どきどき、ばくばく…。
心臓の鼓動を表す、それらの言葉はとても的確だ。
わたしは、今からあの人に逢いに行く。
正直、不安だった。
あの人に、この想いを伝えて拒絶されたら……。
それでも、あの人に想いを伝えたかった。
その一心で、あの人に文を送った。
「姫さま、来られました。」
従者が御簾に声を掛ける。
「どうぞ、お入りになって。」
御簾から澄んだ声が聞こえた。
「失礼いたします。」
私は、御簾の中に入る。
貴女は、今日も柔らかく微笑んで迎えてくれる。
噫々、なんと暖かいのだろう。
「わたくしに何か、お話しが有るようですね。」
「はい。」
貴女は、いつも本当に察しの良い方だ。
「今更ではありますが、わたしの妾になって頂けませんか。」
私の声が僅かに震える。
「はい。その申し出、喜んでお受けさせて頂きます。」
貴女は、目に涙を浮かべながら震えた声で応えた。
「申し訳ありません。
もう、あなたさまには……逢えぬとばかり思って居りましたから、
嬉しくて、涙が零れてしまいました。」
懺悔するように、貴女は心内を打ち明けてくれた。
「そうだったのですね。」
私は、貴女を抱きしめた。
「不安な想いをさせて、申し訳ない。
これからは、貴女に不安な思いをさせぬよう努めて参ります。」
いつもより貴女は、華奢で小さく感じた。
3/27/2024, 3:20:04 PM