眩しく、私に照り付ける。
痛い、心の底で呟いた。
だから、日は嫌いだ。
全てを影という形で浮き彫りにしてくる。
最後に日の光を浴びたのは、いつだろう。
極夜前、もう随分前だったような気がする。
何故、あの人は外で会おうなどと手紙に記したのだろう。
外に出なくとも、私の役目たる多大な職務の処理は全うしている。
外に出なくとも、領地経営に貿易会社などの外部収入はある。
私は、あの人に全く頭が上がらないらしい。
「あら、久しぶり。来てくれたのね、嬉しい。
さて、貴男が昼に外出したのは何ヶ月前なのかしら。」
そこには、カフェのテラス席にて優雅に紅茶を飲む、
若き貴婦人、あの人の姿があった。
「何の御用ですか。」
私は、勧められた紅茶を一口だけ飲み込んだ。
何か、嫌な予感がした。
すると、あの人は微笑み、察しが良いと謂わんばかりに目を細めた。
「貴男に息抜きを。と、言えたら良かったのだけど状況が変わったの。」
あの人は真剣な表情になり、あの人の藤色の瞳は瞳孔が小さくなった。
「貴男の仕える、うら若き弱王と貴男をよく思わない臣下が結託して、
貴男に謀反を企ててるみたいよ。」
私は頭が真っ白となった。
「ふふ、意外ね。貴男が感情を表に出すなんて。」
あの人は、鈴が転がるみたいな声で笑った。
そして、即座に、私へ真剣な眼差しを向けた。
「さっきの話には続きがあって、
謀反を協力を願い出る書状が、わたし宛に弱王の側近の名で届いた。
その意味は貴男なら分かるでしょう。」
「勿論です。私の家は、北に於いて強いと自負しています。
しかし、貴方の家には敵わない。
貴方の家との戦に関しては、特に相性が悪い。」
私は、必死に冷静を装った。
「そう、だから貴男へ知らせたの。」
あの人は、また微笑み、また目を細めた。
「感謝します。」
あの人は、再び目を細めた。
「件は、わたしに任せて。」
私は、意味が分からなかった。
「貴男は、件を知らなかったことにしないさい。」
「はい。」
私は、同意した。その方が立ち回り易い。
「件の事で、うら若き弱王への謁見を許されたの。
わたしは、その場で件を阻止させようと思う。
其処からは、貴男の好きなように為さい。」
あの人は、また鈴が転がるみたいに笑う。
「如何ように冷静を装っても、本来の冷静さには敵わないわ。」
あの人は、いつも私の図星を付いてくる。
「親しくとも離れていたのなら、
親しくとも会話を交わさなくなっていたのなら、
相手の心は離れるものよ。」
あの人は、そう言い残し、優雅に去っていった。
あの人に、又、借りを作ってしまった。
本当に感謝しかない。
件が解決した暁には、あの人へ何か贈ろう。
あの人は贈り物を好まないから、感謝の手紙を贈ろう。
「お方様、お手紙が届きました。」
「あら、ありがとう。」
若き貴婦人は、従者から手紙を受け取る。
そして、手紙の封を開ける。
『あなたのお蔭で、件は早急に解決しました。
また、王とも和解する事ができました。
王宮を頻繁に訪れ、王や臣下たち、他の貴族等と些細なことでも、
言葉を交わようにしています。
王から頼られる事も、少しずつ増えてきたように思います。
改めて、感謝致します。』
「本当に簡略化した手紙ね。
でも、思いの籠った、とても丁寧な手紙。」
若きな貴婦人は微笑み、書斎の抽斗に手紙を仕舞った。
11/26/2024, 12:19:37 AM