私だけの水色の下敷きを持って
(ふつうの透明下敷きを空にかざしただけ)
私だけの曲を鼻歌で口ずさんで
(私がてきとーに作ったからね。)
私だけの花を道端に見つけて
(こんなところに咲いてるなんてみんな知らないでしょ。)
私だけの道を歩いて
(縁石)
私だけの猫に会って
(この瞬間だけね)
かってに '私だけ' でいっぱいにしてるのを知ってるのも
私だけ。
「私だけ」
曽祖母の家に来るのはいつぶりだろう。
曽祖母も曽祖父ももういない。
近くに住む伯母がたまに手入れをしてくれていたらしい。
遠くに住む僕らが伯母に会うのを目的に久しぶりに訪れるということで、親戚が集まる場所として提供された。
縁側で西瓜にかぶりつき、庭に種を飛ばしていた。
草原、陽炎の向こうに、こどもの姿が見えた気がした。
光の眩しさもあって、僕は目を細めた。
気づくと、もうこどもは隣にいて、
「ねえ、いこうよ。」
そう言って僕の服の裾を引っ張った。
ちょうど西瓜は食べ終えた。
田舎のこどもは人なつっこいなあ。
そんなことを思いながら僕は立ち上がった。
庭履きのサンダルのまま、こどもに引っ張られるままついて行く。
「池に行くなら気をつけてよー。
昔も事故があったんだからー。」
伯母の声が追いかけた。
こどもはぐいぐい僕を引っ張っり、
足がもつれるようになりながらついて行った。
アスファルトの道から林を抜け、湖のように広い池に着いた。
池に何か浮かんでいる。
風による僅かな波でだんだん岸に寄せられた。
「さなだ ようすけ………」
サッカーボールにはひらがなで僕の名前が書かれていた。
〈とってよう!〉
〈とってよう!あれ、しんぴんなんだぞ!〉
《え…ええ…でも………》
〈でもじゃねえだろ!おまえがおとしたんじゃないか!〉
《………》
〈もういいよ!もうこうくんとはあそばない!〉
僕の全身から一気に血の気が引くのを感じた。
隣のこどもに目線を下ろした。
こどもは髪から服から全身ぐっしょりで、青白い顔で僕を見据えていた。
なんで、忘れてたんだろう。
「遠い日の記憶」
防波堤に並んで座って海を眺めて。
あの時はサイダーの味がした。
小指と小指で手を繋いで歩いて、最後にバイバイって。
きみの頬が紅色に染まってた。
光を映し出してキラキラしてるきみの瞳に吸い込まれて。
夏の青空も、緋色の夕空も、花火の咲く空も、
どんな空を見てもきみとのキスを思い出してしまう。
なんて、どうしてしまったんだろう。
「空を見上げて心に浮かんだこと」
繊細な花のような君と最後に会った日
あれはここではないどこか
夏の空には入道雲
僕たちは赤い糸で繋がれていると夢に見た。
窓越しに見える日差しに目を細めて、僕たちの、この道の先を想った。
神様だけがすべてを知っていると、目映い星空が言う
友だちとしての思い出すらない僕たち
七夕には街の明かりの中、浴衣姿の人達の中に、
当たり前のように君の姿を探した。
目が覚めると1件のLINE
それは君の居場所を知らせるもの
これまでずっと君に対して可能と不可能とを探るように、かってに優越感と劣等感を交互に抱えてきた。
僕は駆け出した。
君と手を取り合うことができたら。
今までの僕を、終わりにしよう。
20作突破記念
「終わりにしよう」
手を取り合ってかけ抜ける
星の粉散らして
今夜僕らは流れ星になる。
「shall we dance?」
シザース
サイドシャッセ
バックロック
ランニングフィニッシュ
ナチュラルターン
最後はオーバースウェイを決めて海にダイブ!
トポン!
水しぶきを指さして誰かが言った。
「流れ星が落ちたよ!」
「バカだな、魚が跳ねたんだよ。」
「手を取り合って」