題 届かぬ想い
どうせ私の想いは届かない。
届くわけないんだ。
だって・・・
「席につけ〜!」
教室に入って来た担任の先生をこっそり盗み見る私。
いつもと同じくカッコいい。
この学校で一番人気がある先生。
面白いし、優しいし、生徒に平等だ。
だからこそ、望みなんてない。
生徒が先生に告白したなんてウワサは聞くけど、全部ダメだったらしい。
そりゃ、未成年に手を出したら先生逮捕されちゃうし、そんなことしないって分かってる。
でも、この気持ちは止められないんだ。
どうしたらいいんだろう・・・。
見ていられたらいいと思ってる。
でも、最近、告白した子達の気持ちも分かるんだ。
もう苦しくて、どうにかしたくて、想いを告げて終わりにしたいって。
そう思ってしまうほど、先生が好きだ。
「おい。高田」
私がボーッとしていると、名前を呼ばれる。
先生がこちらを見つめていた。
「は、はいっ!!」
私は慌てて返事をする。
「高田は国語教科係だろ?ちょっと手伝ってくれるか?」
「はい」
私は起立して、先生の後に続く。
先生の担当の国語教科係も、凄い人気で、執念のジャンケンで勝ち取った地位だ。
「どうした?さっきは、眠かったのか?」
私がボーッとしていたことを言ってくれている。先生って優しい。本当に生徒をよく見てる。
こうして、細かく声をかけてくれるから好きになっちゃうんじゃないか、と理不尽な怒りも湧いてくる。
「いえ、ちょっと考え事を」
「そっか、今の時期っていろいろ悩みあるよな」
「先生も・・・悩みあるんですか?」
私はふと、質問してみたくて尋ねた。
先生も悩むことあるのかなって。
「ああ、実はな、先生、今度結婚することになったんだけど、結婚式のことで相手と結構意見が違ってな。難しいんだなって思ってるよ」
「あっ・・・」
私は一言発したまま、固まってしまう。け、結婚?結婚って言った?
「せ、先生が結婚するの?」
間違いであってほしいと、確認すると、先生は嬉しそうに頷いた。
「ああ。ついにかな。大分待たせたからなぁ」
「そう、なんですか・・・」
私はそれから20分ほど、記憶が飛んでしまっていた。
何を言ったんだろう。それから、教室に戻って、先生がみんなに結婚することを話していた。
私はどこか遠くでそれを聞いていた。
先生を好きだった女子達からの悲鳴が上がる。
言えばよかったのかな?好きって。
そしたら私は気が済んだのかな?
振られてそれで、諦めて、今祝福できてた?
分からない。
でも、さっき結婚のことを話す先生の顔が見たこともないくらい幸せそうだった。
ショックなのと同時に、そんなに幸せそうな顔を出来るような相手で良かった、と思ったんだ。
その相手は私じゃなかったけど、その気持ちを一瞬でも持てたから、きっと今は無理でも先生のこと祝福できる。
私は泣きそうになる顔をパシパシと軽く叩きながら、自分に何度も言い聞かせていた。
4/15/2024, 1:18:34 PM