たーくん。

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じめじめと蒸し暑い自宅のトイレ。
窓を開けてても、蒸し蒸しする。
早く用を足して仕事に行かないといけないのに、奴が俺の邪魔をしてきた。
奴とは……蚊のことだ。
俺が踏ん張っている最中に、耳の辺りを飛び回る蚊。
何度も何度もしつこく飛び回りやがるから、ペチンッ!と素早く耳を叩く。
自分の耳を叩いたからキーンとしたが、「ぷぅ~~ん……」という蚊の最後の声は確かに聞いた。
……俺の屁じゃないぞ?
邪魔者はいなくなったから、これで心置きなく踏ん張れる。
「ん“ん“ん“!」
ぷぅ~~ん。
これも俺の屁じゃないぞ?
蚊め……まだ生きていやがったか。
手のひらを確認すると、蚊の遺体はなかった。
今度こそ粉々にして息の根を止めてやる!
ペチンッ!ペチンッ!ペチンッ!
蚊を目で追いながら何度も叩くが、回避される。
くそっ!今度こそ!
コンッ!コンッ!コンッ!
ドアのノック音がトイレ内に響く。
「おーい、まだか?」
親父がドア越しから話しかけてきた。
スマホの時計を見ると、いつも家を出ている時間より五分過ぎている。
蚊を仕留めるのは諦めて、急いで出さなくては。
「もう少しだから待ってくれ!ん“ん“ん“!」
俺は飛び回る蚊を睨み付けながら、踏ん張った。

6/26/2025, 11:23:06 PM