特別な存在。
青い瞳の来客編6
深夜。
屋根にいるトルコ猫と駐車場にいる僕は見つめ合っている。
僕はスマホを取り出して猫翻訳アプリを起動した。
「要するに屋根に登ったけど自力で降りられなくなったから助けてほしいんだね?」
僕は話した。
「はい、そうです」
トルコ猫は素直に答えた。
「誰かに無理やり連れて来られた訳じゃないんだから、自分で降りられるでしよ!」
「それがですね。猫は爪で引っ掛けて登るんですけど、降りる時は爪が引っ掛かる所がないと無理なんですよ…」
「降りる場所を調べてから登らないの?」
「屋根から降りれない事は今までなかったので調べてなかったです」
「ざっと見た感じ、あなたのいる建物の高さは約3m、それを囲む塀の高さが1m。そこから飛び降りた時に壁を蹴って、塀に着地したらいいんじゃないの?空手の三角跳びみたいな感じで」
「いや、それは危険です。自分、石橋を叩いて渡るタイプなんで」
「だったら、降りれる事を確認してから登れよ!」
僕はツッコミを入れた。
「おっしゃる通りですね。次からそうします」
トルコ猫は後悔しているようだ。
「あのね、駐車場と建物の間に塀があるでしょ。つまり、あなたのいる建物は他所様の物なの!ウチのホテルの物じゃないからどうにもできないの。あなたに分かるように言うと他の猫の縄張りに侵入することなの!ヤバいって分かるでしょ?」
「はい、分かります」
「第一、あなたは特別な存在じゃないし、リスク犯して救助するメリットが僕にはないんだよ…」
「じゃあ、取引しませんか?」
「取引?」
「俺を無事に救助してくれたら可愛い女の子紹介しますよ」
「ええ!?本気で!?その子は何歳?」
「3歳です」
「……僕、仕事があるから行くね!頑張ってトルコ猫君!応援してるよ!君なら出来るよ!」
僕は笑顔で立ち去ろうとした。
「待って!待って!行かないで!旦那、あなたしかいないんですよ!お願いです。助けて下さい!」
トルコ猫は懇願した。
「分かったよ…。もうしょうがねえな…。なんでこう厄介事に巻き込まれるんだよ…」
僕は大きく溜息をついた。
続く??????
バカみたい。
青い瞳の来客編5
2026年3月16日月曜日23時32分
一通りの作業を終えて、駐車場管理の為ホテルの外に出た。
いつものように連泊の車に赤いコ−ンを置いていく。
街灯の落ちる屋根の下で作業に没頭していると、アォ−ン!アォ−ン!と猫の鳴き声が聞こえた。
またか、この近くに猫がいるのか?
周囲を注意深く見るが猫の姿はなかった。
車の下を覗くがいない。
あれ?もしかして上にいるわけないよね。
僕は上を見上げた。
すると、トルコ猫が屋根から前足を出して見下ろしている。
ゲッ!!猫が上から見ている。
正直驚いた。
僕は一瞬、人間が見てるんじゃないか?と勘違いした。
こんな光景を目撃するのは僕ぐらいだろう。
「昨日から鳴いているのは君だね。お腹空いているんだね。特別にエサをあげるよ」
僕はジャケットのポケットからキャットフ−ドと小皿を取り出した。
そして、アスファルトの上に小皿を置き、キャットフ−ドを乗せた。
トルコ猫は微動だにしなかった。
あっ!そうか!僕がいるから警戒して食べに来ないだね。もう〜、しょうがないな。猫ってワガママなんだから…」
僕はエサから3m離れた。
「ハイ、どうぞ!遠慮なくお食べ」
僕は笑顔で言った。
それでもトルコ猫は食べに来ない。
「ええ!?どういう事?君、もしかして屋根から降りられないの?」
僕はトルコ猫に聞いた。
トルコ猫は頷いた。
「それで、君は僕にそこから降ろしてほしいと頼んでいるわけ?」
トルコ猫はまた頷いた。
「ざけんじゃねえぞ!自分で屋根に登って降りられないなんてバカみたい!己でなんとかしろ!僕をトラブルに巻き込まないで!」
人も猫も自分で蒔いた種は、自分で刈り取ろう。
続く?????
二人ぼっち。
青い瞳の来客編4
2026年3月15日日曜日23時38分。
僕の名前は風雪武士。
職業はホテルのフロントマン。
男なので夜勤担当である。
お客様のチェックインが終わり、清掃指示書も作成した。
次は駐車場管理だ。
駐車場管理は、連泊で車をご利用のお客様のみ車のナンバーを管理表に記入し、停車している駐車場で車のナンバーが一致したら赤いコ−ンを置く。
その場所がお客様の駐車場となるのだ。
僕はホテルの自動ドアから出た。
僕はバインダーを片手にボ−ルペンを握っている。
入口付近からテキパキとこなして行く。
屋根の下の駐車場に歩いて行き作業をした。
すると、アォ−ン!アォ−ン!と鳴き声が聞こえた。
うん!?猫かな?
僕は立ち止まって、周りを観察した。
いないな?
取り敢えず、駐車場の右端に移動した。
アォ−ン!アォ−ン!と鳴き声がする。
猫はいない。
今度は左端に向かった。
アォ−ン!アォ−ン!と確かに聞こえる。
でも、ここにもいない。
最後に屋根の下の駐車場に戻り、車の下に潜った。
結局、猫は見つからなかった。
冬が終わり、春が訪れたのだ。
3月だから猫が発情しているのだろう…。
この声はオス猫がメス猫を誘っているのだ。
なるほど、そういうことか!
二人ぼっちで楽しもうってことか!
なんせ猫は出会って数分で◯◯だからね。
可愛い顔してるけとやることやってるからね。
だから猫は去勢しないと大繁殖してしまうのだ。
それに比べて人間はハ−ドルが高い。
猫のそういう所はいいな!羨ましいぜ!
男は笑顔で自動ドア内に去って行った。
続く????
安らかな瞳。
青い瞳の来客編3
2026年3月15日日曜日23時38分。
待ちに待った静寂の深夜。
トルコ猫は屋根の上から周囲を観察している。
その時、ホテルの自動ドアから黒服の男が姿を現した。
男はバインダーを片手にボ−ルペンを握っている。
時折バインダーに記入し、車の前に赤いコ−ンを置いた。
どうやら駐車場の管理をしているようだ。
あ、あの男だ!間違いない!奴が屋根の下に来たら鳴いて知らせるぞ。
トルコ猫に緊張が走る。
男がしばらくして屋根の下の駐車場に来た。
よし!今だ!
アォーン、アォーンとトルコ猫は大声で鳴いた。
男は立ち止まり首を左右に振り様子を見ている。
いいぞ!反応している。
男は駐車場の右端に向かって歩いて行った。
周囲を見ている。
おーい!そっちじゃない!こっち!こっち!
アォーン、アォーンと再びトルコ猫は鳴いた。
男は左端に向かって歩いて行った。
行き過ぎ!行き過ぎ!戻って来て!
アォーン、アォーンとトルコ猫はまた鳴いた。
男はトルコ猫のいる屋根の下に来て、辺りを見回している。
いいよ!いいよ!そのまま上を向いて!
男は車の下を覗いた。
そこじゃないよ!上だよ!上!
その後、男はホテルに向かった。
男は笑みを浮かべて、安らかな瞳をしている。
そして、そのままホテルへ入った。
い、行かないで!帰っちゃ、嫌!
う、嘘でしょ!?俺はここで生活しなきゃいけないの!?
トルコ猫はふて寝した。
続く???
不条理。
青い瞳の来客編3
とあるホテルの昼間。
トルコ猫は屋根から降りる事が出来ずに困っている。
そうだ!人間に助けてもらおう!それしかない!
奴等は俺を捕獲器で捕え、大切な2つのゴ−ルデンボ−ルを奪い、おまけに左耳に傷を入れやがった!
俺が何をしたというのだ?
お陰で子猫が作れない体にされちまった…。
これでオスマン帝国から続く名門ブルーアイズ家
は俺の代で終了だ。
父上、母上、すまない…。
愚かな俺を許してくれ…。
だから、人間なんて絶対に頼りたくはないが仕方ない…。
俺たち野良猫は、泥水をすすってでも生きて行くしかねえんだよ!
トルコ猫は決意した。
トルコ猫は屋根の端から駐車場を見下ろした。
すると、中年男性が歩いてきた。
アォ−ン!アォ−ン!とトルコ猫は鳴いた。
だが、中年男性は素通りして自動ドアからホテルに入館した。
あいつは耳が悪いんだな、次だ!
今度は若い女性がホテルから出て来た。
アォ−ン!アォ−ン!と再びトルコ猫は鳴いた。
しかし、若い女性は無反応で去って行った。
畜生!まだだ!
トルコ猫はこれを100回繰り返したが一度も効果はなかった。
夕陽は沈み、世界は暗闇に包まれた。
な、なんでだよ!一生懸命に努力してるじゃないか!世の中不条理だな…。
俺様を無視しやがって!人間って奴はまったく薄情で残虐な生き物だ!
トルコ猫は激怒した。
こうなったら深夜に現れる、俺たち野良猫に友好的な、噂の男に賭けるしかないな…。
トルコ猫は真夜中になるのを静かに待つことにした。
続く???