sunao

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ある深い深い海の底 人魚は住んでいた。
色素の薄い髪と睫毛の人魚。

人魚は美しい声を持っていた。
人魚は歌うことが好きだった。
けど、その美しすぎる歌声に多くの船乗り達が海に魅き寄せられ、呑み込まれていった。

人魚は悲しみ、歌うことをやめた。
ずっとずっとやめていた。

だが、ある時人魚は歌ってしまった。
我慢できなかった。
恋をした人間の男が、自分ではない、人間の女と船の上で結婚のパーティーをしていた。

悲しかった。

ただただ悲しくて気持ちを声に乗せるしかなかった。
海が人魚の声にこたえ、荒れ狂い、船を丸ごと呑み込んでしまった。


残るのはおだやかな海
ただただ、おだやかな海………




「これまでずっと」

7/12/2024, 4:45:17 PM