sunao

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7/20/2024, 5:05:53 PM

「だれかわたしの名前をしりませんか?
 どこかに落としたのかもしれません。」

「おとしもの?おとしものならこうばんにいくといいよ。」
「ありがとう。」

「こんにちは、おまわりさん。
 わたしの名前をしりませんか?
 どこかに落としたかもしれません。」
「そんなとどけはでていないねえ。
 ところできみはなんていうの。」
「…………。」

「だれかわたしの名前をしりませんか?
 どこかに落としたかもしれません。」



「私の名前」

7/19/2024, 8:05:47 PM

段違いになっているから
二階の窓からは裏の家の屋根が見える。


方形屋根のてっぺんに
鮮やかなイソヒヨドリが姿勢よくいる。


「視線の先には」

7/18/2024, 4:41:36 PM

私だけの水色の下敷きを持って
(ふつうの透明下敷きを空にかざしただけ)

私だけの曲を鼻歌で口ずさんで
(私がてきとーに作ったからね。)

私だけの花を道端に見つけて
(こんなところに咲いてるなんてみんな知らないでしょ。)

私だけの道を歩いて
(縁石)

私だけの猫に会って
(この瞬間だけね)

かってに '私だけ' でいっぱいにしてるのを知ってるのも
私だけ。



「私だけ」

7/17/2024, 1:49:03 PM

曽祖母の家に来るのはいつぶりだろう。
曽祖母も曽祖父ももういない。
近くに住む伯母がたまに手入れをしてくれていたらしい。
遠くに住む僕らが伯母に会うのを目的に久しぶりに訪れるということで、親戚が集まる場所として提供された。
縁側で西瓜にかぶりつき、庭に種を飛ばしていた。

草原、陽炎の向こうに、こどもの姿が見えた気がした。
光の眩しさもあって、僕は目を細めた。
気づくと、もうこどもは隣にいて、
「ねえ、いこうよ。」
そう言って僕の服の裾を引っ張った。
ちょうど西瓜は食べ終えた。
田舎のこどもは人なつっこいなあ。
そんなことを思いながら僕は立ち上がった。
庭履きのサンダルのまま、こどもに引っ張られるままついて行く。
「池に行くなら気をつけてよー。
 昔も事故があったんだからー。」
伯母の声が追いかけた。
こどもはぐいぐい僕を引っ張っり、
足がもつれるようになりながらついて行った。

アスファルトの道から林を抜け、湖のように広い池に着いた。

池に何か浮かんでいる。

風による僅かな波でだんだん岸に寄せられた。

「さなだ ようすけ………」
サッカーボールにはひらがなで僕の名前が書かれていた。

〈とってよう!〉

〈とってよう!あれ、しんぴんなんだぞ!〉
《え…ええ…でも………》
〈でもじゃねえだろ!おまえがおとしたんじゃないか!〉
《………》
〈もういいよ!もうこうくんとはあそばない!〉

僕の全身から一気に血の気が引くのを感じた。
隣のこどもに目線を下ろした。
こどもは髪から服から全身ぐっしょりで、青白い顔で僕を見据えていた。


なんで、忘れてたんだろう。




「遠い日の記憶」

7/16/2024, 2:44:25 PM

防波堤に並んで座って海を眺めて。
あの時はサイダーの味がした。

小指と小指で手を繋いで歩いて、最後にバイバイって。
きみの頬が紅色に染まってた。

光を映し出してキラキラしてるきみの瞳に吸い込まれて。


夏の青空も、緋色の夕空も、花火の咲く空も、
どんな空を見てもきみとのキスを思い出してしまう。
なんて、どうしてしまったんだろう。




「空を見上げて心に浮かんだこと」

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