sunao

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7/26/2024, 4:00:07 AM

学校帰り。幼馴染みの3人。

俺たちの通学路は、田んぼ、畑、小山、草むら。そんな景色だ。

小山を過ぎたところの草むらになった空き地に、
おっきな鳥かごのようなものがあった。
銀色のフレーム。
3階建ての建物くらいの大きさだろうか。

「わあっ、なにこれ!」
そう言いながら、透子は鳥かごに向かって歩きはじめた。
「こんなところにこんなもの………
 朝まではなかったよな。」
と、隣を見たが、
「おーい!」
と、前の方で声がしたのでそちらを向いた。
「これすっげえぞ!かっけー!
 おまえらも来いよー!」
大空はいつの間にか透子を抜いて鳥かごの中に入っていた。
それを見て透子も駆け寄る。
「しかたねえな…」
頭をくしゃくしゃして俺もそちらに向かった。

「わあーっ、かっこいい!きれーい!」
中に入った透子がはしゃいでいる。
おれも中に入り中央辺りに来た途端、
ガシャン!
入り口が閉まった。
「えっ」
と言うやいなや、鳥かごが浮いた。

しまった。
なんてばかだったんだ。

おれたちは動物の罠みたいに捕まってしまった。
宇宙人に………



「鳥かご」

7/24/2024, 2:19:15 PM

「こちらが友情の実になります。」

僕は最近ふと見つけた "おかしな駄菓子屋" に来ていた。
駄菓子屋だとかいいながら完全に大人仕様。
店のふつうあるべき場所にはお菓子なんて一つも飾られていない。
小さな空間の奥に横長のカウンターがあって、その手前には椅子が一脚、カウンターの上、両サイドには某お菓子メーカーの◯◯の実のようなものが並んでいる。それだけ。

僕がこの店に入ってきょろきょろしていると、
カウンターの向こうから、眼鏡をかけ、耳の尖った青白く、吸血鬼か悪魔のような顔の男が声をかけた。
「何をお探しで?」

だから僕はなんとなく入ったことから、そのうちに世間話みたいに友達がいないなんてことまで話していた。
そして出されたのがこれである。

見た目はやっぱり◯◯の実。
容器を振るとジャラジャラと音がする。

「これをあなたから友達になりたい方に直に一粒渡して飲ませれば、仲のよい友達のように扱われるようになります。
効果は3日間です。
相性が悪いとよくないですからね。それくらいがいいでしょう。
関係を続けたければまた一粒飲ませればいいのです。」

「すごいですね………。」
ちょっと信じられないような思いで話を聞いていた。

「他にも愛情の実や、暑っ苦しい友情の心の友実、体が膨らんで浮き上がる風船の実なんかもございます。」

「へー………。
 ………ところで、僕はどうやってこれを相手に飲ませるんでしょう。
 それができる時点で、なんか…そこそこの距離感ですよね………。」

「………………。」

どうやら僕はこんなすごいものがあってもぼっち確定みたいです。



「友情」

7/23/2024, 3:39:28 PM

浴衣のきみが綺麗すぎて

花火の咲く空と、どちらを見たらいいかわからなくなるんだ。



「花咲いて」
7/16「空を見上げて心に浮かんだこと」とたぶん同一人物。

7/23/2024, 12:06:29 AM

「タイムマシンを作ろうと思うんじゃが。」

「博士!そんなものが作れるんですか!?」
博士の突然の言葉に助手のジョシュアくんは目をキラキラと輝かせた。
「うん。理屈的にはいけそー。
 だけど形をどんなものにしよーかなー。
 うきわ型、ひよこボート型、銀の卵型………。」
「うきわ、ひよこ…………?」
「うきわ型は全身うまく転送されるか自信ないんじゃよなー。」
「博士!それはいけません!」
「でも持ち運びしやすくて身軽じゃぞ。」
「いえ、それでもいけません。
 それはやめましょう!」
「そうか?じゃあひよこボート型かな。
 まあそれならなんとか持ち運べるし。」
持ち運べる……?
この博士の言葉で、博士の言うものが、池にある足漕ぎのボートのようなものではなく、海に浮かべる空気で膨らますようなものだというのがジョシュアくんに伝わった。
「銀の卵は仰々しすぎるしな。むだに重くなるし人が驚くし。」
形はひよこボート型に決定してしまったみたいだ。
かっこいいのがよかったジョシュアくんはちょっとがっかりした。

「ところで博士、博士はタイムマシンで一体どのような偉業を成されるのでしょうか。」
「ん?
 今はもうなくなった三軒隣にあったパン屋の角食パンを買うんじゃよ。」
口をあんぐりしてるジョシュアくんを尻目に博士は続ける。
「おいしいんじゃよ?
 毎週買えるよ?」
「……………。」



「もしもタイムマシンがあったなら」

7/21/2024, 4:46:08 PM

「こんにちは。死神さん。」

扉の側で男が驚いて立ちすくむ。

「うふふ。驚いているの?
 目が見えないとね、他のところが敏感になるみたいで。
 わたしでも知らなかったのよ。死神の存在に気づけるだなんて。」
少女は目を瞑り、男が現れる前のままのあさっての方向を向いて、手に杖を持って話していた。

「死神さんが現れるなんて…
 わたし、死ぬのね。
 いつ、死ぬのかしら。
 ………
 今日のうち、かな。
 なんとなくそんな気がするわ。
 死神さんもそんなに長い時間いると思えないしね。」

「………。」

「いいの。わかってるの。
 運命には逆らえないの。」

少女が自分の目のことを思いながら話しているのが、男にはなんとなくわかった。


夕食時、この日は少女の屋敷に親族も数名集まっているようだった。
少女の親は、視力を失った時に共になくしていた。

振る舞われた杯のうちの少女のものにだけ、毒が混入していた。

死神は、少女と親族のうちの一人のものと、杯を取り替えた。


死神は、少女に会い、話しかけられた時からきっと心を奪われていた。
ほんとうは、少女の魂を連れて、この世ではないところで共に過ごすことを望んでいたかもしれない。
けれど、死神は少女がこの先生きていく姿を見たくなったし、毒を飲んで苦しんで死ぬ様を見たくなかった。
またそれを見て喜ぶやつらの姿も。

なので死神はその毒を入れた者の魂を連れて行くことにした。
予定と違うので少し叱られはするかもしれないが、数が合うのでまあいいだろう。


「またいつか。
 その時はちゃんとあなたが迎えに来てね。」

虚空に向かって少女が呟いた。



「今一番欲しいもの」

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