題 神様へ
神様へ
1つだけ願いを叶えてほしい。
それは・・・。
私、男の子になりたい!
小さい頃から、全然女の子のグループに馴染めなかった。
だって、折り紙とか、塗り絵とか、したくないし!
何かグループの子以外と話すとグチグチ言われるし。
私はかけっことか、サッカーとか、戦いごっことか、度胸試しとかそういうのが大好き。
毎日服をどろんこにしてはお母さんに叱られてた。
でも、そんなの関係ないよ。私には。
遊んでたら自然とそうなるんだから。
スカートは色んなとこ登ったり、狭い茂みを通る時引っかかるから嫌い。
高校生になった今も履くことはない。ズボンスタイルのみ。高校はズボンスタイルも制服モデルにあるから助かってる。
こんな性格だから、友達も男の子ばかり。
なんなら、女子にも、私は男の子だと認識されてるかも。
性別は女だけど、髪も短いし、いつも男の子みたいなシャツとズボンの組み合わせ。
学校は・・・そんなに問題ない。
私が男の子と話しててもみんな受け入れてくれるし。
女の子は、別にグループに入ってなければいざこざもなく、みんな優しい。
問題は家だ。
親は、ずっとうるさい。女の子なんだからって。
女の子なんだからもっとおしとやかにしなさい、服装可愛くしなさい、髪の毛ももう少し伸ばしなさい。
もう、ほんっとうにうるさいの!
どうにかならないかな?
お父さんもうるさいよ。言葉遣いとか、男子といるとどうしても荒くなるんだけど、ついつい言っちゃうと注意される。
だから、いっそ男の子だったらこんなことで悩まなくていいでしょ?
神様がいるなら、私を男の子にしてほしいんだ。
て言ったら、友達の寛太に凄い否定された。
「そんなのやめとけって。何考えてるんだよ?」
「え?そこまでじゃないでしょ?寛太も、私が男なら一緒に男子サッカー部入れるし嬉しいでしょ」
私がそう言うと、寛太は少し考える。
「う〜ん、確かに。それは嬉しいけど。お前、強いし、サッカー部最強だろうな。けどさ、よく考えろよ。初美は、女の子好きなの?恋愛対象だぞ?」
「あ・・・んーまぁ、別にいいよ。男になったら女の子を好きになるんじゃない?」
私があっけらかんというと、寛太は「いいのかよ・・・」
と呆れたように言った。
「いいか!今はっきり言っておく!初美は女でいいんだよ。初美みたいに話しやすい女子の友達って貴重だし。男になる必要ないだろ」
いつになく強い調子で話す真剣な寛太の顔をジッと見る。
「なっ、何だよ」
寛太が焦ったように私に言う。
「いや、寛太がそんな真剣な顔するなんて珍しいなって」
「お前、そりゃ、男になりたいって神様に祈るくらいなら結構切実に考えてるってことだろ?あ、そうだ!」
「ん?」
私は何かを思いついたような顔の寛太に首を傾げて問いかける。
「親に女子らしくさせられるのやなら、結婚相手はそういうの気にしない人を選べばいいじゃん!」
「あー確かに・・・」
私は同意した。そういう発想はなかったなぁ。
ずっと、実家にいる必要ないんだもんね。自分のこと女の子らしくしろって言わない人と結婚すれば、私は私のままでいられるのか。
「よしっ、その案採用!」
私は寛太に向けてグッドの手をして突き出した。
「じゃ、じゃあさ、候補に俺入れとけよ。俺はお前、そのままでいいから」
「・・・は?」
「じゃ、じゃあな!」
そそくさと去っていく寛太。
私はしばらくその意味を理解出来ず固まった後に
「えええ〜〜〜!!!」
と絶叫したのだった。
私は恋愛なんて分からないから、寛太がそんな風に私を見てたことに衝撃を受けた。
でも、少し考えてみると、案外悪くないのかも。
寛太って話しやすいし、一緒にいて一番居心地いい。
ま、将来のことは分からないし、寛太を候補に入れといてやってもいいかっ。
私はそう考えを切り替えると、それを寛太に伝えに、教室に向かった。
4/14/2024, 3:05:52 PM