NoName

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日が暮れるのが早くなった。しかも日差しがなくなると、一気に風も冷たく感じる。強く吹き付ける風に、思わず下を向くと、前方の暗がりにぽつぽつと灯りが見える。ゆるゆると動く灯りに照らされていたのは、ワンコだった。

 首輪についた灯りが、顔の辺りをぼーっと照らしている。暗闇に馴染む色合いなので姿形がわかりにくかったが、よく見ると頭の部分がもふもふと大きく、体のほうがほっそりとしている。
 
 気づくと、その大きな目がこちらをじっと見ていた。吠えるでもなく、しっぽを振るわけでもなく、ただただ見つめられている。というより、すっかりその態勢で固まっている。
 
 飼い主さんが、「行くよ」といいながらリードをひく。それでも動かない。私が横を通り過ぎる時もじーっと見ている。かわいい。思わず声が出そうになる。大きな目とそのもふもふの頭のバランスが良すぎた。近寄りたくなるのを我慢して通り過ぎた。

 それだけだけど、寒風の中ほっと心が温まった。散歩中のワンコに出合うのは、私の密かな楽しみなのだ。


「tiny love」

10/30/2025, 7:24:41 AM