空が晴れてる日は神様が喜んでいて。
空が曇ってる時は神様が機嫌悪くて。
雨が降ってる時は神様が悲しんでいて。
雷が鳴ってる時は神様が怒っていて。
空模様は、いつも神様の喜怒哀楽で彩られていて。
「え、じゃあ虹が出た時なんなの」
「神様滅茶苦茶ハッピーみたいな」
「語彙力無さ過ぎでしょ、てか変な宗教かよ」
笑うんだけど、と友達は笑う。
そんなことないよ、って言っても信じて貰えない。
わたしの手元にいる小さな神様がぷくっと頬を膨らます。
それから大きな目に涙がいっぱい溜まったかと思うと、今まで晴天が広がっていた空を雨雲が覆って土砂降りの雨になった。
「うわ、あれ、今日雨だっけ?!」
「君が神様の事笑うからだよ」
「え、マジで?ごめんて神様勘弁して」
「えー、どうしよっかなー」
「アンタの判断な訳?それ?」
嘘じゃんもーやめてよ神様ごめんって信じるよー、と土砂降りの外を見ながら友はそんな事を言う。私の神様はとてもチョロくて、その言葉だけでにこにこと笑うと、土砂降りは直ぐに止んでまた先程と同じく晴天が姿を現した。更には虹付き。
うわすご、神様喜んでる。ウルトラハッピーじゃん。なんて、外を見つめてはしゃぐ友達を見ながら、私は手元の小さな神様を優しく撫でてにこにこと笑顔を浮かべた。
「空模様/20240819」
鏡を見ると、そこに映るのは醜い醜い自分の顔で。
今にも死にそうなその瞳は、じっと鏡の自分を見つめていた。
嗚呼、嫌だ。見ないで欲しい。
私を嘲笑う人たちのように。私を私を蔑む人たちのように。
ぎ、と歯を食いしばる。
嗚呼、居なくなってしまえばいいのに。
「よし、それじゃあ居なくなろうか」
「は?え?」
私の言葉がどこからか聞こえた。
私は一言も喋ってない。何。誰。なんなの。
困惑する私の視界の端で、何かが蠢く。
それは鏡。鏡の方。
恐る恐る視線を向ける。にんまりと笑う私が、そこに居た。
「鏡の世界は良いよ、誰も笑わないし誰も蔑まないもの!」
ほらおいでよ。と腕を伸ばされる。
ああ、嫌だ。なんて。居なくなってしまいたいと思っていた感情が消え失せるほどの恐怖が私を襲う。
そんな私の心境の変化など知る由もないもう一人の私の手が、私に触れた。
ぐ、と鏡の方へ引っ張られる。
嫌だ。嫌だ。誰か、誰か助けて。
なんて、言える暇などなくて。
私はもう一人の私に、鏡の世界へ引きずり込まれた。
「鏡/20240818」
一人の方が楽だよ。
その人はそう言って、どこか寂しそうに笑った気がする。
私には、到底理解出来なかった。
だって誰かと居た方が楽しいし、何かを分かち合えるし、助け合えるし。絶対寂しくないのに。
寂しくない、はずなのに。
その人はその笑みのまま、少し遠くの空を見つめてこう言った。
「もう、今生の別れを経験するのは嫌なんだ。取り残されるのが嫌なんだよ」
だから、一人の方が楽だよ。
だから、一人でいたいんだ。
その人はそう言いながら、私たちの前に並ぶ沢山のお墓を前に涙ぐんだ声で、今にも泣き出しそうな声で、そう言った。
「だから、一人でいたい。/20240731」
子供のように穢れを知らない澄んだ瞳が、同じように澄んだ空を見つめる。
それを見た瞬間に「ああ、遠いな」と思った。
どこまでも純粋で、真っ直ぐで、澄んでいて。
自分とは、真反対の人。
「甲子園!行こうな!一緒に!」
「……うん、行こうね、一緒に」
行きたい、行けない、行きたくない。
彼はマウントに立つ英雄で。
自分はスタンドで応援するただの外野で。
ああ、あほらしい。バカになりそうだ。
「怪我、早く治せよ」
「……治んないよ」
「治る!大丈夫!」
澄んだ瞳が自分を見て、にこりと笑う。
澄んだ空を背に笑う彼は、とても眩しくて自分は目を細めて「そっか」としか言えなかった。
「澄んだ瞳/20240730」
ある日から、同居人がなにやら家を強化している。
主に外壁。それと屋根。
なんか要塞みたいな感じになって、折角可愛かった外観が見る影もなくなって悲しくなる。
さらには地下も作りだした。
もう本当に意味がわからない。
「ねえ」
同居人に問いかけると、彼は脚立を持ったままこちらを向いて首を横に傾ける。
「なあに」
「どうしてこんなことするの」
何もしなくていいじゃない、だって何も無いほど平和なんだもの。
それでも同居人はうーんと少し頭を悩ませていたのたが、即にもう答えを持っていた様でにこりと笑いながら口を開く。
「嵐が来ても、世界が滅んでも、君だけは守れるように」
嵐はともかく、世界が滅ぶのはスケールがデカすぎる。
それでも同居人はさも普通の事を言ったかのように、何事もないように今日も作業に励むのだった。
「嵐が来ようとも/20240729」