kiliu yoa

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4/8/2024, 7:28:31 AM

「もう、貴方とはお別れです。」

そう、彼女から告げられた。

私は、その言葉に何も思わなかった。

私自身、薄々感じていたから。

「そうですか。分かりました。今迄、有難う御座いました。」

私は、彼女に頭を下げた。


「こちらこそ、今まで、ありがとうございました。」

そう言って、彼女も頭を下げた。

「私自身、もう別れだと感じていましたから。」

微笑もうとしたけど、少しぎこちなくなった。

「では、さようなら。」

そう言って、彼女は私に背を向け、去っていった。

最後の最後まで彼女は、涙の一滴も見せず、颯爽としていた。

きっと、こういう彼女の姿に……私は惚れ込んだのだろう。


一筋の涙が流れる、私を見ぬように夕日は……もう沈んでいた。






3/30/2024, 11:09:19 AM

彼は、いつも私の先を歩む人だった。

彼の家に私の家は、代々仕えてきて実感する。

彼らは、天才だということに。

その所以は、明確だ。

いつの時代も彼らは、正気を保ち続け、飄々としていた。

いつの時代も彼らは、俯瞰的で合理的で、冷静な判断を瞬時に下した。

だから、私の代まで家は続いてきた。


正直、悔しくて羨ましかった。

その一種の人間離れした、天賦の才が欲しかった。

私も、いつの時代も正気を保ち続けたかった。

しかし、それは叶わない。

何故なら、彼と私は、他人なのだから。


至極、当然のことだと思うだろう。

だが、私は気が付かなかったのだ。

何せ、彼と私は、対極的な人間なのだから。


対極な人間……だからこそ、互いの欠点を補うことが出来た。

だからこそ、彼の家と私の家は、現在まで続いたのだ。








3/27/2024, 3:20:04 PM

どきどき、ばくばく…。

心臓の鼓動を表す、それらの言葉はとても的確だ。


わたしは、今からあの人に逢いに行く。

正直、不安だった。

あの人に、この想いを伝えて拒絶されたら……。

それでも、あの人に想いを伝えたかった。

その一心で、あの人に文を送った。


「姫さま、来られました。」

従者が御簾に声を掛ける。

「どうぞ、お入りになって。」

御簾から澄んだ声が聞こえた。

「失礼いたします。」

私は、御簾の中に入る。


貴女は、今日も柔らかく微笑んで迎えてくれる。

噫々、なんと暖かいのだろう。

「わたくしに何か、お話しが有るようですね。」

「はい。」

貴女は、いつも本当に察しの良い方だ。

「今更ではありますが、わたしの妾になって頂けませんか。」

私の声が僅かに震える。

「はい。その申し出、喜んでお受けさせて頂きます。」

貴女は、目に涙を浮かべながら震えた声で応えた。

「申し訳ありません。

 もう、あなたさまには……逢えぬとばかり思って居りましたから、

 嬉しくて、涙が零れてしまいました。」

懺悔するように、貴女は心内を打ち明けてくれた。

「そうだったのですね。」

私は、貴女を抱きしめた。

「不安な想いをさせて、申し訳ない。
 
 これからは、貴女に不安な思いをさせぬよう努めて参ります。」

いつもより貴女は、華奢で小さく感じた。









3/27/2024, 7:44:35 AM

妻は、嫉妬しない。

例え、僕が他の女と寝ようとも…。

例え、僕が他の女と付き合ってても……。

全く、嫉妬しない。

というか、寧ろ僕に興味が無い。

僕は、見合いの席で必ず聞いていた。

「結婚後も、女遊びして良い?」って。

今までの女性たちは、僕との縁談を断った。

しかし、彼女…後に妻となる人は違った。

「私には恋愛感情?を理解できないから、別に良いよ。

 私を束縛しないなら、不倫も浮気も歓迎するよ。」

と、平然と…至って真剣に応えた。

その応えを聞いた時、この人だ!と思った。

だから、僕は彼女と結婚した。


現在も妻とは、互いに束縛しない、良好な関係が続いている。


改めて、人と人との心地良い関係は十人十色だと感じた。



3/23/2024, 1:59:26 AM

銀の瞳、淡いうす茶色の髪、整った東欧の顔立ち。

俗にいう、美青年であった。

彼の雰囲気は、なんと言えば良いのだろう。

どこか儚げで……そう、本当に生気が無かった。

虚空を纏っているような……人間離れした雰囲気だった。

死神がいたならば、きっと彼のようなのだろう。

実際、彼は処刑人だった。

処刑ならば、大人だろうと…子どもだろうと、平然と殺せる人間だった。

いつからか、高額な暗殺にまで手を染めるように成っていた。

だから、彼はこんなふうに成った。

人間らしさの欠片も、彼は失ってしまった。

だから、人々は彼をこう呼んだ。

『死神』と。


なんと、馬鹿らしいのだろう。

己のことながら、そう思う。

気が付いた時には、もう……何も遺っていなかった。

気が付いた時には、かつての私は何処にも居なかった。













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