kiliu yoa

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12/16/2024, 12:10:54 AM

あるところに、雪柳の君と呼ばれた、

高貴な血を引く、さほど家格の高くない生まれの女性がおりました。

彼女の事を良く云えば、凛々しく聡明な御方、

悪く云えば、手厳しく気強い御方でした。

彼女は、成人して間もなく、かつての財閥家の男性と婚約。

大学院を卒業後、弁護士となり、かの男性と婚姻しました。

彼女の手腕により、わが家を後に再興させるに至る、

きっかけと基盤を作ったと伝わります。

現在において、このような形容は好ましく無いとは思いますが、

女性でありながら、わが家を再興させるに至る、

きっかけと基盤をお作りになった功績は、

何時の世においても、素晴らしいものだと思われるでしょう。


それが、私の祖母だと言うのだから驚きです。

私のおばあちゃんは、今では普通のおばあちゃんです。

私を含め、孫たちには皆優しくて、いつも温かく迎えてくれて、

たくさんの食べ物を勧めてきます。

旅行に行く時のお土産や誕生日プレゼントを贈るときなど、

私が「何が良い?」と聞くと、いつも決まってこう言います。

「お茶っ葉(おちゃっぱ)が良いです。」簡潔に丁寧に応えてくれます。

私は、その誰に対しても丁寧さを忘れないところ、

そのいつも迷いの無い簡潔な回答が大好きで、

分かっていても、欲しいもの尋ねる際は必ず聞きます。

例え、孫の前でもデレない、自慢のおばあちゃんです。

いつも、アフタヌーンティーにお友達を招待して、老後を愉しんでいます。

最近では、大人になった孫たちを一人ひとり誘ってくれます。

今日、私も初めて誘われました。

おばあちゃんのアフタヌーンティーに、

ひとりで誘われると大人になったと認められたような気がします。

本当に嬉しく、愉しみです。

それでは、また、お会いしましょう。

最後まで、お付き合い頂き、ありがとうございました。
                             かしこ











12/14/2024, 10:16:01 AM

「かすみさん、少しだけ構って。」

そう言って、彼は少しだけ微笑んだ。

その姿はわが夫ながら、あまりに可愛く、愛おしい。

「いいですよ。」

ソファに座ると、彼はわたしの太ももに頭を乗せる。

「珍しいこともあるものですね。」

「たまには、自分の奥さんに甘えたくなった。」

彼には、よそに多くの女性がいる。

それを了承した上で、わたしは彼とお見合いで結婚したから、

わたしに甘えるなんて思いもしなかった。

普段は、多分よその女性に甘えているはず。

だから、わたしに甘えるなんて初めてだった。

「まるで、源氏の君と大殿の君の夫婦円満な描写みたいですね。」

「うーん、確かに似てるかもね。

 でも、ちょっとその例えは哀しいかな。」

「あら、どうしてですか。」

「だって、そのあと大殿の君は亡くなるから。

 かすみさんが亡くなる、フラグみたい。」

「まあ、そんな風にわたしのことを想って下さっていたのですね。」

「僕は多くの女性と恋するけど、僕の妻はかすみさん唯一人だよ。」

「ふふ、嬉しいことを言って下さいますね。」

わたしは、彼の黒く美しい短髪を撫でた。

 




12/11/2024, 6:47:53 AM

美しさとは、何なのだろう。

私は、よく源氏物語の源氏の君のようだと謂われる。

彼のように、何事にも優れた才覚などは無い。

しかし、彼のように、どんな人にも美しいと言われてきた。

私を好む人は、皆口々に言う。

「あなたの美しさが何よりも好き。」だと。

私の中身を見ず、私の美しさに引き寄せられた人ばかりだ。

私の中身など、彼らの前には存在しないも同然なのだ。

だから、私が彼女らに何をしようと、その容姿の美しさで許されるのだろう。


私は、容姿は優れているだけで実力など無い。

しかし、優遇されて流されて此処まで来てしまった。

その道は、己の実力とは裏腹に自惚れてしまう。

その先は、己の破滅のみ。


どうすれば、抜け出せるのだろう。

どうすれば、人から見てもらえるのだろう。 


「容姿に惑わされる人間から離れなさい。

 その人は、あなたを見ているのでは無く、

 あなたの美しさに魅了されているだけなのだ。」

兄様、私はどうしたら、身内以外の人を信じられるのでしょう。














12/8/2024, 2:33:20 PM

「すまなかった。

 本当にすまなかった。

 若き日の貴女への仕打ちを、今、此処に謝罪させて欲しい。」

私は、人を愛することを何よりも恐れていた。

若き日の私は、その自覚さえ無かった。

私の両親の最初の記憶は、浮気性な父を母が責めているところだった。

母は、発狂していた。

『あなたは、いつも、いつも、他の女にばかり目を向けて!』

父は、冷たく突き離していた。

『あなたも、愛人を持てば良い。』

母は、父を心から愛し続けていた。

あれだけ軽々しく扱われながらも、父という男に侮辱されながらも、

いつも変わらず、一途に妻として最期まで愛し続けた。

実の子たる私さえ、その目には映さなかったほどに。

母があれほど父に執着していたのは、

カトリックの教育を受けて、信奉していたのも有ったと思う。

しかし、そのさまは、私の目に狂気として映った。

人を愛するとは、私にとって正気の沙汰では無かった。

「今さら赦しを乞うつもりは、無い。

 唯、これだけは信じて欲しい。

 私は、妻たる貴女を心から愛している。」

私は、声を振り絞る。

貴女は言った。

「ありがとう、言葉にしてくれて。
 
 でもね、疾うの昔から、わたしは知っていたわ。

 貴男は、わたしを心から愛してくれていたことを。」

貴女は微笑み、言葉を続けた、

「貴男は、昔から本当に不器用ね。
 
 だから、可愛いのだけど。

 わたしの愛しき人、わたしの生涯に渡り愛し続ける、唯一の人。

 わたしの目を見て。」

貴女は、私の輪郭に両手を添える。

「わたしは、もう怒ってなどいないわ。
 
 貴男を赦します。

 だから、もう泣いて良いのよ。

 だから、もう、わたしを愛し続けて良いのよ。」

涙が一筋零れる。

涙が溢れてくる。

そんな情けない私を、最愛の貴女は優しく抱きしめた。



 
 

 


12/4/2024, 8:54:08 AM

私は、愛人。

誰よりも、彼を愛してきた。

一途に、一途に、愛してきた。

彼が家に来る時は、いつも夜だった。

華やかなシルクのキャミソールドレスを着て、

艶やかな化粧をして、

甘い声をした。

正直、彼と結婚できると思っていた。

彼は、奥さんより私の方が綺麗だと思っていた。

でも、現実は違った。


彼の奥さんを遠目で見た。

すぐに分かった





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