kiliu yoa

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11/16/2024, 6:25:29 AM

あたしの飼い主は、とても高貴な人だ。

華やかな異国情緒漂う、美しい顔立ち。

艶やかな長い黒髪に、大きな栗色の眼をしていた。

蜜のように甘い声で、あたしを呼ぶの。

「マロン、あなたは本当に可愛いわね。」

いつも、飼い主はあたしにそう言うの。

だから、いつも、あたしは言うの。

「ニャ。(ありがと)」って。

そう言うと、いつも、とても喜んでくれるの。







11/13/2024, 2:37:11 PM

「名前は?」

「朝久だよ、よろしく。」

「奏斗、よろしく。」

彼らの年なら、まだ走り回ることが好きなはず。

しかし、彼らはその姿を見るだけ。

決して親に言われているのでは無く、唯々走り回ることが性に合わない。

それだけ、しかし、大きい共通点を持つ二人の少年は意気投合した。


「朝久、」

「申し訳ありません。朝顔の君、どうか、息子のご無礼をお許し下さい。」

話かける前に、父さんは僕の頭を押さえて、父さんも頭を下げた。

「誰しも、人間なら一度は間違うものです。どうか、お気になさらず。

 今後、お気を付け下さい。」

先ほどとは全く異なる、大人びた洗練された言葉で彼は応えてた。

「ご寛大な心遣い、感謝申し上げます。それでは、失礼します。」

父さんは、急いでこの場を後にした。


「良いか、あの方は皇族では無いが、皇族の血を引いている御方だ。

 我らの家格では尊称は呼ぶことは許されても、名は呼んではならない。」

「すみませんでした、以後気を付けます。」

僕は、素直で良い子を装う。その方が、説教はすぐ終わるからだ。

公の面前とは、色々面倒くさいものだ。

私の家は、所詮格のない羊皮紙の貴人だと言うのに。


朝久と目が合った。

朝久は、急いで僕に駆け寄ってきた。

「さっきのことは、気にしなくていい。普通に朝久って呼んでいいから。」

「僕も、気にせず呼ぼうと思ってた。」

両者ともに見せないが、安堵していた。

互いの聡さと、立ち回ることの出来る賢さに。


子どもの頃を思い出すと、身分とは如何に容易く乗り越えられる、

曖昧なものかと、思い知らされる。


「朝久、久しぶり。」

「久しぶり、奏斗。」


「朝久、またな。」

「またな、奏斗。」


何度、この会話を繰り返した事だろう。

「奏斗、また会おう。これからも。」

私は、勇気を出して始めに言ってみる。

「もちろん。また会おう、朝久。」

奏斗は、嬉しそうに微笑んだ。












11/12/2024, 4:40:45 AM

かつて、私は落ちこぼれだった。

生まれながらに身体は弱く、

武の才覚は全くと言って良い程に無かった。

此の家の嫡流にして長子でありながら、嫡子の候補では無かった。

日々、弟たちや妹たちは修練を積むことが出来る身体が羨ましく、

日々、武術が上達するさまを見ては、兄として、長子として、

その役目を目に見えて担えていない事に、自分の存在意義を問うていた。

そんな時期もあった。


しかし、先の事とは分らぬもので、皆の推薦で私は此の家の当主と成った。

あまり前例の無い、非常に稀有なことであった。

先代と弟たち妹たちが盤上一致で、私を当主へ推薦してくれた事に、

私は涙が溢れた。

これまで、私に出来ることを少しずつ努めてきた。


『出来ぬからと、為せぬからと、負い目を覚えることは無い。

 今、出来ることを少しずつ努めれば良い。』

両親から贈られた、私の礎となった大切な言葉。

だから、私は落ちこぼれであったが、落ちぶれることは居なかった。

今日まで支えてくれた、両親・弟たち・妹たち、

その姿をずっと見守ってくれていた、親しき人々には感謝しかない。

本当にありがとう。

これからは此の家の当主として、私に出来る役目を果たして行きます。



11/8/2024, 1:32:11 PM

『意味がない』とは、何と定義すれば良いのだろうか。

私は、未だに『意味がない』という意味を理解出来ない。

何故、そのような境地に至るのかも解らない。

私は、何事にも『意味がない』などということは全く無いように思う。

『意味がない』、その言葉を何故発することが出来るのだろう。

私の生涯に置いて、『意味が無い』などという言葉は、

挑戦する者を見下し嘲笑するための虚構に過ぎないように、私は思う。

挑戦しないからといって、悪では無い。

寧ろ、保守的な現実主義は世界の秩序を守り、

平和を保つためには、必要不可欠だと思う。

しかし、だからと云って挑戦する者を見下し嘲笑するのは、

違うように思えた。

纏めると、思考が偏るのは前提として、公平に扱い、尊重し合い、

互いに意識し、共存することを認め合うことが大切だと、私は思った。










11/8/2024, 12:13:19 AM

「父上、何故ですか。何故、シモンを……。

 私から、何故……シモンを奪ったのですか。」

まだ、うら若き青年は感情の波を抑えながら、父に必死に抗議する。

父と呼ばれた、厳格な雰囲気を纏う男性は鋭い眼差しを青年に向ける。

「解らないか。」

突き離したように、冷たく男性は問う。

「理解出来ません。」

青年は、はっきりと鋭い眼差しで父に屈せぬよう宣言する。

「そうか、ならば…考えてみよ。

 何れ、其の問の解が解るようになる日まで。」

冷静に簡潔に確実に、男性は父としての役目を果たす。

「どういうことですか。」

青年は、冷静になるよう己に言い聞かせながら、必死に訴える。

「連れて行け。」

男性は、側近に命じた。

「承知しました。」

側近は、従順に命を遂行する。

「何故ですか。父上!」

青年は納得出来ず、必死に抵抗する。

「もう、お前に言う事は無い。」

男性は、青年に冷たく言い放つ。

野生の獣のような眼差しを青年は、父に向ける。

男性は鼻で笑い、青年を書斎から退室させた。













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