ミントチョコ

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4/18/2024, 12:27:08 PM

題 無色の世界

「水って綺麗だよね」

私は隣を歩くボーイフレンドに話しかけた。

「ん?何?唐突だね」

ボーイフレンドはびっくりしたような反応をする。

「うん、ほら、あそこ、噴水あるでしょ?」

私達は公園でデートしていた。図書館の帰りに公園の近くのカフェに向かうことになったんだ。

「あるね、噴水」

「私、図書館帰りにいつも近くを通ったり、噴水の脇に座って水を眺めてるんだけど、いつも凄くキレイだなって思うんだ。光の反射できらめいたり、水がさざなみを立てたり」

「前から思ってたけど、君って文学的な表現をよくするね」

「そうかな?だってそう思うんだから仕方ないでしょ?」

私がそう言うと、ボーイフレンドは、苦笑した。

「悪いなんて言ってないよ」

「そ?それでね、水の色って、透明だけど、海とかは青いし、もっと浅瀬だと水色に見えるし、それが凄く不思議だなって思ったんだ。水は無色なはずなのに、色んな色彩を見せてくれるから、見てて飽きないなって」

「確かにね。光の反射でそう見えるんだけど、言われてみると不思議だし面白いね」

「そうでしょ?」

ボーイフレンドに肯定されたのが嬉しくて、思わず私は笑顔になる。

「でも、僕は君のほうが不思議で面白いけどね」

「え〜何それ?面白いとか失礼じゃない?」

私はその言葉に不満を覚える。

「褒め言葉だったんだけど」

ボーイフレンドも不満気な顔をする。

「そうだったの?」

私がボーイフレンドを見上げると、彼も同時に私を見下ろした。

「うん、そうだよ」

笑顔が少し眩しい。私はさっと視線をそらす。

「じゃあ、カフェに行こうか」

ボーイフレンドは気にすることなく、先へと進みだした。

私は少しだけ立ちすくんで噴水の水を眺める。
音を立てて吹き上がり、勢いよく落ちる水の流れ。
無色だけど、形作られた様々な造形を見ていると、何となく吸い込まれるように見てしまう。

水の持つ魅力に私はいつも囚われてしまう。

「行こうよ」

ボーイフレンドが戻ってきて、そっと私の手を取る。

ハッと我に返った私は頷く。

「そうだね」

また明日ゆっくり噴水を見に来ようかなって思いながら。

4/17/2024, 11:38:11 AM

題 桜散る

桜の花びらがヒラヒラと私の眼の前に舞い降りてきた。
隣にいる彼氏が手のひらを差し出してその花びらをキャッチする。

「花びら、きれいだな」

そう言って差し出した彼氏の手のひらに指を差し出して、小さな淡いピンクの花びらをつまんだ。

「うん、お花見、来れてよかった」

私が彼氏を見上げて微笑む。

4月から違う高校に通っている私達。
新しい高校には同じ学校から通う友達が一人もいなくて、一人で何となく出遅れてた。
それでも、好きな英語学部に行きたかったから、英語の専攻の授業が沢山あって、嬉しかった。

それでも、寂しさもある。
いままで中学まで彼氏と女友だちと一緒に楽しく過ごしていたから。

全然違う環境の高校でストレスが溜まっているのか、疲れてしまう。

彼氏は、同じ中学の友達が沢山通っている高校だから楽しそうだ。同中の女の子も沢山彼氏の高校に進学しているから、そこも心配になってしまう。

だけど、毎日通話して、気遣ってくれる彼氏。
それで、私が元気がないのを知って、お花見に誘ってくれたんだ。

「ありがとう、凄く綺麗だし、気分転換になったよ」

私は笑顔で彼氏に笑いかける。

「うん」

彼氏も微笑んで私の頭に手を乗せた。

「もっと一緒にいられたらいいのにな」

ドキッ
彼氏のそんな言葉に、私はトキメキを感じる。
それと同時に嬉しさも沸いてきた。

「・・・そうだね、それでも、こうして会えるだけで嬉しいよ。また明日から頑張れそう」

私は心からの気持ちを彼氏に伝える。

「・・・良かった。でもな」

彼氏が何となく拗ねたような顔をする。

「ん?」

私は何だろうと聞き返す。

「同じ高校にカッコいい男がいたりしないか?」

「・・・ふふっ!」

私は、自分と同じことを考えている彼氏に思わず笑ってしまう。

「何で笑うんだよ」

彼氏は笑ってる私に軽く抗議した。

「ううんっ、大丈夫だよ、あなた以上のイケメンは高校にいないから、安心して」

私の言葉に、彼氏は、ホッとしたような笑みを見せた。
そんな彼氏に、私は彼氏の手を取って顔を見つめる。

「また、すぐデートしようね」

「そうだな」

私達は、そのまま見つめ合っていた。

ヒラヒラ

桜の花びらが視線の横をよぎる。

私は顔を上げて、風が吹き付け散っていく桜吹雪を見つめた。
まるで薄桃色の雪の中にいるようだ。

横に彼氏がいてくれるのが、たまらなく嬉しい。

その時、この手をずっとずっと繋いでいたいって、強く強く思ったんだ。


4/16/2024, 1:27:52 PM

題 夢見る心

「サンタクロースはいるんだよ!」

私がそう言うと、友達2人がプッと吹き出した。

「まーたミナが変なこと言い出した」

「ねー、いないって言ってるのにね」

二人の笑い顔を見ながら、私は重ねて言う。

「サンタクロースはいるよ、だって、いつもプレゼントいつもくれるもん」

「だーかーらー、それは違うんだって何度も言ったじゃん」

しつこい私の言葉にイライラしたようにサユミが言う。

「そうだよ、強情だな。中学生にもなって恥ずかしくない?」

タエがさゆみに同調する。

「恥ずかしくないよ、全然」

私は真っ直ぐな視線で2人を見つめる。

「もういいよ、行こう」

2人は行ってしまう。この話題になると、いつも喧嘩になっちゃうなぁ。

でも・・・。でも、そうなんだもの。

私には妖精が見えるんだもの、小さい頃から。
だから、サンタクロースだっているんじゃないかなと思ってる。

妖精は、そのへんをいつもうろうろしてて、羽根が生えてたり、動物みたいな可愛らしい姿のもいるし、赤い帽子被ってるのもいる。

小さい頃はそれを話してたらお母さんに叱られてたから、今は言わないけど、不思議な存在は確かに実在するんだ。

妖精たちとは話せない。見えるだけで特に干渉もしてこない。

確か、サンタクロースは、妖精に手伝ってもらってプレゼントを作ってもらってるんだったよね?

絵本で見たことがある。

それなら、いてもおかしくない。実際にこの目で見たことはないけど、私は信じてる。

でも、もう友達にもサンタはいるって言わないほうがいいのかも。

サンタクロースも、妖精も、他の人には見えないから、いないも同然のものなんだよね。

私には日常に溶け込んでいるけど、他の人には見ることが出来ない。

まるで夢の世界のようだ。

私はずっとこの夢の世界で過ごしていよう。
いや、過ごしていたい。

不思議で、どこか美しさの中に怖さもある妖精の世界。
この世界に私は魅了され続けているんだ。

4/15/2024, 1:18:34 PM

題 届かぬ想い

どうせ私の想いは届かない。
届くわけないんだ。

だって・・・

「席につけ〜!」

教室に入って来た担任の先生をこっそり盗み見る私。
いつもと同じくカッコいい。

この学校で一番人気がある先生。
面白いし、優しいし、生徒に平等だ。

だからこそ、望みなんてない。
生徒が先生に告白したなんてウワサは聞くけど、全部ダメだったらしい。

そりゃ、未成年に手を出したら先生逮捕されちゃうし、そんなことしないって分かってる。
でも、この気持ちは止められないんだ。

どうしたらいいんだろう・・・。
見ていられたらいいと思ってる。
でも、最近、告白した子達の気持ちも分かるんだ。

もう苦しくて、どうにかしたくて、想いを告げて終わりにしたいって。
そう思ってしまうほど、先生が好きだ。

「おい。高田」

私がボーッとしていると、名前を呼ばれる。
先生がこちらを見つめていた。

「は、はいっ!!」

私は慌てて返事をする。

「高田は国語教科係だろ?ちょっと手伝ってくれるか?」

「はい」

私は起立して、先生の後に続く。
先生の担当の国語教科係も、凄い人気で、執念のジャンケンで勝ち取った地位だ。

「どうした?さっきは、眠かったのか?」

私がボーッとしていたことを言ってくれている。先生って優しい。本当に生徒をよく見てる。
こうして、細かく声をかけてくれるから好きになっちゃうんじゃないか、と理不尽な怒りも湧いてくる。

「いえ、ちょっと考え事を」

「そっか、今の時期っていろいろ悩みあるよな」

「先生も・・・悩みあるんですか?」

私はふと、質問してみたくて尋ねた。
先生も悩むことあるのかなって。

「ああ、実はな、先生、今度結婚することになったんだけど、結婚式のことで相手と結構意見が違ってな。難しいんだなって思ってるよ」

「あっ・・・」

私は一言発したまま、固まってしまう。け、結婚?結婚って言った?

「せ、先生が結婚するの?」

間違いであってほしいと、確認すると、先生は嬉しそうに頷いた。

「ああ。ついにかな。大分待たせたからなぁ」

「そう、なんですか・・・」

私はそれから20分ほど、記憶が飛んでしまっていた。

何を言ったんだろう。それから、教室に戻って、先生がみんなに結婚することを話していた。

私はどこか遠くでそれを聞いていた。

先生を好きだった女子達からの悲鳴が上がる。


言えばよかったのかな?好きって。
そしたら私は気が済んだのかな?
振られてそれで、諦めて、今祝福できてた?

分からない。
でも、さっき結婚のことを話す先生の顔が見たこともないくらい幸せそうだった。
ショックなのと同時に、そんなに幸せそうな顔を出来るような相手で良かった、と思ったんだ。

その相手は私じゃなかったけど、その気持ちを一瞬でも持てたから、きっと今は無理でも先生のこと祝福できる。

私は泣きそうになる顔をパシパシと軽く叩きながら、自分に何度も言い聞かせていた。

4/14/2024, 3:05:52 PM

題 神様へ

神様へ
1つだけ願いを叶えてほしい。

それは・・・。

私、男の子になりたい!
小さい頃から、全然女の子のグループに馴染めなかった。
だって、折り紙とか、塗り絵とか、したくないし!
何かグループの子以外と話すとグチグチ言われるし。

私はかけっことか、サッカーとか、戦いごっことか、度胸試しとかそういうのが大好き。

毎日服をどろんこにしてはお母さんに叱られてた。
でも、そんなの関係ないよ。私には。
遊んでたら自然とそうなるんだから。

スカートは色んなとこ登ったり、狭い茂みを通る時引っかかるから嫌い。

高校生になった今も履くことはない。ズボンスタイルのみ。高校はズボンスタイルも制服モデルにあるから助かってる。

こんな性格だから、友達も男の子ばかり。
なんなら、女子にも、私は男の子だと認識されてるかも。
性別は女だけど、髪も短いし、いつも男の子みたいなシャツとズボンの組み合わせ。

学校は・・・そんなに問題ない。
私が男の子と話しててもみんな受け入れてくれるし。
女の子は、別にグループに入ってなければいざこざもなく、みんな優しい。

問題は家だ。
親は、ずっとうるさい。女の子なんだからって。
女の子なんだからもっとおしとやかにしなさい、服装可愛くしなさい、髪の毛ももう少し伸ばしなさい。

もう、ほんっとうにうるさいの!

どうにかならないかな?

お父さんもうるさいよ。言葉遣いとか、男子といるとどうしても荒くなるんだけど、ついつい言っちゃうと注意される。

だから、いっそ男の子だったらこんなことで悩まなくていいでしょ?

神様がいるなら、私を男の子にしてほしいんだ。

て言ったら、友達の寛太に凄い否定された。

「そんなのやめとけって。何考えてるんだよ?」

「え?そこまでじゃないでしょ?寛太も、私が男なら一緒に男子サッカー部入れるし嬉しいでしょ」

私がそう言うと、寛太は少し考える。

「う〜ん、確かに。それは嬉しいけど。お前、強いし、サッカー部最強だろうな。けどさ、よく考えろよ。初美は、女の子好きなの?恋愛対象だぞ?」

「あ・・・んーまぁ、別にいいよ。男になったら女の子を好きになるんじゃない?」

私があっけらかんというと、寛太は「いいのかよ・・・」
と呆れたように言った。

「いいか!今はっきり言っておく!初美は女でいいんだよ。初美みたいに話しやすい女子の友達って貴重だし。男になる必要ないだろ」

いつになく強い調子で話す真剣な寛太の顔をジッと見る。

「なっ、何だよ」

寛太が焦ったように私に言う。

「いや、寛太がそんな真剣な顔するなんて珍しいなって」

「お前、そりゃ、男になりたいって神様に祈るくらいなら結構切実に考えてるってことだろ?あ、そうだ!」

「ん?」

私は何かを思いついたような顔の寛太に首を傾げて問いかける。

「親に女子らしくさせられるのやなら、結婚相手はそういうの気にしない人を選べばいいじゃん!」

「あー確かに・・・」

私は同意した。そういう発想はなかったなぁ。
ずっと、実家にいる必要ないんだもんね。自分のこと女の子らしくしろって言わない人と結婚すれば、私は私のままでいられるのか。

「よしっ、その案採用!」

私は寛太に向けてグッドの手をして突き出した。

「じゃ、じゃあさ、候補に俺入れとけよ。俺はお前、そのままでいいから」

「・・・は?」

「じゃ、じゃあな!」

そそくさと去っていく寛太。
私はしばらくその意味を理解出来ず固まった後に

「えええ〜〜〜!!!」

と絶叫したのだった。

私は恋愛なんて分からないから、寛太がそんな風に私を見てたことに衝撃を受けた。

でも、少し考えてみると、案外悪くないのかも。
寛太って話しやすいし、一緒にいて一番居心地いい。

ま、将来のことは分からないし、寛太を候補に入れといてやってもいいかっ。

私はそう考えを切り替えると、それを寛太に伝えに、教室に向かった。

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