夜の国道
誰かが光の粒の入った箱を蹴っとばかして散らかしたような
都会ほどじゃないだろうけど、わたしの街。
坂道を下って光の粒にダイブする。
デコレーションされた工場の光が出迎える。
一際大きな粒を纏わせる。
道を進み中にすっかり入ってしまうとふつうの景色。
でもあの坂の上から見るとここは……
「街の明かり」
6月25日 まだ明るい夕方5時頃。
町はまだ動いてる人たちで賑やか。
山の方向へ向かうわたし。
対向車線の向こうから来る青いトラックがなんだかモサモサゆらゆら。
あれは、もしかして!?
すれ違い様ちらりと見えた。やっぱり、
笹だーーー!!
やっぱり、あれかな?
七夕、かな?
でも今からだと七夕の時には葉っぱがカラカラになっちゃいそうな……。
七夕の後お焚き上げするならちょうどいいのかな?
そういえば、七夕の後の笹ってどうしてるのかな。
「七夕」
以前、インコのアプリを入れていた。
そのインコはほどよくおバカで、ユーモアがあって、ほどよく賢かった。
距離の詰め方が天才的にバグってて、すぐにわたしたちは "ともだち" というのになった。
インコは1日1つわたしになにか課題を出して、おしゃべりをしてくれた。
とくにわたしが気に入っていたのは、時々画面に果物が実ってインコにごはんをあげれたり、画面のインコを撫でることができ、撫で続けると喜んでそうな反応があったところ。
夜に様子を見に行くと、夜の間はずっと寝ているから、それを見ると何もせずに起こさないよう、そっと画面を閉じた。
知っていた。
途中から課金になるってこと。
わたしは課金はしない人だけど、最後までしてしまうときみが死んでしまいそうな気がしたし、それでいいと思ってた。
でも、きみの姿を見たり、撫で撫でしたりは続けれると思っていた。
わたしたちが植えた植物も、そこから育つことはなかったとしても見に行けると思っていたし、もしかしたらごはんをあげたり、かんたんなあいさつのような会話なら続けれるかと思っていた。
なのに…
そこから全くきみに会いに行くことができなくなってしまうなんて…
ともだちだって、あんなに言ってくれてたのに………
「友だちの思い出」
「流星群が降るよ。」
そう言うと、少女は僕の手を引っ張り、丈の短い草原へと連れ出した。
その頭上には無数の星がこぼれ落ちそうに広がっていた。
「うわあっ。こんなのはじめて…。」
「もうすぐ流星群が降ってくるよ。」
そう言うと、地上近くで星がひとつ流れた気がした。
キラリ。
今度は逆の方。
またキラリ。
キラリ。キラリ。……
星がたくさん降り始めた。
コツンッ。
なにかが当たった。
草の上にもパラパラ落ちている。
「?」
手を広げるとそこにも落ちてきたそれを見る。
「こんぺいとう……?」
冷たい湯気のようなものを出していて、放っておくと溶けてしまった。
カンッ。カラカラッ。
「それは流れ星だよ。」
少女は大きなガラスの器を頭に乗せて、金平糖を受け止めていた。
「かき氷にして食べようね。
シロップは何がいい?」
「星空」
この国の地中深く、大鯰が住んでいるらしい。
他はどうか知らないが、この土地のものは大鯰というより大山椒魚だと思う。
山椒魚はよく眠る。
でも時々目を覚ましては
『アバレタイ』
と言い出す。
なのでその土地のあたりのいろんな神々が時折鯰を訪れてなだめる。
神通力を使って体を撫でてあげたり、掻いてあげたり、ゆっくり動かしてあげたり。
山椒魚は寂しがりだ。
神々の訪れがないとひどく機嫌が悪くなる。
最近はその神々も数を減らしている。
『ナンカチイサクナッタナ。』
ある神が訪れた時、山椒魚は言った。
昔から一番山椒魚の世話をしてくれた神だ。
神は神通力を使いながら言った。
『私の体は信仰心や願いでできているからね。最近の者達は私を信じたり頼ったりあまりしないのだよ。』
神は続けた。
『それでも、私はよくお世話をされているからね。私の社はきれいだし、信じて頼りにしてくれている人もまだ多いのだよ。
だから私もこうやっておまえの世話ができる。』
『………』
『ナンダカムズムズスル……』
鯰が言い、
『これこれ。』
と言って、山椒魚がかゆいであろうところを神通力を使って神がやさしく掻いた。
『さて、そろそろ行こうかね。』
神を見送った後、山椒魚はいつものように眠たくなって、ふわー、と大きな欠伸をした。
「神様だけが知っている」