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11/17/2025, 9:04:47 AM

 君と一緒に歩く夜道は、いつもより澄んで見える。あの大きな月の明かりのせいだろうか。
 
 君の顔が、青白い印影で縁取られていて、いつもより神秘的に見える。青く照らされた顔と、影の方の顔。影の部分に、真実が巧妙に隠されていたとしても、表の顔を信じたい。

 ゆっくりゆっくりと二人並んで歩く。なんとなく無口になる。ふと君を見ると、月をじっと見ていた。青い光が顔に降り注いでいる。その目は優しい。やっぱり見えるものを信じたい。


「君を照らす月」

11/16/2025, 6:47:31 AM

 ある日、近所の公園に行くと、木々がいっせいに色付いていた。昨日まではそうでもなかったはずなのに、今朝の冷え込のせいだろうか。

 黄や茶色の葉に変わっている。中でも、赤く大きな葉をつけた木が目をひいた。そこに、ちょうど日差しがあたっていて、ひときわ鮮やかに見えた。その木の近くのベンチに腰掛ける。

 日差しをうけ、赤い葉が透けて見えていた。まるで燃えるように鮮やかで、木漏れ日が赤色を通ってくる。地面には、黄色い乾いた葉がパラパラと落ちていた。そして、木や葉の影が風でころころと動き心地よいリズムを作っている。

 ぼんやり見ていると、だんだん黄、黒、赤と木漏れ日が混じりあってきた。その跡はちらちらと細かく動いては、消えていく。それを飽きずにずっと追い続けていた。


「木漏れ日の跡」

11/15/2025, 8:35:53 AM

 ばったり街で会って、久しぶりなんて言葉を交わす。今、かなり忙しい状態であることを話したら、「じゃあ、終わったら、おいしいものでも食べに行く?」なんて軽く言ってくれた。
 
 本当かな、成り行き上の社交辞令かなという気がしたけれど、結構その言葉に助けられた。頭の片隅でそのことを想像しながらやっていると、忙しさもなんとか乗り越えることができた。

 次に顔を合わせるとすぐ「終わった? じゃあ何が食べたい?」。ああ、覚えていた。あの約束は有効だった。顔は、少しすましたまま「そうですね…」と言う。心の中は、もう小躍りしたいほどうれしかった。


「ささやかな約束」

11/14/2025, 5:57:07 AM

 あそこにいるなと思いながらも遠くの席からそっと見守る。ああ、話ができるようになりたいなと思う。実際は話したこともなく、こちらの存在さえも気づかれてないかもしれない。

 あんまり見つめて怪しまれてはいけないので、心の中で願う。どうか親しくなるチャンスをください。ちょっと勇気を出して、話しかけてみればいいのだけど、なかなか動けない。後ろの席からこっそり願うばかりだ。

 そのうち、そんな機会も終わりが近づいてきた。もう会えないかもしれない。その姿を見られただけでも良かったと無理やり思おうとする。

 「あの、隣いいですか?」と、声をかけられた。振り向くと、えっ?と思う。いつも前の方にいたはずなのに。「どうぞ」と言いながら、自分の顔が赤くなってくるのが分かった。チャンスなのにドキドキして横なんか見られない。もうこれだけでもいいかもなんて思ってしまうのだ。

「祈りの果て」

11/13/2025, 8:30:43 AM

 いつも、心の中は迷路のよう。すっきりしたい。小さな子どものように、思うままに行動してみたい。隣のあの人は、いつも自由気ままだ。不機嫌な時も、機嫌が良い時もすぐわかる。嫌な感じはしない。忖度なんか何にもない。

 自分を大切にってよく言われるけれど、人の顔色を基準に生きてきていたから、どうしていいかわからない。自分が我慢すれば、ここはうまくいくのかもとそんなことばかりやってきた。

 それで、幸せかといえば、そうではない。隣のあの人は、嫌われたりしていない。そんな人だと受け入れられている。そうだ。誰かの機嫌をとったって、自分は満たされていない。

 いったん、自由気ままにやってみようか。でも、キャラが違う? ただのわがままと、どう違うのだろう。心は複雑に迷う。ただ分かっているのは、このままでは自分を生きていないということだ。自分のまんまでいてみる? 空気が読めない? それでも迷路から脱出するために、試しにやってみよう。


「心の迷路」

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