kiliu yoa

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6/26/2024, 11:54:48 PM

品の良い、しかし、何か蠢くものを感じる微笑みを貴女は浮かべる。

美しく、儚げで、聡く、穏やかな貴女。

貴女のような人を、きっと妖艶というのだろう。


貴女が私のもとを去ってからは、すべてが灰色だ。

貴女さえ居れば、もう他には何もいらない。

貴女が望むものなら、何だって叶えよう。

私のすべてを貴女にだったら、捧げていい。

だから、どうか、戻ってきて欲しい、私のもとに。


純白の肌、月白の髪、紫翠の眼を持つ、そよ風みたいな貴女。

キャペリンとワンピースを好み、とても似合っていた貴女。


生涯で貴女ほど、愛した人は他に居ない。

今でも忘れられない、否、決して忘れたくない。

私の初恋の人。


「さようなら、わたしが最も愛した人よ。」

貴女はそう言って、私のもとを去っていった。









6/18/2024, 4:19:53 PM

「なんと、哀れな。」

青年は、不敵に笑う。

青年の目線の先には、肥え太った男がいた。

肥え太った男は欲に目が眩み、青年の誘いに魅せられて、たった今失脚した。

肥え太った男は、何やら喚き立てている。

しかし、青年に肥え太った男の喚きは届かない。


肥え太った男は、知らなかった。

欲に目が眩む、恐ろしさを。

他人を蔑ろにした、代償を。


興味が無ければ、人は居ないも同然であることを。




6/15/2024, 4:10:17 PM

昔、好きだった童話がある。

この童話の世界には、暴虐を尽くす王様から民を守る、4人の騎士の話。 

彼らに名は無く、代わりにそれぞれ東西南北と呼ばれていた。

私は、その中でも南の騎士が大好きだった。

彼は、4人の中で最も強かで敵だろうと味方だろうと容赦はしない。

彼には、柔軟な体術と鋭い洞察力を持ち、文武両道の強さがあった。

何より、決して子供を殺さない。 

常に弱者の味方でありながら、冷酷さも持ち合わせている。

矛盾した強さを持つ、彼に幼い私は憧れた。



6/8/2024, 4:19:57 PM

「何故、春(しゅん)…貴男が此処に居るのですか。」

「お久しゅう御座います、高(こう)様。」

高様は私を見るなり、泣き崩れる。

私は高様のもとへ駆け寄り、強く抱きしめた。


高様と私は、帝に直接仕えながらも『宦官』と『間者』という

あまり日の目を見ない、低い地位が共通点となり、月に一度は会う仲だった。

私は三十歳を節目に『間者』を辞し、手紙のやりとりはあったものの、

最後に高様とお会いしたのは、二十年くらい前だ。



「こんな姿を春には、貴男だけには…見られたく無かったのに。」

「高様、先の話や現状など…お聞きしました。」

「そうでしたか。」

高様は、顔を暗くされまが…どこか安堵しているように見えた。

「先の件…帝の遺言を偽り、帝の嫡子様や嫡子様の臣下を殺めるように

 仕向けたのも、高様がお仕えしていた二世皇帝が暗殺されたのも、

 高様、貴男が謀ったことなのですか。」

感情による震えを必死に抑えながら、高様の応えを待った。 


「紛うことの無き、この私、趙高が成したことです。」

先程とは異なり、私と目を合わせ、明瞭な声で申し上げられた。

「ならば、高様…貴男様のお命を頂戴させて頂きます。」

私は、浅く息を吸う。

「私は、高様…貴男様を殺める為に都に呼び戻されたのです。」

私は、今にも涙が零れ落ちそうだった。

高様は、穏やかに微笑まれ、覚悟を決められた表情をされていた。

「申し訳、在りません。貴男様に一回でもお会いすれば、良かった。」

私は涙を流しながら、悔いた。

「過ぎたことは、もう変えられません。」

高様は、私を抱きしめた。

「春、どうか私を殺めて下さい。貴男に殺められるなら、本望です。」

「承知致しました。」

高様は正座をされ、背筋を正された。

私は涙を拭い、高様の横に立ち、左上段に剣を構える。

「行きます。」

私は、高様に最期の言葉を掛ける。

「今迄、ありがとう。」

高様は、静かの最期の言葉を申し上げられた。

私は、剣を振り下ろす。

一太刀で、首の皮一枚残し、高様の首を刎ねた。

高様の首は、高様の膝下に落ちた。














6/5/2024, 4:34:35 AM

怖い、怖い、檻なんて、もう居たくない。

でも、逃げられない。

あなたの言うことを聞いていれば、良かった。

あのとき、あなたが止めてくれたのに。

なぜ、わたしは……あなたの言うことに、あなたの警告に従わず、

自分のプライドを優先してしまったのだろう。

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