四年に一度のスポーツの祭典では
生首持ったマリーアントワネットがピアフの歌を歌い、血しぶきテープに赤い血煙。
キラキラのゴンドラにはプリマドンナ。
美しい旋律。赤と金のコントラスト。
セーヌ川では絵画の登場人物が、船くらいの大きな顔を川から半分覗かせて、妙に潤んだ目をキョロキョロ。
空には赤いハートの煙幕。
vive la France!と言わんばかりだね。
「お祭り」
「あっつい………しぬ………とける………。」
痩せ形色白髪の色素の薄い、いかにも貧弱な俺。夏は特に苦手。大学に行く途中、河川敷のアスファルトの道にへたりこんでいた。
ヒヤッ
‼︎?
「あげる。」
行きつけのコンビニの店員さんが、俺の頬に凍らせたスポーツドリンクを当てていた。
「熱中症にならないように、気をつけてね。」
そう言うと、ひまわりのような笑顔を残して、私服姿でまた自転車に跨り、コンビニのある方向に去っていった。
「神かな………。」
もらったスポーツドリンクを握りしめ、ぼーぜんとしながら言った。
さっきまで感じなかった風が、さあっと吹いた気がした。
なんでのぼせそうになってるんだっけ…
「神様が舞い降りてきて、こう言った。」
空を見上げて心に浮かんだのは
遠い日の記憶。私だけの。
ふと落とした視線の先には
私の名前が書かれた手紙。
そこには
"あなたが今一番欲しいものはなんですか。"
なんてかわいい字で書かれていて、
もしもタイムマシンがあったなら。なんて考えが浮かんできた。
たくさんの風鈴が、花が咲いたように揺れていたあの日のあの場所。
その中に、風に吹かれてあなたがいた。
私たちの出会い。
何度だって目に焼き付けたい。
私とあの子の間にあるのは友情のように思えるけれど、そんなことはどうでもいい。
ねえ、私ね、現実という鳥かごから二人で手を繋いで飛び出してどこかに行きたいって、よく思うんだよ。
でも、あなたのためになるならば、そんな事は言わないでおく。
さて、お手紙になんて返事しようかな。
30作突破記念
「誰かのためになるならば」
7/15 20作突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
◯作突破記念とか言っているがあくまで目安でけっこうてきとうに発動。
反応に関係なく自分が楽しいのでやってる企画。
インターバル的なもの。
学校帰り。幼馴染みの3人。
俺たちの通学路は、田んぼ、畑、小山、草むら。そんな景色だ。
小山を過ぎたところの草むらになった空き地に、
おっきな鳥かごのようなものがあった。
銀色のフレーム。
3階建ての建物くらいの大きさだろうか。
「わあっ、なにこれ!」
そう言いながら、透子は鳥かごに向かって歩きはじめた。
「こんなところにこんなもの………
朝まではなかったよな。」
と、隣を見たが、
「おーい!」
と、前の方で声がしたのでそちらを向いた。
「これすっげえぞ!かっけー!
おまえらも来いよー!」
大空はいつの間にか透子を抜いて鳥かごの中に入っていた。
それを見て透子も駆け寄る。
「しかたねえな…」
頭をくしゃくしゃして俺もそちらに向かった。
「わあーっ、かっこいい!きれーい!」
中に入った透子がはしゃいでいる。
おれも中に入り中央辺りに来た途端、
ガシャン!
入り口が閉まった。
「えっ」
と言うやいなや、鳥かごが浮いた。
しまった。
なんてばかだったんだ。
おれたちは動物の罠みたいに捕まってしまった。
宇宙人に………
「鳥かご」
「こちらが友情の実になります。」
僕は最近ふと見つけた "おかしな駄菓子屋" に来ていた。
駄菓子屋だとかいいながら完全に大人仕様。
店のふつうあるべき場所にはお菓子なんて一つも飾られていない。
小さな空間の奥に横長のカウンターがあって、その手前には椅子が一脚、カウンターの上、両サイドには某お菓子メーカーの◯◯の実のようなものが並んでいる。それだけ。
僕がこの店に入ってきょろきょろしていると、
カウンターの向こうから、眼鏡をかけ、耳の尖った青白く、吸血鬼か悪魔のような顔の男が声をかけた。
「何をお探しで?」
だから僕はなんとなく入ったことから、そのうちに世間話みたいに友達がいないなんてことまで話していた。
そして出されたのがこれである。
見た目はやっぱり◯◯の実。
容器を振るとジャラジャラと音がする。
「これをあなたから友達になりたい方に直に一粒渡して飲ませれば、仲のよい友達のように扱われるようになります。
効果は3日間です。
相性が悪いとよくないですからね。それくらいがいいでしょう。
関係を続けたければまた一粒飲ませればいいのです。」
「すごいですね………。」
ちょっと信じられないような思いで話を聞いていた。
「他にも愛情の実や、暑っ苦しい友情の心の友実、体が膨らんで浮き上がる風船の実なんかもございます。」
「へー………。
………ところで、僕はどうやってこれを相手に飲ませるんでしょう。
それができる時点で、なんか…そこそこの距離感ですよね………。」
「………………。」
どうやら僕はこんなすごいものがあってもぼっち確定みたいです。
「友情」