乗員7名の広い宇宙船。
船の中で何の病か、仲間が次々と倒れ、死んでいってしまった。
活発だった船員が、段々と動けなくなり、食事も飲み物も摂らず眠ってばかりになり、そのまま静かに息をしなくなる。
みんな同じ症状。
なぜか知らないがわたしだけは無事で、一人残されてしまった。
もうずっと一人。
そして食料も飲み物も残り僅か。
ほんとは母星やステーションに戻ることもできた。
でも仲間が次々と死んでいき、わたしの精神はまともではなくなり、それに、それらに戻ると仲間の死が決定的なものになるようで、戻りたくなかったのだ。
カプセルの中で、眠っているようなきれいな仲間達の体。
わたしが紙で作った花が、一輪ずつ置かれている。
わたしは大好きだったジュールの頬に、カプセル越しにキスをして、隣の自分のカプセルに入る。
そして一粒の飴玉を見つめる。
黒か藍かに無数の小さな銀色の粒がきらきらと散らばり、まるで宇宙を小さく固めたような粒。
これは仮死状態になる薬。
仮死状態の内に見つけられればわたしは息を吹き返し、見つからなければそのままほんとの眠りにつく。
どちらでもいい。
高い技術で作られた船は、どこまでも安全な航路を選択し、その性能は恒久的だ。
眠る7人を乗せて、船は穏やかに宇宙を進み続ける。
「眠りにつく前に」
11/2/2024, 11:39:49 PM