題 太陽
あなたは太陽だよ。
そんなこと言ったらどう反応するかな?
笑うかな?呆れるかな?嬉しい?はたまた戸惑う?
大好きなあなたが隣にいるのをチラッと確認してしまう私。
だって好きなんだもん。
こうしてデートできるだけで本当に天にも昇る想いで。
あなたと出会えたこと、あなたと恋していること、あなたと恋人になれたことにいつも感謝してる。
私にとってあなたは太陽。
う〜ん、笑われてしまいそう、その可能性もあるかも。
でも、太陽ならそんな反応こそ実は相応しいのかも。
私がふふっと笑うと、あなたは不思議そうな顔をして私を見た。
「何で笑ってるの?」
「あなたって太陽みたいだなぁって思って」
「え?太陽みたい?何言ってるの、君でしょ、それは。君こそ太陽みたいだよ、いつも明るくて、優しくて、可愛くて、見てて楽しくて、今も太陽みたいとか意味不明なこと言ってるし」
「あ・・・えっ、そ、そんな・・・」
意味不明という言葉にツッコミを入れる前に、まさかの褒め殺しの言葉に照れてしまう。
うう、予想してなかった反応・・・。
でも、素直に嬉しい。
と思ってると頭を撫でられる。
「!」
ビックリして彼氏を見ると彼氏は首を傾げて私を見ていた。
「可愛い」
「・・・もういいから、私の負けたから」
「え〜!どういうこと?相変わらず君って面白い」
彼氏の爆笑が太陽の笑顔みたいで眩しい。
こんな彼氏といられて、私は改めて幸せを噛み締めていた。
どっちが太陽でもいいんだ。
あなたがいてくれれば私は何だっていいんだから。
題 鐘の音
鐘の音がなる。
切ない気持ちで私は結婚式の2人を見つめた。
幸せそう。そうだよね。あなたたちは出会った時からすぐに惹かれ合ってあっという間にスピード結婚したもんね。
私は、その前からずっと好きだったのに。
その前から、食事とか誘ってたのに。
話せただけで舞い上がってたのに。
何も通じてなかったんだね。
あの子と出会ったあなたの頭の中はあの子の事ばかりで。
話してても上の空。視線はあの子を追ってて、話してても切ないだけだった。
食事はいつもあの子との先約。
あなたがそんなに動く人だって思いもしなかった。
いつもあなたの行動には、言葉には、思考にはあの子がいて・・・たまらなかった。
私の今までの気持ち全てないがしろにされたみたいで。
家に帰ったら涙が止まらなかった。
それなのに追い打ちをかけるように、あなたは結婚してしまった。
私は今、これが現実なのか考えてるよ。
今まで頑張った私は。恋してた私は。
どこへ行けばいいのかな。この抱えきれない気持ちは、どうしたらいいの・・・。
私は笑顔を貼り付けておめでとうと拷問のような言葉を放つ。
ねえ、幸せになってほしくないのに、あなたの笑顔が凄く幸せそうで見たこともなくて。
そんな姿を見られるのが嬉しいとどこかで感じてしまってる。
だから・・・もう少し時間がたったら・・・あなたの幸せを願えるように頑張るから・・・。
今日は、まだ複雑な相反する気持ちを抱いてる私を許してね。
題 つまらないことでも
つまらない、つまらないよ〜!
私は机に伏せた。
「ねぇ?何この自習課題。先生正気かな?単語永遠に写すの終わらないんだけど」
「ねー?私もそう思う」
面倒くさそうに前の席に座る親友の葉子が振り向く。
「もー頭が停止して今すぐ睡眠の世界に誘われるわ」
「分かる。あーー、もうっ」
私は一語一語丁寧に単語を写しながら抗議の声を上げた。
「まぁまぁ、こうして書いてる時に、いろいろ考えると楽しいよ」
隣の席から陽気な声がした。
私はうんざりして隣の席に視線を移す。
いつも賑やかに友達と話してるお祭り男、鷹人がこっちを見てた。
「いろいろ〜?!」
不審な目で鷹人を見ると、鷹人は笑顔で私に畳み掛けるように言う。
「うん、そうそう。単語を頭でイメージするとかさ、単語の発音を歌にしてみるとか♪」
楽しそうに言う鷹人の言う言葉が意外にまともで、私は意外に思って聞き返す。
「歌?鷹人って歌にしてるの?単語写しながら?」
「そうだよ、ただ写しててもつまらないじゃん。いつも楽しくできないかなって考えてるよ」
「へーっ」
私は鷹人を少し見直していた。
「そうだね、そうやって覚えるのはいいかも、私もやってみようかな?」
「本当?じゃあ、この単語はどー歌う?」
鷹人の楽しそうな笑顔に私まで笑顔になってしまう。
「えーとね〜」
「なになに?楽しそう・・・」
前にいた葉子が振り返って私たちを除きこむ。
そうして・・・。
クラスに派生した英語ソングの大合唱に、隣のクラスの先生が怒鳴り込んできて大目玉を喰らったことは言うまでもない。
題 目が覚めるまでに
「どうしよう!」
私は隣ですやすや寝ている彼氏を見て顔を青ざめるのを感じていた。
今日は私の部屋で一緒にデートしてて、彼氏が誕生日だから、こっそりバースデーケーキを買っていた。
密かに冷蔵庫に入れて、それから彼氏が来たら映画見てたら、そのまま2人でいつの間に寝てしまってたんだけど・・・。
二人共最近仕事がいそがしかったから疲れてたんだろうな・・・。
それで、ハッとさっき目覚めて、冷蔵庫からケーキを取り出して、テーブルに用意しようとしてたら、なんと・・・生クリームがチョコクリームになっていた。
仕事帰りにケーキを受け取ったから、急いでて確認はいいですって言って帰ってきたものの・・・。
彼氏、チョコレート苦手なんだよなぁ。
なんでよりによってチョコだったんだろう。
フルーツとか、モンブランとか、チーズケーキとかでも良かったじゃない!
私は、テーブルの上で輝く茶色いケーキを呆然と見つめていた。
今からケーキ屋さん行っても間に合わないよ・・・。
せっかく喜んでもらいたかったのに・・・。
「あ・・・寝てたね」
不意に声が横から聞こえた。
横を見たら、彼氏が目をこすりながら目覚めようとしていた。
「あ、おきたの?!」
私はケーキが目に入らないように、彼氏に覆いかぶさる。
「え?!何?」
いきなり、目の前に立ちふさがった私にびっくりしたような顔で彼氏が私の顔を見上げた。
「何でもないよ・・・。ほら、今日誕生日でしょ?おめでとうって言いたくて・・・」
私はむりやり笑顔を作った。
でも、笑顔は引きつっていたし、視線も泳いでいたに違いない。
彼氏はジーッと私を見つめた。
「どうしたの?」
あ、やっぱり気づかれた・・・。
勘良いからなぁ。絶対に気づかれちゃうと思ってた。
「そこ、ちょっとどいて」
彼氏に言われる。
「やだ」
「なんで」
私が反射的に拒絶すると、彼氏の顔が険しくなる。
「やだから」
「子供じゃないんだから、なに?その理由」
呆れたような声で私をどかそうとする彼氏。
「待ってっ!」
彼氏にしがみついた私を優しく避けると、彼氏は私の向こうに視線をやって、チョコレートケーキに目をやった。
「あ、ケーキ用意してくれたの?」
弾んだ声で私に視線を移す彼氏に、私はうつむいて答える。
「・・・ごめんね、生クリームのケーキを注文したのに、チョコレートケーキを店が間違えちゃったみたいで・・・。チョコ苦手でしょ?」
私がうつむいたまま、落ち込んでいると、ふわっと彼氏の暖かさを全身に感じた。
彼氏が私を抱きしめてくれていた。
「何言ってるの。ありがとう。ケーキ用意してくれた気持ちが嬉しいに決まってるだろ。チョコケーキでも何でも、オレのこと思ってくれたのが本当に嬉しいよ」
「・・・ありがとう・・・・」
私は感激して、優しい彼氏の言葉とぬくもりの暖かさに身を任せる。
「大好きだよ、お誕生日おめでとう。私と出会ってくれてありがとう」
「うん、それはオレのセリフだけどね。いつも側にいてくれてありがとう。俺のこと考えてくれるのも嬉しいよ」
そうしてひとしきり抱き合った後、彼氏はいたずらっぽく私を見た。
「・・・で?どうしよっか?このチョコケーキ、ホールでいっちゃう?」
「もー!」
私は笑顔で彼氏をたたく真似をする。
「ははっ、冗談、オレもチョコ食べれない訳じゃないから、一緒に食べよう」
「・・・本当?」
「本当。一緒にお祝いしてくれる?」
優しい彼氏の瞳の輝きを見つめながらもちろん私は頷く。
私達は笑顔で見つめ合うと、仲良くチョコケーキを切り分けて、楽しい誕生日のひとときを過ごしたんだ。
題 病室
ここから見る景色はいつも一緒
木が茂っている。
病院の中庭が見える。
こんなに近く見えるのに、手で触れられそうなのに、私はここから動けない。
体が生まれつき弱いから。
看護師さんに病室のベッドから窓を開けてもらって外の風を受ける。
柔らかい。夏になりかけの、少し草の匂いがする風。
息を吸い込むと心地よくてそのまま目をつぶって外の風を感じ続ける。
目を開いて、さわさわと揺れる葉っぱを見る。
とても鮮やかな色だ。
下に行きたい。
葉っぱに触れてみたい。
この窓から身を乗り出して、木に乗り移って、そのまま下に降りてしまいたい。
・・・でも、出来ない。
やりたいこと、たくさんある。
でもそのほとんどは出来ない。
私には希望がない。
さっきまで柔らかく感じていた風が急に無味乾燥なものに感じてしまう。
両手で目を覆う。
どうして
どうして
何回も繰り返した問いかけ。
私にはどうして自由がないの?
外で歩き回ることすら許されないの?
私はなんでここにいるの?
でもその度に声がするんだ。
だって、命があるから。
だって大事な家族が愛してくれるから。
だって美しいこの世の全てを目に焼き付けて、そして五感で感じられるものがあるから。
頭の中に響く声。
その声は甘やかで優しくて、私はその声にいつも心が優しくなるのを感じる。
そうだよね。
そうだね。
私は生きていられる。
私は考えられる。
私は風を感じられる。
美味しいもの食べられる。
それがどんなに幸せか忘れそうになる。
欲しいものに手を伸ばし続けて、いまある豊かさを忘れてしまいそうになる。
でも、私の頭の声がいつもそれを思い出させてくれる。
ありがとう。
どんな存在か分からないけど、私にいつも言葉の贈り物をくれてありがとう。
そうして再び目を移した窓の外は、例え外へ行けなくてもとても美しく輝いて見えたんだ。