sunao

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11/6/2024, 6:41:32 AM

大学の構内。
木が植えられてちょっとした林のようになった場所で、紅葉を見ながら、きれいな落ち葉などを探していた。
ブーツが葉っぱを踏んでカサカサ鳴る音もおもしろい。

すると、一人の同じ歳くらいの男の子が、
「これ」
と言って畳んだメモのようなものを渡してきた。
差し出されたので反射のようになんとなく受け取ってしまうと、男の子は足早に去ってしまった。

男の子が去った後、おそるおそるメモを広げる。

ルーズリーフだ。

何も書いてない?

いや、真ん中のあたりがなんか…

ルーズリーフの真ん中のあたり、コンパスの針で空けたような、小さな穴がたくさん空いている。

日にかざしてみる。

『すきです。』

小さな一筋の光が文字になった。


慌ててさっきの男の子を探してみる。が、もう見当たらない。

次に会った時に彼だと分かるだろうか…



「一筋の光」

11/5/2024, 1:49:11 AM

紅葉狩りの幼稚園児たちを乗せたバスから、感情たちがこぼれて、道の脇の吹き溜まりに溜まっています。

大体の感情は 'たのしみ' です。

『ねえねえ、どうする?』
『バスから落っこちちゃったね。』
『お山のてっぺん、いきたいよね。』
『いきたいいきたい。』
『じゃあ、みんなでいっちゃう?』
『うん!』
『…あのこはどうする?』

一人が、少し離れたところで物憂げな顔をしている '哀愁' を指差しました。

『なんで幼稚園バスにあいつが乗ってたんだ?』
首を傾げましたが、
『いく?』
と聞くと、哀愁はこくり、と頷きました。

たのしみたちはわくわくと、とても楽しみな様子で、変わらない哀愁とともに、みんなで手を繋いで一列になって、助走をつけて、道の向こうの谷から吹き上がる上昇気流にびゅん、とのりました。

いっぺんに、お山よりはるか上まで上がり、それから手を離して、ふんわりみんなで落ちていきました。

みんな、ぶじ、お山のてっぺんの開けた場所に着きました。

『あれ?哀愁は?』
哀愁が見当たりません。
『あそこ。』
一人が指差した先、大きな銀杏の木のてっぺんに、まるでクリスマスツリーの星みたいに哀愁がいました。
相変わらず物憂げなたたずまいで…。

『ああ…』

『まあ、いっか。
 あれはあれでたぶんたのしんでいるでしょう。』

園児たちより先にてっぺんに着いたたのしみたちは、ぞんぶんに紅葉狩りを楽しむのでした。

きっと、哀愁もね。



「哀愁を誘う」

11/3/2024, 9:37:44 PM

ナルキッソスレベルになりたい。
おごりの季節は短い。


「鏡の中の自分」

11/2/2024, 11:39:49 PM

乗員7名の広い宇宙船。
船の中で何の病か、仲間が次々と倒れ、死んでいってしまった。
活発だった船員が、段々と動けなくなり、食事も飲み物も摂らず眠ってばかりになり、そのまま静かに息をしなくなる。
みんな同じ症状。
なぜか知らないがわたしだけは無事で、一人残されてしまった。
もうずっと一人。

そして食料も飲み物も残り僅か。

ほんとは母星やステーションに戻ることもできた。
でも仲間が次々と死んでいき、わたしの精神はまともではなくなり、それに、それらに戻ると仲間の死が決定的なものになるようで、戻りたくなかったのだ。

カプセルの中で、眠っているようなきれいな仲間達の体。
わたしが紙で作った花が、一輪ずつ置かれている。

わたしは大好きだったジュールの頬に、カプセル越しにキスをして、隣の自分のカプセルに入る。

そして一粒の飴玉を見つめる。

黒か藍かに無数の小さな銀色の粒がきらきらと散らばり、まるで宇宙を小さく固めたような粒。

これは仮死状態になる薬。

仮死状態の内に見つけられればわたしは息を吹き返し、見つからなければそのままほんとの眠りにつく。
どちらでもいい。

高い技術で作られた船は、どこまでも安全な航路を選択し、その性能は恒久的だ。

眠る7人を乗せて、船は穏やかに宇宙を進み続ける。




「眠りにつく前に」

11/1/2024, 9:03:06 PM

あれは幼い日の記憶。

どこまでも続く青い空

「行かないで!」

泣いて何度も叫んだ。


いつも一人で泣いてばかりのわたしの側に
どこからともなく現れて
こつんと、おでことおでこを合わせる。
わたしの友達。

ここにいるよ。
そばにいるよ。
言葉を持たないあなたとの愛言葉。


泣き叫んだ日から、あなたは現れなくなった。

婚約を祝うお茶会の席。
上品ぶった人たちの談笑の声。
紅茶の香りがむっとするほど辺りを包む。
わたしは光のない瞳でただそこに座る。

側の茂みがガサリと揺れる。
暗がりの中で金色の目が二つ光る。
久しぶりに現れた、黒い毛に覆われたあなた。
もう一つの物語へとわたしを誘う。
それは甘美な誘惑。

黒い犬は死の使い。
あなたを懐かしく思うことは死を想うこと。
わたしはずっと死に魅入られ、魅了されていた。

あなたはあるはずもない理想郷にとうとうわたしを連れていった。

永遠に。


口から血を流して倒れる花嫁。
人々の叫び声。





130作突破記念
「永遠に」

前回 10/23 120作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。

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