宝物っていうのは特別なものかしら。
金銀財宝、海賊のお宝、昔話のお土産、特別な美しいものたち。
それともほんとはつまらないような、なんでもないような、日常だったりしないかしら。
なんでもない日常は、実はとても尊くて、美しいものたちでできている。
この世界がぶじに回って、人々が健康で、全ての生き物が生命をまっとうして、その中で自分は今日も息をして、ぶじにそれらを感受できている。
いのちのきらめき。
世界のきらめき。
わたしもその中の小さな一つのように、その中に埋もれる。
「宝物」
卵型のキャンドルの見る夢は、
中から雛鳥が出てくることだった。
でもそういえばてっぺんに謎に紐がついていたし、ずっと親鳥を見ないと思っていた。
親鳥を見ないから、もしかしたらこのまま雛が孵らず、腐ってしまうのかな。と。
なので、紐に火をつけられた時、驚いたし、動揺したけど、とろとろとてっぺんが溶け出し、自分が卵型のロウソクだったとやっと理解した時、雛鳥の心配をしなくてよかったことにほっとした。
そしてその火を、自分を、うれしそうに見てる人がいるから。
ほんとうに、ほんとうに、とてもよかったな。
と思った。
卵型のキャンドルには、雛鳥ではなかったけど、やっぱり中には温かくて、とてもすてきなものが入っていたんだね。
「キャンドル」
スマホのライブラリを眺める。
色んなところに行って色んな景色を見たみたい。
色鮮やかな写真が並ぶ。
誰かの愛しい可愛い写真もあれば
かっこつけてる写真もある。
スクショも混じってて、あの時こんな話したな。とか。
めんだこのグミの写真もあれば
シマエナガのチーズケーキの写真もあって、
これにシマエナガは入っているのか、とか。
食べかけの棒付きチョコの写真が出てきてぎょっとする。
ポ◯ちゃんの顔が舐められてる途中経過。
あれはなかなかホラーなお菓子なの。
上裸のあいつの写真が出てくる。
夏の間あいつは室内では上裸なのだ。
これは人に見られると気まずい。
パンイチでJOJO立ちしてる写真まである。
やべーやつだ。
そしてまた現れるホラーなF家のぺ◯とポ◯。
これから先も楽しい写真が増えるといいな。
「たくさんの想い出」
「もうすぐ冬になるね。」
エゾリスさんが言いました。
「ああ、そうだね。」
シマリスさんが言いました。
「ボクはさあ、冬、きらいじゃないんだよね。
そりゃあ食べ物とるのが大変になるけどさ。
空から降ってくる、白くてちらちらするあれに会えるし、世界が真っ白になって、その白いのが降り積もる音しかしない感じとか、ほんと、すきなんだよね。
木が透明なのに覆われて固まってたり、
光がキラキラ降ってる時もきれいなんだよなあ。」
「ああ、そうなんだ。」
シマリスさんが、こっくりこっくりしながら話を聞いた後、言いました。
「ボクは、そういうの、なにもしらないから。」
ふわあー、とあくびをしました。
「えっ、なんで?」
灰色ふわふわのエゾリスさんが言いました。
「だってボク、ずっとねてるもん。
冬の間?1年の半分くらいねてるんだよ。」
「なんだって!?
冬を見たことがないのかい!?
そんなにねたら頭ズキズキするよ!?」
「ああ、ごめん。
せいかくには何度も起きて巣穴でご飯を食べているよ。
今年も木の実、いっぱいたまったし、そろそろねようかな。」
しましまのシマリスさんは、眠そうに、じゃ、と片手をあげて去っていきます。
「つぎいつ会えるのー?」
エゾリスさんの大きな声がシマリスさんを追いかけます。
「桃色のお花がいっぱい咲くころかなー。」
「………
だいぶ、先だね………」
まだ日差しは暖かく、風が冷たい頃のお話。
「冬になったら」
マフラーを巻いて、僕たちは、銀杏の葉がちらちらと降る街を歩く。
桃色のマフラーがきみに似合っていてかわいいと思う。
そんなきみは
「はなればなれにならないように。」
と、まるで子供扱いするようなことを言って僕の手を繋いだ。
人が混んでるわけでもなし、ただ手を繋ごうとしただけだと思う。
なんとなくうれしい。
空気が冷たいから、よけいにきみの手の温度がわかりやすく伝わる。
きっと僕の手の温度もきみに伝わっているだろう。
繋いでる手から温度が行き来してる。
ほんとうに僕たちは今、はなればなれじゃないね。
「はなればなれ」