あれは幼い日の記憶。
どこまでも続く青い空
「行かないで!」
泣いて何度も叫んだ。
いつも一人で泣いてばかりのわたしの側に
どこからともなく現れて
こつんと、おでことおでこを合わせる。
わたしの友達。
ここにいるよ。
そばにいるよ。
言葉を持たないあなたとの愛言葉。
泣き叫んだ日から、あなたは現れなくなった。
婚約を祝うお茶会の席。
上品ぶった人たちの談笑の声。
紅茶の香りがむっとするほど辺りを包む。
わたしは光のない瞳でただそこに座る。
側の茂みがガサリと揺れる。
暗がりの中で金色の目が二つ光る。
久しぶりに現れた、黒い毛に覆われたあなた。
もう一つの物語へとわたしを誘う。
それは甘美な誘惑。
黒い犬は死の使い。
あなたを懐かしく思うことは死を想うこと。
わたしはずっと死に魅入られ、魅了されていた。
あなたはあるはずもない理想郷にとうとうわたしを連れていった。
永遠に。
口から血を流して倒れる花嫁。
人々の叫び声。
130作突破記念
「永遠に」
前回 10/23 120作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。
11/1/2024, 9:03:06 PM