ある庭にて────
「この庭の中で一番美しいのはわたしよね。」
桃色とオレンジ色が混ざったような色の薔薇が今日も咲き誇っている。
「薔薇さんには悪いけど、今はたおやかで凛々しく清々しく咲くわたしが主役よ。」
白いグラジオラスは呟いた。
自分たちには関係ない話と、揺れるえのころ草たち。
でもここのずぼらな庭の主は、ほんとはどの草花も等しくかわいらしく思い、そして等しくさして興味もなかった。
庭の隅で時期を過ぎてドライフラワーのようになった紫陽花が
「あっつー。」
と呟いた。
「優越感、劣等感」
ある深い深い海の底 人魚は住んでいた。
色素の薄い髪と睫毛の人魚。
人魚は美しい声を持っていた。
人魚は歌うことが好きだった。
けど、その美しすぎる歌声に多くの船乗り達が海に魅き寄せられ、呑み込まれていった。
人魚は悲しみ、歌うことをやめた。
ずっとずっとやめていた。
だが、ある時人魚は歌ってしまった。
我慢できなかった。
恋をした人間の男が、自分ではない、人間の女と船の上で結婚のパーティーをしていた。
悲しかった。
ただただ悲しくて気持ちを声に乗せるしかなかった。
海が人魚の声にこたえ、荒れ狂い、船を丸ごと呑み込んでしまった。
残るのはおだやかな海
ただただ、おだやかな海………
「これまでずっと」
LINEを送ると2階からバタバタと足音
お菓子のおさそい
「1件のLINE」
目が覚めると
寝てる間に何があったのか
悲しい気持ちで涙が伝っていたり
薄桃色みたいにしあわせな気持ちになってたり
ふて寝をしたものが薄らいでいたり
もっともっと眠りに逃げたかったり
目が覚めた時にどうなっているのかは目が覚めてみないとわからないのね。
それでもそうやって与えられる眠りがすき。
みんなによき眠りがきますように…。
「目が覚めると」
当たり前なんてないね。
当たり前なんてことはない。
自分が持てているものも当然だなんて思わないし、恒久だとも思わない。
世界のあらゆることも当たり前だなんて思ってない。
思ってないから世界が不思議だらけだ。
テレビの仕組みも、電話も、レンジも、エアコンも、冷蔵庫も、家電や乗り物や端末。
当たり前に使っているけどよくわかってない。
なんとなくそうなのか。くらいに思っているけど、ぜんぜんピンときちゃいないね。
生き物も不思議。
植物がにょきにょき、日々成長して形を変えて、花を咲かすの、すっごくふしぎ!
おたまじゃくしがぜんぜん違うカエルになるのもふしぎ!
空の色も、いろんな自然現象も不思議。
お月様がいつも同じ面で、距離がほぼ保たれていること。
太陽がちょうどいい距離にあるのも不思議。
酸素や、ミトコンドリアとか、地球がこんな風になってて、生き物が生息できるのが不思議。
ふしぎ。ふしぎ。ふしぎでとうとい。
出会う奇跡と幸せを、ふしぎがってありがたいって思ってる。
「私の当たり前」