夢見る心。
「いってらしゃいませ」の清々しい声がフロント内で響く。
「あの……、ちょっとよろしいですか?」
ハッとするほどの美しい女性が声をかけてきた。
「どうされました?」
カウンター越しに僕はフロントマンとして応対した。
「私は貴方の接客が気に入りました。良かったら私と仲良くして貰えませんか?」
「はい、喜んで!」
「ではライン交換しますか」
「はい、必ず返信いたしますのでご安心ください」
僕に断る理由はない。
ついに僕の良さが分かる女性が現れたのだ。
この日を迎えるまで長かった……。
彼女とのラインやTV電話の時間が愛おしかった。
やがて僕達は結婚を前提の真剣交際に発展した。
お母さんついにやったよ!
これで天国にいる親父やお婆ちゃんにいい報告ができる。
彼女は神奈川県在住、僕は宮崎県で働いているので支配人に転勤を申し出た。
「そうか、寂しくなるな…。今まで当館に尽くしてくれてありがとう!神奈川県に行っても頑張れよ!」
支配人は心良く送り出してくれた。
「はい、3年間色々とありがとうございました」
僕は深々と頭を下げた。
「風雪さん、お世話になりました。いつまでも元気でね、末永くお幸せに……」
フロントスタッフや清掃スタッフとも今日で最後だ。
「ありがとう!みんなも元気でね!みんなで頑張ってね!」
僕は手を大きく振って別れた。
宮崎県では様々な事を経験して成長した。
神奈川県では彼女を幸せにする為、ついに支配人に挑戦する。
新たなステージに向けて、僕はトランク1つで飛行機に乗り込んだ。
栄光と幸せを掴むのだ。
宮崎県 風雲龍虎編 完。
こんなこと夢でも見たことないのだ。
届かぬ思い。
「ごめんなさい。あなたとは付き合えないわ」
僕沙彩さんに呆気なく振られてしまった、僕。
畜生!なんでダメなんだよ!
スタートラインにすら立たせて貰えなかった。
学歴はないし、低収入じゃこの結果も仕方ないよね。
よし、仕事を一所懸命頑張ろう!
だが、結果を出しても派遣社員では地位も賃金も据え置かれたままだ。
いつしか、恋も愛も諦めた。
1人なら生活に困らない。
たった一度の人生、気楽に生きよう!
僕はYouTubeを視聴する事にした。
「人が500回素振りしたら俺は1000回やる。俺だけ練習した奴はいない。バット1回でも多く振った者の勝ちなんだよ!」
三冠王、落合博満。
「来世に頑張るってそんなんないで、自分に負けず真面目にコツコツ練習奴が天下を取んねん!」
カリスマボクサー、辰吉丈一郎。
「遊びたい、飲みたい、そんなんで優勝できるわけない。WBCは優勝以外失敗!」
二刀流メジャーリーガー、大谷翔平。
お前はそれでいいのか?
悔しくないのか?
馬鹿にした奴らを見返したくはないのか?
何事も成さずにただ死んでいくのか?
時間はまだまだあるじゃないか。
人生これから。
神様へ。
地球は、太陽との距離が完璧な位置にあるので、水に恵まれ多様な生命が誕生した。
アニメでは火星に移住しているが、現実は生物の生存を拒む過酷すぎる環境だ。
つまり、地球は偶然出来たのではなく、神のような存在に創造されたと言える。
神様へ言う事は特にない。
お願いしたところで何も変わらないからだ。
願いが叶うなら、神様に1日中祈りを捧げるが残念ながらそんな事はない。
昔、熱心なキリスト教信者の子供が交通事故に遭い、信仰の為に手術で両親が輸血を拒否して子供が死亡する事件があった。
神様が存在するのなら、奇跡で助けてもいいのではと思う。
だが、何も起こらなかった。
世界で未だに戦争や紛争や事件等で多くの人が犠牲になっている。
何の罪のない人が理不尽に死んでいく。
これが現実である。
我々がアリの生涯に興味がないのと同じように、創造主も人間に興味がないのだ。
僕は宗教を否定するつもりはない。
良心的な宗教の信者になり、心穏やかに幸せな人生を歩めるのなら素晴らしい事だ。
ただ、怪しい新興宗教には気をつけた方がいい。
せっかくの人生が台無しになる。
運と才能と努力。
この3つの要素があればどんな夢も現実になる。
叶わなければどれか欠けている。
たった一度の人生、自分の為に明るく楽しく生きればいいのだ。
言葉にできない。
先日、那須川天心選手対エストラーダ選手の、WBC世界バンダム級ボクシング王座挑戦者決定戦が、両国国技館で開催された。
天心選手にとっては、前回、井上拓真選手にタイトルマッチで敗れたので再起戦となる。
エストラーダ選手は35歳とはいえ、元2階級制覇王者、全階級最強王者にランキングされた事もある。あの井上尚弥選手や、井岡一翔選手にも対戦要求されたが実現しなかったほどの男だ。
ボクシングファンからは無謀なマッチメイク、はっきり言って再起戦に選ぶ相手ではない。
大方の予想は天心選手の敗北だ。
だが、天心選手は大勝負に出た。
楽な相手を選ばす、あえて強敵との対戦を選択した天心選手に感心した。
また、天心選手は児童養護施設の支援や、被災地に大金を寄付している事を知りファンになった。
こういう弱者に手を差し伸べる選手が大活躍してもらいたいものだ。
試合結果は天心選手の9RTKO勝ち!!
天心選手の課題である、接近戦を短期間で克服するのは難しい言われていたが見事やってのけた!
僕はこの試合を見て感動した!
天心選手はスター選手なので、様々なプレッシャーやバッシングを実力で捻じ伏せたのだ。
カッコイイ!
次戦は、井上拓真選手対井岡一翔選手のタイトルマッチの勝者と戦う事になる。
凄く楽しみだ!
ちなみにエストラーダ選手は、少年時代に両親を亡くされて、自分が這い上がるにはボクシングしかない!と死ぬほど練習して栄光を手に入れた。
う−ん、ボクシングって素晴らしい!!!
あら、言葉にできてるね…。
君の目を見つめると、春爛漫。
22時36分。
僕はホテルから外出して買い物に行こうとした。
すると、病院の駐車場の柵から茶トラ猫が顔を出している。
丸く大きい目が可愛らしいオス野良猫だ。
この猫が元々ホテルを縄張りにしている猫だ。
サバトラ猫※1とはエサを分け合う仲だ。
なぜか、たまにしか現れない。
僕はスマホで猫翻訳アプリを起動した。
「おお、久し振りだな元気にしてた?」
僕は話かけた。
「ええ、まあ」
茶トラ猫は返事した。
「お腹空いてる?チュ−ル食べる?」
「今はいらないです」
「ここで何をしてるの?」
「まあ、いいじゃないですか」
「君の目を見つめるとかまいたくなるんだよ。前からここにいる事多いね…。ああ!もしかして!トルコ猫ちゃん※2を待ってるの!!」
「……ち、違いますよ」
茶トラ猫は明らかに動揺している。
「冬が終わり春爛漫。猫ちゃんにとって恋の季節がやって来たもんね!羨ましいぜ!ところでトルコ猫ちゃんは、秘密の場所のエサだけ食べて僕の前に一切姿を見せないし、トルコ猫君※3は倉庫の屋根から降りられるよう救助したのに礼はないし、サバトラ猫は僕を見たら逃げるし、僕に対する感謝の心がない!この辺の野良猫はどうなってんだ!YouTubeで見る野良猫は物凄く人懐っこいじゃないか!」
「あれは、野良猫に毎日エサを上げて手懐けてるんです。いい場面を集めて編集してるんですよ」
「まあ、そうだと思うけど、あまりに警戒心が強過ぎる。もうちょっと信頼してくれてもいいんじゃない?僕は野良猫に対して友好的なんだから…」
「分かりました。無駄だと思いますが、一応、伝えておきます」
「じゃあ、頑張ってね!」
僕はその場を去った。
しばらくすると、トルコ猫ちゃんが現れた。
茶トラ猫はトルコ猫に近づいた。
「トルコ猫ちゃん、会いたかった!僕と付き合って下さい‼️」
茶トラ猫はアタックした。
「嫌よ!!」
トルコ猫は猛ダッシュで逃げた。
その後を茶トラ猫は追った。
だが、逃げられてしまった。
この恋の成就は難しい。
※1 サバトラ猫について知りたい方はサバトラ猫を読んで下さい。
※2 トルコ猫ちゃんについて知りたい方は木枯らし、ミッドナイトを読んで下さい。
※3 トルコ猫君について知りたい方は青い瞳の来客編を読んで下さい。