kiliu yoa

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2/5/2024, 2:56:04 PM

「あなた……、愛しきあなた。」

私の頬は、紅く染まる。

「どうしたの、聴こえているよ。」

出来る限り、冷静に返事をする。

「あなたのもとに嫁げて、本当に幸せだったわ。

 わたしを愛してくれて、本当にありがとう。」

貴女に強く、抱きしめられる。

「礼を言うのは、こちらの方だ。

 私も貴女と過ごす日々は、本当に幸せだった。

 私を愛してくれて、本当にありがとう。」

私も、強く抱きしめ返す。


嗚呼、もう別れか。

婚姻する前から、聞いていた。

しかし、予想より……ずっと早かった。

ただ、それだけ。

溢れそうになる涙をぐっと堪え、優しく微笑む。


貴女を見送る、その時まで……

貴女が好きだと言ってくれた、笑顔で居たいから。












2/3/2024, 4:10:42 PM

「若いね。」

久しぶりに、そう言われた。

こう見ても、わたしは五百歳くらい。

彼女のように千年以上生きた方から見ると、わたしは未だ若いらしい。

「よく頑張ったね。」

そう言われ、頭をよしよしされた。

「うん!」

嬉しくなって、子どもみたいな返事になった。

恥ずかしい。

久しぶりに褒められて、舞い上がってしまった。

「いやだった?」

そう、彼女に問われた。

「ううん、違うの。久々に褒められたから、舞い上がってしまって、

 恥ずかしくなっただけ。ありがとう。嬉しかった。」

久々に自分と同じ種族と出逢って思う。

この思い出も、あっという間に共有できなくなるのかなって。

人間のように、本当にあっという間に居なくなってしまうのかなって。

「大丈夫だよ。私は人間じゃないから、あっという間に居なくならない。」

「うーん、それなら二百年後、また会おう。」

「いいの?」

「うん!」

「じゃあ、ここで会おう。」

「うん!」

「じゃあね。」

「またね。」


これが貴女との出会い。

今日、貴女と5回目の約束。

あのときは、千年先まで続くとは思わなかった。

遠くで貴女を見つけ、わたしは手をふる。

貴女もまた、手をふりかえしてくれた。


「久しぶりね。」

わたしは、いつものように舞い上がって言う。

「久しぶり。」

貴女もまた、いつものように微笑み、そう言う。

















1/31/2024, 6:21:36 PM

「お久しうございます。我が主君よ。」

「嗚呼、久しいな。遂に私を主君と認めたか。なんの心変りだ。」

「わたくしは、かつての貴方様からの仕打ちを忘れ訳では御座いません。

 しかし、其れ以上に貴方様から賜わった恩が御座います。

 ですから、わたくしは貴方様を主君と崇め、尽力させて頂きます。」

「かつての仕打ちについて謝罪させてほしい。本当に済まなかった。」

「はい。貴方様からの謝罪、聢と受け取らせて頂きます。」



 

1/30/2024, 5:22:33 PM

「お覚悟。」

「嗚呼。」

あなたの凛とした声は、静かに響き渡る。

和多志は今日、あなたに刃を向ける。

今迄、あなたから受けた恩を……和多志は仇で返してしまう。

和多志は……あなたを殺す。

唯一、あなたが望んだ願いを叶えるために。


初めて、あなたを殺すために剣を交える。

あなたの戦法は、知っている。

もう、何度も、何度も、叩き込まれた。

最初は守りに徹し、相手を油断させ、その隙を付く。

相手の集中の糸が切れた、その瞬間をあなたは必ず付いてくる。

単純だが、強力な戦法。

だが、短期決戦に持ち込まれれば、その戦法は崩れる。

和多志は、それを知っている。

だから、和多志は一直線にあなたの心臓を貫いた。

「見事なり。」

和多志の頬を水滴がつたい、急いであなたの、母上に駆け寄る。

「強く成ったな。」

「母上……。」

「ありがとう。わたしの願いを叶えてくれて。…人間に戻してくれて。」

「死なないで、くれ。」

嗚咽が止まらない。

「いやよ。」

嬉しそうに母上は、笑う。

「よく聴いて。失敗して良い、完璧で無くて良い、

万事最善を尽くし、例え短くとも、懸命に生きよ。」

最期の、最期まで凛々しく、穏やかな人だった。


「母上、和多志は……あなたに命を拾われ、

 あなたの子として、生きられて、本当に幸せだった。」






 

1/29/2024, 4:30:31 PM

「お姉さま……。」

「どうしたの、そんな不安そうな顔をして。」

お姉さまは、優しく微笑む。

「以前、お姉さまとお会いした時より青白く、痩せらたように感じます。」

「ふふふ。」

飾り羽のついた扇子で、お姉さまは顔を覆う。

「お姉さま、どうか、ご無理なさらぬように。」

「ええ、代替わりが終わったらね。」

お姉さまは、覚悟が決まっている瞳をして居られた。

「お姉さまに、神のご加護がありますように。」

「ふふふ、ありがとね。愛しきあなたにも、神のご加護がありますように。」

お姉さまは優しく、わたくしの頭を撫でた。

「じゃあね。I love you.」

「I love you, too.」 







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