たーくん。

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空調の効いた小学校の教室。
今日は、息子の授業参観に来た。
授業参観に来ている親が結構いて、少し緊張する。
俺は仕事が忙しくて、息子とあまり遊べていない。
父親らしいことをしているか?と聞かれたら、俺は出来てないと答えるだろう。
仕事が忙しいからという理由は、言い訳にしかならない。
せめて学校行事は参加したいと思い、課長に頼み込んで今日休みにしてもらった。
今日の授業内容は、将来の夢をテーマに書いた作文を読むらしい。
俺が子供の頃に描いていた夢は、特撮や漫画に出てくる主人公のようなヒーローになることをだった。
大人になった今、ヒーローどころか、取引先や客に頭を下げていて、敵組織の下っぱみたいになっている。
息子には、俺みたいになってほしくないな。
次はいよいよ息子が作文を読む番。
息子の将来の夢は、一体なんだろうか?
少し、ドキドキする。
息子は席を立ち、作文を両手で持って、読み始めた。
「ぼくは、お父さんみたいな大人になりたいです」
息子の言葉に、思わず耳を疑う。
俺みたいな大人になりたいだって?
「お父さんは、ぼくとお母さんのために、毎日おそくまで仕事をしています。つかれていても、いつも笑顔で、いってきますと言って仕事に行きます。いやな顔を一つもしません。あと、ぼくとお母さんのことを考えてくれてやさしいです。そんなお父さんが、ヒーローみたいでかっこいいから、ぼくはお父さんみたいな大人になりたいです」
息子の作文に、目頭が熱くなる。
俺が息子のヒーローになっていたことが、すごく嬉しい。
知らない間に、俺の夢は叶っていたんだな……。
これからも、息子のヒーローとして恥じぬよう、仕事と家族孝行を頑張ろうと思った。

6/24/2025, 1:18:19 AM