ミントチョコ

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題 病室

ここから見る景色はいつも一緒

木が茂っている。
病院の中庭が見える。
こんなに近く見えるのに、手で触れられそうなのに、私はここから動けない。

体が生まれつき弱いから。

看護師さんに病室のベッドから窓を開けてもらって外の風を受ける。

柔らかい。夏になりかけの、少し草の匂いがする風。

息を吸い込むと心地よくてそのまま目をつぶって外の風を感じ続ける。

目を開いて、さわさわと揺れる葉っぱを見る。

とても鮮やかな色だ。

下に行きたい。
葉っぱに触れてみたい。

この窓から身を乗り出して、木に乗り移って、そのまま下に降りてしまいたい。

・・・でも、出来ない。

やりたいこと、たくさんある。

でもそのほとんどは出来ない。
私には希望がない。

さっきまで柔らかく感じていた風が急に無味乾燥なものに感じてしまう。

両手で目を覆う。

どうして
どうして

何回も繰り返した問いかけ。

私にはどうして自由がないの?

外で歩き回ることすら許されないの?

私はなんでここにいるの?

でもその度に声がするんだ。

だって、命があるから。

だって大事な家族が愛してくれるから。

だって美しいこの世の全てを目に焼き付けて、そして五感で感じられるものがあるから。

頭の中に響く声。

その声は甘やかで優しくて、私はその声にいつも心が優しくなるのを感じる。

そうだよね。
そうだね。

私は生きていられる。
私は考えられる。

私は風を感じられる。
美味しいもの食べられる。

それがどんなに幸せか忘れそうになる。

欲しいものに手を伸ばし続けて、いまある豊かさを忘れてしまいそうになる。

でも、私の頭の声がいつもそれを思い出させてくれる。

ありがとう。

どんな存在か分からないけど、私にいつも言葉の贈り物をくれてありがとう。

そうして再び目を移した窓の外は、例え外へ行けなくてもとても美しく輝いて見えたんだ。

8/2/2024, 12:02:59 PM