お題《明日、もし晴れたら》
永遠の旅に、でよう。
森はすっかり落葉し、季節は終焉を迎える。
淡い冬の陽射しの中やわらかな蜂蜜色の机で、読書をする。少女は夢中で気づかない――そして、背後からひょいと本を取り上げられ、聞き慣れた声がした。
「そんなに面白いか、俺といるより?」
青い瞳、青い髪。神秘的な青さの青年は、少女を背後から抱きしめる。慈しむように、顔を寄せ――しょうがないなあ、と笑う少女。
「面白いに決まってるわ、あなたが買ってくれた物語だもん。それより、明日は飛べそう?」
「ああ、問題ない」
「じゃあこれから用意しないとね」
窓辺にある渋い紅茶色のトランクは、青年が自由になったら旅にでようと約束して買ったものだ。この森を離れ、遠くへいくために。
あの日星の降り注ぐ夜、竜の王になった。
そして今、竜は最愛の少女のもとへかえってきた。
「もし明日晴れたら――旅にでよう、永遠に旅し続けよう」
竜と少女は旅にでる。
始まりの夜の約束を――。
8/1/2022, 12:19:32 PM