彼は、いつも私の先を歩む人だった。
彼の家に私の家は、代々仕えてきて実感する。
彼らは、天才だということに。
その所以は、明確だ。
いつの時代も彼らは、正気を保ち続け、飄々としていた。
いつの時代も彼らは、俯瞰的で合理的で、冷静な判断を瞬時に下した。
だから、私の代まで家は続いてきた。
正直、悔しくて羨ましかった。
その一種の人間離れした、天賦の才が欲しかった。
私も、いつの時代も正気を保ち続けたかった。
しかし、それは叶わない。
何故なら、彼と私は、他人なのだから。
至極、当然のことだと思うだろう。
だが、私は気が付かなかったのだ。
何せ、彼と私は、対極的な人間なのだから。
対極な人間……だからこそ、互いの欠点を補うことが出来た。
だからこそ、彼の家と私の家は、現在まで続いたのだ。
3/30/2024, 11:09:19 AM