一人の青年が居た。
妖艶で美しく、男であっても襲いたくほどに魅力的であった。
その姿は、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、
バッカスのように私は魅せられた。
美しさは、人を狂わす。
それは、もしかすると本当なのかもしれない。
私は、青年に襲いたい衝動を理性で耐え、
同時に、青年に対し畏敬の念を憶えた。
だから、理性で耐えられたのだろう。
私は、もしかすると感じていたのかもしれない。
青年は、私よりずっと強く襲えないことを、
早々に感じ取っていたのかもしれない。
恐ろしく魅力的で、恐ろしく強く、恐ろしく狂気的な青年。
それが青年だった。
もしかすると、神は複数居るのかもしれない。
青年のような人間が、この世に居るのだから。
私は、一神教を信奉しているというのに、
青年に出会った瞬間から跪き、差し出された手に口づけし、
忠誠を誓ってしまったのだ。
私は、まるで神に会ってしまったような衝撃を憶えながらも、
どこか、白昼夢のような夢心地であった。
そんな私を青年は、当然のように私を見下ろし、微笑を浮かべていた。
神とは、なんと怖ろしいものを創り出したのだろうか。
神は、どんな意義を見出し、青年という人間を創ったのだろうか。
「どうか、主よ、お教え下さい。」
一人の男がそう神に問うた。
そこで、私は目が覚めた。
7/17/2025, 5:48:29 AM