ミントチョコ

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4/13/2024, 12:46:24 PM

題 快晴

「ねえ、快晴が良かった」

私は口を尖らせて彼氏の清彦を振り返る。
幼馴染でもあり、私の彼氏でもある清彦は、傘を片手に、なだめるような口調で私に答えた。

「仕方ないだろ。今週は天気予報ずっと雨だって話だったし」

「だってせっかくのデートなのに」

私は、自分の傘を持つ手に力を込めた。
毎日晴れますようにってお願いしたのに。
市内のテーマパークの予約チケットを買っていたから日付変更もできなかった。

「室内のアトラクションもあるらしいし、行けないわけじゃないんだから楽しもうぜ」

清彦は、もう近くに見えるテーマパークの入場口を指さして私に言う。

雨でも賑やかな音楽と沢山の人。みんな楽しそうだ。
そんな光景を見ていると、自然と私も笑みがこぼれてくる。

「そうだね!せっかく来たんだから楽しもうか!」

私達は荷物を預けてカッパを買うと、外のアトラクションも中のアトラクションも沢山乗って楽しんだ。

人は多かったけど、清彦と並んで待っている時間も楽しかった。
沢山いろんな話ができて、距離が近づいた気がして、嬉しかった。

気づくと、私達はテーマパークのほとんどの乗り物を制覇しようとしていた。


「あ・・・」

ふと気づくと雨は上がって、黒い雲の間から太陽の光が降り注いできている。

「晴れたな・・・」

隣で清彦がポツリと言う。

「な?快晴じゃなくても楽しかっただろ?」

清彦の言葉に、私は勢いよく頷く。

「うんっ!楽しかった!というか、今まで雨のことなんて忘れて楽しんでたよ」

「俺も。お前がいればどんな天気でも楽しめるって解ってたよ」

「え・・・あ・・・」

私が突然の清彦の言葉に赤面し、返す言葉を失っていると、

「行こう!あの観覧車に乗れば全制覇だ!」

清彦は、笑顔で私の手をとって引く。

「うん・・・!」

私は清彦の言葉に、笑顔を返し、握られた手に力を込めて、清彦の隣に並んで観覧車へと歩き出した。

4/12/2024, 2:06:57 PM

題 遠くの空へ

遠くまで行きたい。

わたしは定期的にそう思う。
何故かな。

ううん、何故かは分かってる。

自分がずっと転勤族だったから。

2年おきに引っ越してきたから、こうして就職してからもふとどこかへ行ってしまいたくなる。

店舗が市内にしかないから、引っ越さなくていい今の職場。

どうしてだろう。

動きたい。どこか新しい場所に行きたい。

私の最近の夢はいつも引っ越す夢。

大きなデパートの屋上に引っ越して、デパートを散策したり。

新しい家に引っ越して、その奇妙な家を探索したり、引っ越しの日を迎えて必死に片付けして箱詰めしたり。

そんな夢ばかり見てる。

だから、こうしてふと空を見上げた時、違う空に行きたいって思うんだ。

転居して違う空間の空を見たいって。

それは同じに見えて、何もかも違うから。

私の心も環境も、住まいも。

そうして心機一転をリズミカルに求めているのかもしれない。

繰り返されてきた移動を、無性に望んでしまう。


もう動くことはないだろうなぁ。

わたしははぁ、とため息を一つつく。

後は、あれかな?結婚して、引っ越すとかかな?

彼氏もいない私は、羨望の眼差しで、遠くの空を見つめて、また一つため息をついた。

4/11/2024, 12:04:21 PM

題 言葉にできない

言葉にできない。
一緒にいたいのに、一緒にいるとずっと言葉が出ない。

意識しはじめてからずっと・・・。

「美紗」

私は横にいた那智に声をかけられる。
那智は私の親友だ。横にいてくれると心強い。

で、その横から春斗が顔を覗かせる。

「ボーッとしてたみたいだけど、大丈夫?」

と那智。

「う、うん・・・」

私は頷いて返事をする。

春斗が那智の隣で、

「最近元気ないけど大丈夫か?」

と話しかけてくる。

「あ・・・うん。平気」

私が上ずった声で返事をすると、那智が隣で軽くため息をついた。

那智は、私が春斗のこと好きって気づいたことを知ってる。
むしろ自分で好きって気づく前から、那智には私の気持ち見抜かれてた。

私は、恋愛感情に気づいてから、それまでは春斗にべったりだったのに、急に恥ずかしくなってしまった。

どう接していのか分からない。
だから、こうしていつも那智を挟んで三人で歩く。

春斗には何度もどうしたの?って聞かれるけど、理由は言えないでいた・・・。

「あ、いけない、私学級委員の仕事で先生に呼ばれてたんだった!」

那智が突然声を上げる。
昼休憩後の時間だから、それはありうるかも。
でも、何で今のタイミングで言うの?!

私の抗議の目線に、ちゃんと話しな!って囁いて去っていく那智。

私は春斗と2人で取り残される。

「じゃ、行こうか?」

春斗に言われて、私は無言で頷いた。

と思うと、いきなり春斗に手を取られて、近くのベンチに連れて行かれる。
手を握られたことにドキドキしていると、春斗は、座ってと言った。

もしかして怒ってる?いつもと声色が違う。

「最近どうしたの?僕、美紗に何かした?」

ち、近い、近い・・・。

顔をのぞき込まれて、思わず顔を背ける。
まずいっと思ったけど、どうしようもなかった。

「僕のこと・・・嫌いになった?」

悲しそうな声。思わず振り返ると、春斗は、私をジッとみていた。
とても悲しげな顔で。

私はすぐに返事をする。

「違う、嫌いになんてなってない!」

その瞬間、春斗に見られてるとかどうでも良かった。春斗にこんな顔させちゃうなんて。凄く辛い気持ちだ。

「じゃあ怒ってるの?」

「怒ってないよ」

春斗の質問に、私は何て言ったらいいのかを考えながら答えていた。

「僕、美紗と話すの楽しかったから、いきなり態度が変わってちょっと辛いな」

春斗のしゅんとした表情に、私は気づくと言葉に出していた。

「違うのっ、私も春斗と話すの好きで、好きになりすぎちゃって、どうしていいか分からなくて・・・」

「え、それって僕のことを好きになってくれたって事?」

私はほぼ告白みたいな自分の言葉に気づいて動揺する。

「あ、友達ね!友達としてね!!」

苦しい言い訳。

「そっか・・・僕は友達としてじゃない方が嬉しい」

「え・・・」

ドクンッ

春斗と視線が合わさった瞬間心臓が大きく跳ねた。

そして、その時春斗と私は同じ気持ちだって、私は理解したんだ。

「わ、私も、春斗が好き。ごめん、好きだから、どうしていいか分からなかったから、態度おかしかったの」

「そっか、そういう理由なら嬉しいよ」

春斗が私の手を握る。

私と春斗は視線を合わせて微笑む。

どうしてかさっきまでの春斗へのきまづい気持ちも全てなくなって、幸せな気持ちだけに満たされている自分の心に気づいた。

4/10/2024, 11:41:51 AM

題 春爛漫

素敵な陽気。

桜の花があちこちで満開の今日。
私は彼氏とデートに出かける約束をしている。

嬉しくて早めに来ていた私よりも、彼氏の方が早く待ち合わせ場所に到着している。

「おはようっ、びっくりした。私より早いね!」

私の顔を見て、彼氏が微笑む。

「おはよう。早く綾に会いたくて、早起きしちゃったよ」

その言葉に心の中からジ~ンと暖かくわきあがってくるものを感じる。

好き、大好き。

この春のふんわり暖かい陽気も相まって余計に気持ちが有頂天に高まっていくのを感じる。

彼氏と腕を組んで歩いていると、街路樹に植えてある満開の桜の木からハラハラと美しく桜の花びらが降り注ぐ。

風が吹くと花びらがさらに乱舞し、その光景は美しく、思わず止まって見とれてしまう。

「春っていいね・・・」

私は呆然と美しい桜吹雪を見ながら呟くと、彼氏がクスッと笑う。

「あ、どうして笑ったの?」

私が尋ねると、彼氏は、

「だって、綾、春も夏も秋も同じこと言ってたから」

「えっ、そうだっけ?」

・・・でも言ってたかも。四季それぞれにその季節の良さがあるんだから仕方ないよ。

それに・・・。
私は隣をチラッと見る。

「あなたがいるから、どの四季も素敵に見えるんだよ」

私は心からの本心を打ち明けると、弾んだ気持ちで彼氏に笑いかけたんだ。

4/9/2024, 11:53:59 AM

題 誰よりも、ずっと

ねえ
誰よりもずっと私があなたのこと好きだよね?

私はいつもあなたを見てる。
あなたの微笑みは本当に天使のようで。

周りの女の子たちもほぅと感嘆を上げてあなたを見ている。
美しい彫刻のようだ。

でも、一番あなたのことを見ているのは、きっと私。

あなたを思うと、心が焦げてくるように熱くなる。

でもあなたは人気者だから、周りにはいつも人ばかり。

だから仕方ないよね?

私があなたの後をつけたとしても。

あなたのこと知りたくて、あなたを焼き付けたくてカメラで撮影したとしても

私はあなたがただ好きなだけ。


昨日、あなたの彼女って子から、付きまとうのやめてって言われた。

ウソつき。
ウソつき。
ウソつき。

そんな訳ないじゃない。

安心して。
もうあの子はあなたの眼の前に現れたりしないから。
もう、安心だよ。あなたの彼女を名乗るウソつきはいないから。

私だけがあなたをずっと見ているからね。

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