過ぎれば、どんなに長い月日も……本当にあっと言う間だ。
私の家は、彼の家に仕えて、もう2245年目になるように。
そして、私の家は今尚、家を、一族を保ち続けている。
正直、今の時代には家や一族など必要無い。
貴族制は廃れた上、この国では、みな等しく同じ教育が受ける権利がある。
身分問わず、好きな職に就く権利が保証されている。
だから、正直、家は必要無い。
では、何故、家や一族を保ち続けているのだろう。
と、疑問に思うだろう。
それは、簡単だ。
唯、昔話がしたいからだ。
家を保ち続けるのも、
古くからの友人を亡くしてしまうようで、寂しいからだ。
過去を忘れられてしまったら、それはもう無かったことになってしまう。
それが、何よりも恐ろしく、怖いのだ。
あの時、共に乗り越えた困難の記憶も、
あの時、共に分かち合った記憶も、
忘れ去られてしまったら、もう元には戻れなくなる。
だから、私の家は時を紡ぐ。
私にとっての時を紡ぐとは、先祖代々の記憶を語り継ぐこと。
忘れてしまわぬように、無かったことにならぬように、
長年、紡いできた糸を解けてしまわぬように、
私の家と彼の家、他の縁ある家々は、
今日も又、家を保ち続ける為、互いに助け合い、努めている。
4/8/2024, 12:22:57 PM