浴衣のきみが綺麗すぎて
花火の咲く空と、どちらを見たらいいかわからなくなるんだ。
「花咲いて」
7/16「空を見上げて心に浮かんだこと」とたぶん同一人物。
「タイムマシンを作ろうと思うんじゃが。」
「博士!そんなものが作れるんですか!?」
博士の突然の言葉に助手のジョシュアくんは目をキラキラと輝かせた。
「うん。理屈的にはいけそー。
だけど形をどんなものにしよーかなー。
うきわ型、ひよこボート型、銀の卵型………。」
「うきわ、ひよこ…………?」
「うきわ型は全身うまく転送されるか自信ないんじゃよなー。」
「博士!それはいけません!」
「でも持ち運びしやすくて身軽じゃぞ。」
「いえ、それでもいけません。
それはやめましょう!」
「そうか?じゃあひよこボート型かな。
まあそれならなんとか持ち運べるし。」
持ち運べる……?
この博士の言葉で、博士の言うものが、池にある足漕ぎのボートのようなものではなく、海に浮かべる空気で膨らますようなものだというのがジョシュアくんに伝わった。
「銀の卵は仰々しすぎるしな。むだに重くなるし人が驚くし。」
形はひよこボート型に決定してしまったみたいだ。
かっこいいのがよかったジョシュアくんはちょっとがっかりした。
「ところで博士、博士はタイムマシンで一体どのような偉業を成されるのでしょうか。」
「ん?
今はもうなくなった三軒隣にあったパン屋の角食パンを買うんじゃよ。」
口をあんぐりしてるジョシュアくんを尻目に博士は続ける。
「おいしいんじゃよ?
毎週買えるよ?」
「……………。」
「もしもタイムマシンがあったなら」
「こんにちは。死神さん。」
扉の側で男が驚いて立ちすくむ。
「うふふ。驚いているの?
目が見えないとね、他のところが敏感になるみたいで。
わたしでも知らなかったのよ。死神の存在に気づけるだなんて。」
少女は目を瞑り、男が現れる前のままのあさっての方向を向いて、手に杖を持って話していた。
「死神さんが現れるなんて…
わたし、死ぬのね。
いつ、死ぬのかしら。
………
今日のうち、かな。
なんとなくそんな気がするわ。
死神さんもそんなに長い時間いると思えないしね。」
「………。」
「いいの。わかってるの。
運命には逆らえないの。」
少女が自分の目のことを思いながら話しているのが、男にはなんとなくわかった。
夕食時、この日は少女の屋敷に親族も数名集まっているようだった。
少女の親は、視力を失った時に共になくしていた。
振る舞われた杯のうちの少女のものにだけ、毒が混入していた。
死神は、少女と親族のうちの一人のものと、杯を取り替えた。
死神は、少女に会い、話しかけられた時からきっと心を奪われていた。
ほんとうは、少女の魂を連れて、この世ではないところで共に過ごすことを望んでいたかもしれない。
けれど、死神は少女がこの先生きていく姿を見たくなったし、毒を飲んで苦しんで死ぬ様を見たくなかった。
またそれを見て喜ぶやつらの姿も。
なので死神はその毒を入れた者の魂を連れて行くことにした。
予定と違うので少し叱られはするかもしれないが、数が合うのでまあいいだろう。
「またいつか。
その時はちゃんとあなたが迎えに来てね。」
虚空に向かって少女が呟いた。
「今一番欲しいもの」
「だれかわたしの名前をしりませんか?
どこかに落としたのかもしれません。」
「おとしもの?おとしものならこうばんにいくといいよ。」
「ありがとう。」
「こんにちは、おまわりさん。
わたしの名前をしりませんか?
どこかに落としたかもしれません。」
「そんなとどけはでていないねえ。
ところできみはなんていうの。」
「…………。」
「だれかわたしの名前をしりませんか?
どこかに落としたかもしれません。」
「私の名前」
段違いになっているから
二階の窓からは裏の家の屋根が見える。
方形屋根のてっぺんに
鮮やかなイソヒヨドリが姿勢よくいる。
「視線の先には」