繊細な花のような君と最後に会った日
あれはここではないどこか
夏の空には入道雲
僕たちは赤い糸で繋がれていると夢に見た。
窓越しに見える日差しに目を細めて、僕たちの、この道の先を想った。
神様だけがすべてを知っていると、目映い星空が言う
友だちとしての思い出すらない僕たち
七夕には街の明かりの中、浴衣姿の人達の中に、
当たり前のように君の姿を探した。
目が覚めると1件のLINE
それは君の居場所を知らせるもの
これまでずっと君に対して可能と不可能とを探るように、かってに優越感と劣等感を交互に抱えてきた。
僕は駆け出した。
君と手を取り合うことができたら。
今までの僕を、終わりにしよう。
20作突破記念
「終わりにしよう」
手を取り合ってかけ抜ける
星の粉散らして
今夜僕らは流れ星になる。
「shall we dance?」
シザース
サイドシャッセ
バックロック
ランニングフィニッシュ
ナチュラルターン
最後はオーバースウェイを決めて海にダイブ!
トポン!
水しぶきを指さして誰かが言った。
「流れ星が落ちたよ!」
「バカだな、魚が跳ねたんだよ。」
「手を取り合って」
ある庭にて────
「この庭の中で一番美しいのはわたしよね。」
桃色とオレンジ色が混ざったような色の薔薇が今日も咲き誇っている。
「薔薇さんには悪いけど、今はたおやかで凛々しく清々しく咲くわたしが主役よ。」
白いグラジオラスは呟いた。
自分たちには関係ない話と、揺れるえのころ草たち。
でもここのずぼらな庭の主は、ほんとはどの草花も等しくかわいらしく思い、そして等しくさして興味もなかった。
庭の隅で時期を過ぎてドライフラワーのようになった紫陽花が
「あっつー。」
と呟いた。
「優越感、劣等感」
ある深い深い海の底 人魚は住んでいた。
色素の薄い髪と睫毛の人魚。
人魚は美しい声を持っていた。
人魚は歌うことが好きだった。
けど、その美しすぎる歌声に多くの船乗り達が海に魅き寄せられ、呑み込まれていった。
人魚は悲しみ、歌うことをやめた。
ずっとずっとやめていた。
だが、ある時人魚は歌ってしまった。
我慢できなかった。
恋をした人間の男が、自分ではない、人間の女と船の上で結婚のパーティーをしていた。
悲しかった。
ただただ悲しくて気持ちを声に乗せるしかなかった。
海が人魚の声にこたえ、荒れ狂い、船を丸ごと呑み込んでしまった。
残るのはおだやかな海
ただただ、おだやかな海………
「これまでずっと」
LINEを送ると2階からバタバタと足音
お菓子のおさそい
「1件のLINE」