sunao

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曽祖母の家に来るのはいつぶりだろう。
曽祖母も曽祖父ももういない。
近くに住む伯母がたまに手入れをしてくれていたらしい。
遠くに住む僕らが伯母に会うのを目的に久しぶりに訪れるということで、親戚が集まる場所として提供された。
縁側で西瓜にかぶりつき、庭に種を飛ばしていた。

草原、陽炎の向こうに、こどもの姿が見えた気がした。
光の眩しさもあって、僕は目を細めた。
気づくと、もうこどもは隣にいて、
「ねえ、いこうよ。」
そう言って僕の服の裾を引っ張った。
ちょうど西瓜は食べ終えた。
田舎のこどもは人なつっこいなあ。
そんなことを思いながら僕は立ち上がった。
庭履きのサンダルのまま、こどもに引っ張られるままついて行く。
「池に行くなら気をつけてよー。
 昔も事故があったんだからー。」
伯母の声が追いかけた。
こどもはぐいぐい僕を引っ張っり、
足がもつれるようになりながらついて行った。

アスファルトの道から林を抜け、湖のように広い池に着いた。

池に何か浮かんでいる。

風による僅かな波でだんだん岸に寄せられた。

「さなだ ようすけ………」
サッカーボールにはひらがなで僕の名前が書かれていた。

〈とってよう!〉

〈とってよう!あれ、しんぴんなんだぞ!〉
《え…ええ…でも………》
〈でもじゃねえだろ!おまえがおとしたんじゃないか!〉
《………》
〈もういいよ!もうこうくんとはあそばない!〉

僕の全身から一気に血の気が引くのを感じた。
隣のこどもに目線を下ろした。
こどもは髪から服から全身ぐっしょりで、青白い顔で僕を見据えていた。


なんで、忘れてたんだろう。




「遠い日の記憶」

7/17/2024, 1:49:03 PM