空に近い場所から君へ伝えたいことがあるんだ
君は僕の全てで、代わりなんてきかない人だった
なんて言えば僕の思いが伝わるかな
世界中に溢れた数多の言葉を全部使っても
思いを伝えるには半分にも満たないと思う
きっと君には、二度と会えないと思う
君はもう遠い場所に行ってしまったから
会いたくても会えない日々は辛かった
けれどそれももう、終わりにしよう
もっともっと高く
もっともっと空に近い場所へ行こう
君の選んだ世界に、僕はいなかった
君の望んだ未来に、僕はいなかった
ただそれだけのことが、あまりにも苦しい
子供のように駄々をこねるつもりもない
行かないで、と泣きわめくつもりもない
それでも過ごした日々を思い出す
もう二度と戻ってこない愛しい時間が
優しくなれた自分を
童心に戻った自分を
そして、純粋な思いに気づいた自分を
ひたすらに抱えて、二手に別れた道を歩んでいく
歩いて歩いて
どこまで来たかわからないほど進んで
躓いて転んで
全ての荷物を地面に落として空を見上げたとき
また子供のように、君を求めるだけ
君が泣いていた
メイクが崩れているのも気にせず、ぼろぼろと
大粒の雨のように溢れて、薄い桃色になって落ちる
街灯に照らされる横顔がとても綺麗で
理由も聞かずにただ横顔を見つめていた
ファンデーションが流れる
サラサラと君の素顔が見える
見せたくない、と恥ずかしがって欲しいような
それを咎めて、全て見せて欲しいような
芯から冷えるような風が吹いて
頬を凍てつかせるように涙が乾きはじめても
またこぼれる雫で、その肌は乾かない
ねぇ、その涙の理由はなに?
きっと僕じゃないよね
君の涙の理由になることは、一生無いのかな
水の流れのように過ごしていた日常は
いつか急に渇れてしまって
過ぎた日常を思っても、二度と帰ってこなくて
大切な人も、景色も、肌で感じた「生」の感覚も
日に日に薄れていって
原色の思い出に水をさして
薄まった色を身体中に抱え込んで
新しい「日常」で埃を被ったあの日は
きっともう、二度と帰ってこない
そう理解していても、忘れられなくて
夜が深まり、眠れない時に思い出してしまって
矛盾と後悔にまみれたまま
それでもまだ、過去を想い続けて
両手いっぱいの別れを数えて大人になった
薄汚れた残りわずかな純情も
煙草で汚れた六畳の部屋も
棺が燃え、空に溶けていく青色の煙も
結局いつか、私から「さよなら」と告げるもの
瞬く星よりもありふれた出会いと別れ
それは夜のように淋しく、水中のように苦しい
右肩が擦り切れたオリオン座のように
どんなに永遠を感じるものでも
いつか必ずどこかが欠ける
机の上に転がるジッポライターだけが、手元にある
私が数えた別れの分
私が数えた悲しみを与えてくれた人は
私がまだ行けないその場所に
酷く美しい冬の星座の隣にいるのだろうか