貴方に会いたい。
そう何度、願ったことか。
世とは厳しいものだ。
何故、いつも惜しい人ばかりを奪うのだろう。
解無き、問いばがりが渦中に積もる。
しかし、それでも生きていくしか無い。
貴方から、生きる事を望まれてしまったのだから。
それならば、生きたいと思った。
きっと、先祖もまた、そうして生きてきた。
きっと、そうして、後世へ繋げてきた。
白く濁る、吐息。
寒中の空から、晴天が昇る。
貴方よ、さらば。
どうか、安らかに。
言葉を重んじるふりをしてきました。
言葉の虚構に耐えて、生きました。
母の蜜を煮詰めたような濃厚な甘さを含んだ声色、言葉が苦手でした。
どうしようも無く、虫酸が走りましたから。
父の研ぎ澄ました剣のような冷たさを含んだ声色、言葉が嫌いでした。
只管に強くあろうと、固められた言葉だと分かっていましたから。
両親の異質さは、御覧の通りです。
まるで、言葉が通じませんでした。
完璧さに囚われた人。
現実の見方を忘れた人。
それが、私の両親でした。
今にして見れば、分かります。
彼らは、唯、必死に生きていただけなのだと。
しかし、彼らの生前には分かりませんでした。
それで良かったと思います。
本当ですよ。
やっと、気持ちと事実が整理出来たのですから。
繋がり、それは最優先するもの。
吾が家では、そう教わる。
吾が家を揶揄するのなら、こう言えるに違いない。
汝、恩を忘するるな。と。
代々、そうだった。
吾が家は、実力で登用された事は一度も無い。
全てては、繋がりが吾が家を名門にしたのだ。
だから、吾が家は言う。
繋がりとは、縁。
縁とは、吾が家の礎にして、最も後世へ伝えるべきものだと。
妻は、時より手紙を綴っている。
此処には居ない、最愛の人に向けて。
私には、それが最も辛かった。
しかし、尊重したい。
だから、知らぬふりをした。
妻は、恐らく、魔性の人。
私をこんなにも苦しめながら、私にこんなにも愛を注がせるのだから。
本気で思う。
私は、あの人に魅せられていると。
恋い焦がれ、正気を失っていると。
でも、私はどうしようも出来ないのだ。
あの人を前にすると、全てが色褪せ、全てが風前の塵のようなのだ。
それほどまでに、私はあの人に惹き寄せられている。
それほどまでに、私は、あの人が欲しいのだ。
あの人と話していると、思い知らせる。
私は、本当の意味であの人と視界を共有出来ないという事実に。
私は、あの人に相応しく無い可能性が高いという事実に。
しかし、もう戻れないのだ。
もう、離れられないのだ。
あの人の側が心地よくて、あの人の側が忘れられないのだ。
あの人を前にすると、思うのだ。
私はなんと、矮小な存在かと。
私は、なんと無知な存在なのかと。
きっと、だからこそ、私はあの人を想う。
そして、私は誰よりも、あの人を愛していられるのだろう。