NoName

Open App
11/1/2025, 9:47:38 AM

 あの時君は、その人のことを光のようだと思っていたのではないか。それならば自分は影かななんて。
 
 光には、必ず後ろに影がある。もしかしたら、光のように思っているその人が、君のことを光だと思っているかもしれない。誰かが光で、他の誰かがその人の影なんかではない。
 
 たとえ、どんなに光輝いているかのように見えても、その人の一面でしかない。もしもその時、光が当たっていたとしても、その人の心のうちはわからない。そんな中でも、ずっと自分の影の部分を見つめているのかもしれないのだから。

 みんな光と影の部分でバランスをとっている。それぞれ違う。どれがすごいとか優れているとか、だめだとか、そんなことでもない。
 

「光と影」

10/31/2025, 8:17:52 AM

 あなたは、今もこの道でがんばっていると思っている? 新しい道へ行くと言って、離れていったのだから。
 
 すごくやりがいがあって楽しかった。でも、無理をし過ぎて、もう見るのも嫌になってしまった。それからは、まったく違うことをした。頭の片隅には、置いてきてしまった思いがずっとあった。

 ほかのことを始めてみても、なんだかんだでその道はよく進まなくなった。不思議なくらい弊害がきた。きっと心の奥底では、そのことを本当にしたいと思ってないのだ。やらなくてはと義務的に思っているだけなのかもしれない。

 また、心の片隅に追いやっていたことを始めてみようと思った。うまくいこうといくまいと、心の底から楽しんでいたい。
 
 そして、あなたにまた会うことがあったら、続けているよと笑顔で伝えたい。


「そして、」

10/30/2025, 7:24:41 AM

日が暮れるのが早くなった。しかも日差しがなくなると、一気に風も冷たく感じる。強く吹き付ける風に、思わず下を向くと、前方の暗がりにぽつぽつと灯りが見える。ゆるゆると動く灯りに照らされていたのは、ワンコだった。

 首輪についた灯りが、顔の辺りをぼーっと照らしている。暗闇に馴染む色合いなので姿形がわかりにくかったが、よく見ると頭の部分がもふもふと大きく、体のほうがほっそりとしている。
 
 気づくと、その大きな目がこちらをじっと見ていた。吠えるでもなく、しっぽを振るわけでもなく、ただただ見つめられている。というより、すっかりその態勢で固まっている。
 
 飼い主さんが、「行くよ」といいながらリードをひく。それでも動かない。私が横を通り過ぎる時もじーっと見ている。かわいい。思わず声が出そうになる。大きな目とそのもふもふの頭のバランスが良すぎた。近寄りたくなるのを我慢して通り過ぎた。

 それだけだけど、寒風の中ほっと心が温まった。散歩中のワンコに出合うのは、私の密かな楽しみなのだ。


「tiny love」

10/29/2025, 6:08:41 AM

 おもてなし上手な人に憧れる。小さい頃から、人を家に招き入れることが少なかったし、そもそもそういうことが苦手だと思う。
 
 おもてなし上手な人の家に行くと、そのさりげない気遣いに驚く。清潔に整えられた部屋。相手をリラックスさせながらも、程よいタイミングでものごとが進んでいく。たくさんの手料理が用意されていることもあるし、みんなで持ち寄ったものがあれば、手際よく並べられる。

 自分の気の利かなさを思い出すひまもなく、心地よい時間が流れていくのだ。もうすっかり、その人のおもてなしに甘えてしまう。
 それなのに、心の底はどこか居心地が悪い。本当はその人に気を使わせているのではないかと、もやもやとしてしまうのだ。

 後で、その人に聞いてみたことがある。その人は、笑いながら「おもてなしをするのが好きなのよ。こんなのが好きかな、こうすれば喜ぶかなとか考えながら用意するのがね。だから、楽しんでくれたらいいのよ」。

 ああ、そうなのか。私は、その思いに応えることでよかったのだ。


「おもてなし」

10/28/2025, 6:27:00 AM

 私は知っている。君の心の中にあるものを。ふとした時に見せる目は、優しい。
 同じ場所にいないことを選んだ。交わす言葉は今までとは違う。事務的で素っ気ない。それでいい。私は大丈夫だ。
 
 そして、一人になったとき、自分の心にも消えない何かがくすぶっているのを知った。君の目に、自分の心の焔を見ていたのだろうか。それがまた燃え上がることはない。でもひっそりと、心の奥を温めてくれている。
  

「消えない焔」

Next