとするなんてね」
「転けたフリじゃない。偶然足に引っ掛かりそうな小石があって、その先にスカートを履いた可愛い子がいたから転けたんだ」
「結局覗くために転けたんじゃない!」
女性の踏む力が強くなる。
うーん……流石に痛いぞ。
「警察に突き出してやろうかしら」
「それだけは勘弁してくれ。こうして土下座してるし」
「それはただ倒れてるだけでしょ!」
女性の踏む力が更に強くなり、俺の身体が悲鳴をあげる。
「いててて!わ、分かった!俺が全部悪い!だから許してくれ!」
俺の必死の謝罪で、女性は今回だけ見逃してあげると言って許してくれた。
……次はもっと自然に転ぶようにしよう。

6/24/2025, 1:18:19 AM

空調の効いた小学校の教室。
今日は、息子の授業参観に来た。
授業参観に来ている親が結構いて、少し緊張する。
俺は仕事が忙しくて、息子とあまり遊べていない。
父親らしいことをしているか?と聞かれたら、俺は出来てないと答えるだろう。
仕事が忙しいからという理由は、言い訳にしかならない。
せめて学校行事は参加したいと思い、課長に頼み込んで今日休みにしてもらった。
今日の授業内容は、将来の夢をテーマに書いた作文を読むらしい。
俺が子供の頃に描いていた夢は、特撮や漫画に出てくる主人公のようなヒーローになることをだった。
大人になった今、ヒーローどころか、取引先や客に頭を下げていて、敵組織の下っぱみたいになっている。
息子には、俺みたいになってほしくないな。
次はいよいよ息子が作文を読む番。
息子の将来の夢は、一体なんだろうか?
少し、ドキドキする。
息子は席を立ち、作文を両手で持って、読み始めた。
「ぼくは、お父さんみたいな大人になりたいです」
息子の言葉に、思わず耳を疑う。
俺みたいな大人になりたいだって?
「お父さんは、ぼくとお母さんのために、毎日おそくまで仕事をしています。つかれていても、いつも笑顔で、いってきますと言って仕事に行きます。いやな顔を一つもしません。あと、ぼくとお母さんのことを考えてくれてやさしいです。そんなお父さんが、ヒーローみたいでかっこいいから、ぼくはお父さんみたいな大人になりたいです」
息子の作文に、目頭が熱くなる。
俺が息子のヒーローになっていたことが、すごく嬉しい。
知らない間に、俺の夢は叶っていたんだな……。
これからも、息子のヒーローとして恥じぬよう、仕事と家族孝行を頑張ろうと思った。

6/22/2025, 11:18:26 PM

彼氏の匂いが充満している真っ白の部屋。
彼氏はベッドで、犬のように丸くなって寝ている。
うふふ……可愛い。
「どこにも行かないでね。あなたは私だけのものだから」
彼氏の頭を撫でると、「う~ん」と唸った。
あなたがいくら私の彼氏じゃないって否定しても、認めるまでこの部屋から出してあげないからね。
彼氏の頭から首筋を指でなぞり、首に付いている首輪を撫でる。
一体、いつになったら認めてくれるのだろう?
もっと苦しめたほうがいいのかな?
でも、死んじゃったら困るから、ほどほどにしないとね。
彼氏の頬にキスし、部屋を出て鍵を閉めた。

Next