ばったり街で会って、久しぶりなんて言葉を交わす。今、かなり忙しい状態であることを話したら、「じゃあ、終わったら、おいしいものでも食べに行く?」なんて軽く言ってくれた。
本当かな、成り行き上の社交辞令かなという気がしたけれど、結構その言葉に助けられた。頭の片隅でそのことを想像しながらやっていると、忙しさもなんとか乗り越えることができた。
次に顔を合わせるとすぐ「終わった? じゃあ何が食べたい?」。ああ、覚えていた。あの約束は有効だった。顔は、少しすましたまま「そうですね…」と言う。心の中は、もう小躍りしたいほどうれしかった。
「ささやかな約束」
11/15/2025, 8:35:53 AM