お題《つまらないことでも》
灰色の日々が希望に変わってゆく。
失ったものもいつか、新しい翼をえて――。
動かなかったオルゴールが青年の手の中から、息を吹き返す。幻想花を降らせ、どこに隠れていたのか、木々の葉から、水辺から、精霊たちが出てきて曲調に合わせておどりだす。
「このオルゴールはつまらないものじゃないだろ、ほらちゃーんと生きて動いてるじゃねーか」
母から「魔法の宝箱よ」なんて言われて、手にした古いオルゴール。どんなに調べても、なんの変哲もない――だから森に捨てようとしてたら、現れたのがどこにでもいるようないい兄風の青年だった。
「お兄ちゃんは魔法使い?!」
瞳にたくさんの星を降らせた少女に、青年は屈託のない笑顔で答える。
「そうかもな」
この日があったから。
今も私は、魔法の宝箱を大切にしている。
そして《つまらなさそうにしている少女》に、私はあの日の物語を語るのだ。そして少女の瞳は、あの日の私のようにたくさんの星を降らせて。
「すごいね、お兄ちゃんは魔法使いなの?」
お題《目が覚めるまでに》
毎日君の窓辺に花を飾って。
毎日君の好きな紅茶を淹れて。
毎日君の育てたハーブを摘んで、朝食をつくって。
毎日君におはようのキスをする。
やわらかな陽光の中、君が微笑む。
僕の幸せは、君と繋がっている。
お題《明日、もし晴れたら》
永遠の旅に、でよう。
森はすっかり落葉し、季節は終焉を迎える。
淡い冬の陽射しの中やわらかな蜂蜜色の机で、読書をする。少女は夢中で気づかない――そして、背後からひょいと本を取り上げられ、聞き慣れた声がした。
「そんなに面白いか、俺といるより?」
青い瞳、青い髪。神秘的な青さの青年は、少女を背後から抱きしめる。慈しむように、顔を寄せ――しょうがないなあ、と笑う少女。
「面白いに決まってるわ、あなたが買ってくれた物語だもん。それより、明日は飛べそう?」
「ああ、問題ない」
「じゃあこれから用意しないとね」
窓辺にある渋い紅茶色のトランクは、青年が自由になったら旅にでようと約束して買ったものだ。この森を離れ、遠くへいくために。
あの日星の降り注ぐ夜、竜の王になった。
そして今、竜は最愛の少女のもとへかえってきた。
「もし明日晴れたら――旅にでよう、永遠に旅し続けよう」
竜と少女は旅にでる。
始まりの夜の約束を――。