闇雲には妻に対して何も言えない質だが、此処では綴らして貰おう。
妻には、どうにも底知れぬ恐ろしさがある。
優しい人だという事は、普段の振る舞いや卒の無い家事などから
犇々(ひしひし)と感じている。
しかし、妙に気迫があり、妙に落ち着いた人だった。
私が今まで会った事の無いタイプの女性で、
あの母からの紹介だった事もあって、結婚した人だったから、
よく知らないのだ。
なんというか、主張が無い。
きっと、違和感はそれだ。
よく笑顔を見せ、私だけでなく家族を気遣う気丈な人だ。
しかし、妻は稀に見せる。
まるで、全てを見透かしたように目を細める。
その目には、研ぎ澄ませた眼差しが覗いていた。
まるで、全てを知ったように口に弧を描く。
その口には、含みのある微笑みが浮ぶ。
それが恐ろしくて、怖ろしくて、堪らない。
妻は、一体何を憶えているのだろうか。
気付いたら、時間は経るものである。
気付いたら、失っているものである。
感じないからといって、油断してはならない。
私は、今、ひっくり返した。
事態は、あっと言う間に変わるだろう。
砂は聞こえぬ音を立て、落ちていく。
流れとは、こうして生まれる。
現状とは、こうして生まれる。
だから、些細な言動にも気を配れ。
物事とは、途端に変じていくのだから。
I like the night.
Because,the sun is hiding.
I love the night.
Because I get to see you.
You are the second most beautiful after me.
You are so sweet to me, so kind to me.
Because,I love you.
I could smell the scent of your departed self.
Without thinking, I run down the street.
The fragrance of white plums, your favorite.
Following this scent led us to a house on a street corner.
There was an old white plum tree there that you loved.
That white plum is just like you.
The beautifully blooming white plum trees had your aromatic scent.
Tears welled up in my eyes.
Let's live.
It was only after your death that I had hope for life.
This white plum led me to you as you once did.
日の目を知らない、貴女の華奢な白腕が覗く。
月の光を知る、貴女の嫋やかな白魚の手が私の輪郭を包む。
私を優しく抱いた両腕は、やがて朽ちる私を忘れるのだろう。
それで、良い。
しかし、忘れるとは哀しいものだ。
そうは、思わないか?
まあ、そうは思わないか。
審判の時、その時にはきっと私も忘れているのだろう。
貴女の温もりと、貴女の耽美な姿を。
さようなら、わが愛しい人よ。
どうか、私より永く生きて。