kiliu yoa

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12/1/2024, 1:55:19 PM

遙かなる 予期せぬ早さ 幼子よ われ知らぬうち 巣から飛び去る

11/30/2024, 2:26:08 PM

「兄上、どうか、私の死を悲しまないで。」

血の海に、彼は浸る。

柔らかく、微笑み、いつものよう私を尊敬の眼差しで見る。

「嗚呼、頑張るよ。」

私は、辛うじて笑みを浮かべた。

「兄上、あなたは私の憧れでした。

 例え、理解されなくとも怯まず、

 例え、冷遇されても結果で圧倒し、

 何があろうと己を信じ、

 何があろうと努める。

 その姿は、正しく我家を継ぐに相応しい。」

彼は死の淵に漂いながらも、

その瞳は潤み輝きを増し、

彼の表情は、まるで英雄譚を語る子供のようであった。


そして、月日は流れる。

私は、今、死の淵を漂う。

後にも先にも、彼、いや、貴男だけだったよ。

私に、あのような眼差しを向けてくれたのは。

やっと、そちらに行けるようだ。

嗚呼、なんと永き月日だったであろう。

貴男の最期は、一度たりとも忘れられた事など無かった。

私は、血の海に浸る。

永きに渡り、待ち望んできた、死とは、こんなにも穏やかだったのか。

ならば、あの時、私がこの手で最後に貴男を殺めた時、

先代を殺し、兄弟を皆殺し、

我家の悪習という名の代替わりを成し遂げた時、

貴男が何故、いつも以上に穏やかだったのか、

やっと分かったよ。


「我が息子よ、私の死を悲しむな。」

息子は涙を堪えながらも、覚悟を決めた表情をしていた。

私は、瞼を閉じる。

「承知、致しました。」

微かに、息子の声が聞こえた。
















11/28/2024, 1:49:53 AM

わたくしの夫は、ろうそくの灯りのような人だった。

自然の草木を愛で、動物と語らい、楽器を奏でる。

平和と豊かさを心から愛している人だった。

太陽のような輝かしさ、宝石のような華やかさは無くとも、

暗闇を柔らかく照らし、多くの人々を安心させる、ろうそくの灯り。

皆の日々を支え続ける、温かい心遣いのできる人。

本当に非の打ち所の無い、自慢の夫だった。



11/26/2024, 11:20:23 PM

体調が悪い。

頭が働かない、自分のことで手一杯で何もかもが癪に障る。

やばい、めまいがしてきた。

意識が遠のく。

汗は滲む。

身体は重く、辛うじて動くがとても遅い。

やるべきことは、たくさんある。

なのに、出来ない。

悔しい、やっとだ。

やっと、5年ぶりに薬要らずで体調が安定してきたのに。

多くの努力が実を結んでいたのに。

気候が少し、体調が少し、崩れただけで何も出来ない。

薬を飲んだが、少し飲むタイミングが遅かった。

ただ、それだけ。

それだけのはずなのに、全然効かない。

分かりやすく、発熱してくれたら良いのに。

こんなに自分が理解できず、

こんなに自分が許せないとは考えられなかった。

予想してなかった。

私は、未だに理想に固執していたことに。



11/26/2024, 12:19:37 AM

眩しく、私に照り付ける。

痛い、心の底で呟いた。

だから、日は嫌いだ。

全てを影という形で浮き彫りにしてくる。

最後に日の光を浴びたのは、いつだろう。

極夜前、もう随分前だったような気がする。

何故、あの人は外で会おうなどと手紙に記したのだろう。

外に出なくとも、私の役目たる多大な職務の処理は全うしている。

外に出なくとも、領地経営に貿易会社などの外部収入はある。


私は、あの人に全く頭が上がらないらしい。


「あら、久しぶり。来てくれたのね、嬉しい。

 さて、貴男が昼に外出したのは何ヶ月前なのかしら。」

そこには、カフェのテラス席にて優雅に紅茶を飲む、

若き貴婦人、あの人の姿があった。

「何の御用ですか。」

私は、勧められた紅茶を一口だけ飲み込んだ。

何か、嫌な予感がした。

すると、あの人は微笑み、察しが良いと謂わんばかりに目を細めた。

「貴男に息抜きを。と、言えたら良かったのだけど状況が変わったの。」

あの人は真剣な表情になり、あの人の藤色の瞳は瞳孔が小さくなった。

「貴男の仕える、うら若き弱王と貴男をよく思わない臣下が結託して、

 貴男に謀反を企ててるみたいよ。」

私は頭が真っ白となった。

「ふふ、意外ね。貴男が感情を表に出すなんて。」

あの人は、鈴が転がるみたいな声で笑った。

そして、即座に、私へ真剣な眼差しを向けた。

「さっきの話には続きがあって、

 謀反を協力を願い出る書状が、わたし宛に弱王の側近の名で届いた。

 その意味は貴男なら分かるでしょう。」

「勿論です。私の家は、北に於いて強いと自負しています。

 しかし、貴方の家には敵わない。
 
 貴方の家との戦に関しては、特に相性が悪い。」

私は、必死に冷静を装った。

「そう、だから貴男へ知らせたの。」

あの人は、また微笑み、また目を細めた。

「感謝します。」

あの人は、再び目を細めた。

「件は、わたしに任せて。」

私は、意味が分からなかった。

「貴男は、件を知らなかったことにしないさい。」

「はい。」

私は、同意した。その方が立ち回り易い。

「件の事で、うら若き弱王への謁見を許されたの。

 わたしは、その場で件を阻止させようと思う。

 其処からは、貴男の好きなように為さい。」

あの人は、また鈴が転がるみたいに笑う。

「如何ように冷静を装っても、本来の冷静さには敵わないわ。」

あの人は、いつも私の図星を付いてくる。

「親しくとも離れていたのなら、

 親しくとも会話を交わさなくなっていたのなら、

 相手の心は離れるものよ。」

あの人は、そう言い残し、優雅に去っていった。

あの人に、又、借りを作ってしまった。

本当に感謝しかない。 

件が解決した暁には、あの人へ何か贈ろう。

あの人は贈り物を好まないから、感謝の手紙を贈ろう。




「お方様、お手紙が届きました。」

「あら、ありがとう。」

若き貴婦人は、従者から手紙を受け取る。

そして、手紙の封を開ける。

『あなたのお蔭で、件は早急に解決しました。

 また、王とも和解する事ができました。

 王宮を頻繁に訪れ、王や臣下たち、他の貴族等と些細なことでも、

 言葉を交わようにしています。

 王から頼られる事も、少しずつ増えてきたように思います。

 改めて、感謝致します。』


「本当に簡略化した手紙ね。

 でも、思いの籠った、とても丁寧な手紙。」

若きな貴婦人は微笑み、書斎の抽斗に手紙を仕舞った。












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