kiliu yoa

Open App
4/10/2024, 4:25:39 PM

わたしは、むかしから恋愛がよく分からなかった。

自分自身の気持ちを聞かれることも、苦手だった。

考えや思ったことは有るのだが、それに感情が乗らないのだと思う。

だからか、『浮気とか不倫は、いや!絶対に無理!』

だと言っている人間の気持ちが、よく分からなかった。

人間は、ゴリラとチンパンジーの間の生物で

ゴリラは一夫多妻制、チンパンジーは乱婚、と、わたしは聞いた。

ならば、不倫や浮気は仕方ない。と、わたしは思う。


そんな常識外れのわたしの夫は、とんでもなく女遊びが好きだった。

お見合いの席で、

「結婚後も、あなた以外の女の人と遊んで良い?」

と、言う程に……。

そんな彼に、わたしはこう返した。

「別に良いよ。わたしは、むかしから恋愛感情が分からないから。

 わたしを束縛しないなら、不倫や浮気も大歓迎する。

 でも、約束して欲しいことがあるの。」

彼は首を傾げて、微笑んだ。

「どんなこと?」

わたしは、応えた。

「わたしも、相手の女の人も、大切にすること。約束できる?」

彼は、先程と異なり、真剣な表情と声で言った。

「うん、約束するよ。あなたも、他の女の人も、大切にする。」


あれから色々あったけど、夫との関係は良好で、

ずっと約束を守ってくれている。

わたしは、今も幸せな生活を送っています。

こんな幸せな人生を歩ませてくれた夫には、感謝しかない。

改めて、今日は夫に感謝を伝えてみようと思う。











4/8/2024, 12:22:57 PM

過ぎれば、どんなに長い月日も……本当にあっと言う間だ。

私の家は、彼の家に仕えて、もう2245年目になるように。

そして、私の家は今尚、家を、一族を保ち続けている。

正直、今の時代には家や一族など必要無い。

貴族制は廃れた上、この国では、みな等しく同じ教育が受ける権利がある。

身分問わず、好きな職に就く権利が保証されている。

だから、正直、家は必要無い。


では、何故、家や一族を保ち続けているのだろう。

と、疑問に思うだろう。

それは、簡単だ。

唯、昔話がしたいからだ。

家を保ち続けるのも、

古くからの友人を亡くしてしまうようで、寂しいからだ。

過去を忘れられてしまったら、それはもう無かったことになってしまう。

それが、何よりも恐ろしく、怖いのだ。


あの時、共に乗り越えた困難の記憶も、

あの時、共に分かち合った記憶も、

忘れ去られてしまったら、もう元には戻れなくなる。


だから、私の家は時を紡ぐ。

私にとっての時を紡ぐとは、先祖代々の記憶を語り継ぐこと。

忘れてしまわぬように、無かったことにならぬように、

長年、紡いできた糸を解けてしまわぬように、

私の家と彼の家、他の縁ある家々は、

今日も又、家を保ち続ける為、互いに助け合い、努めている。





4/8/2024, 7:28:31 AM

「もう、貴方とはお別れです。」

そう、彼女から告げられた。

私は、その言葉に何も思わなかった。

私自身、薄々感じていたから。

「そうですか。分かりました。今迄、有難う御座いました。」

私は、彼女に頭を下げた。


「こちらこそ、今まで、ありがとうございました。」

そう言って、彼女も頭を下げた。

「私自身、もう別れだと感じていましたから。」

微笑もうとしたけど、少しぎこちなくなった。

「では、さようなら。」

そう言って、彼女は私に背を向け、去っていった。

最後の最後まで彼女は、涙の一滴も見せず、颯爽としていた。

きっと、こういう彼女の姿に……私は惚れ込んだのだろう。


一筋の涙が流れる、私を見ぬように夕日は……もう沈んでいた。






3/30/2024, 11:09:19 AM

彼は、いつも私の先を歩む人だった。

彼の家に私の家は、代々仕えてきて実感する。

彼らは、天才だということに。

その所以は、明確だ。

いつの時代も彼らは、正気を保ち続け、飄々としていた。

いつの時代も彼らは、俯瞰的で合理的で、冷静な判断を瞬時に下した。

だから、私の代まで家は続いてきた。


正直、悔しくて羨ましかった。

その一種の人間離れした、天賦の才が欲しかった。

私も、いつの時代も正気を保ち続けたかった。

しかし、それは叶わない。

何故なら、彼と私は、他人なのだから。


至極、当然のことだと思うだろう。

だが、私は気が付かなかったのだ。

何せ、彼と私は、対極的な人間なのだから。


対極な人間……だからこそ、互いの欠点を補うことが出来た。

だからこそ、彼の家と私の家は、現在まで続いたのだ。








3/27/2024, 3:20:04 PM

どきどき、ばくばく…。

心臓の鼓動を表す、それらの言葉はとても的確だ。


わたしは、今からあの人に逢いに行く。

正直、不安だった。

あの人に、この想いを伝えて拒絶されたら……。

それでも、あの人に想いを伝えたかった。

その一心で、あの人に文を送った。


「姫さま、来られました。」

従者が御簾に声を掛ける。

「どうぞ、お入りになって。」

御簾から澄んだ声が聞こえた。

「失礼いたします。」

私は、御簾の中に入る。


貴女は、今日も柔らかく微笑んで迎えてくれる。

噫々、なんと暖かいのだろう。

「わたくしに何か、お話しが有るようですね。」

「はい。」

貴女は、いつも本当に察しの良い方だ。

「今更ではありますが、わたしの妾になって頂けませんか。」

私の声が僅かに震える。

「はい。その申し出、喜んでお受けさせて頂きます。」

貴女は、目に涙を浮かべながら震えた声で応えた。

「申し訳ありません。

 もう、あなたさまには……逢えぬとばかり思って居りましたから、

 嬉しくて、涙が零れてしまいました。」

懺悔するように、貴女は心内を打ち明けてくれた。

「そうだったのですね。」

私は、貴女を抱きしめた。

「不安な想いをさせて、申し訳ない。
 
 これからは、貴女に不安な思いをさせぬよう努めて参ります。」

いつもより貴女は、華奢で小さく感じた。









Next