kiliu yoa

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10/16/2023, 2:11:20 PM

 暖かく、麗らかな、中性美を纏う、魅惑の貴女。

 そよ風のように、私に触れる貴女。

 凪のように、穏やかな貴女。

 竹のように、靭やかな貴女。

 蝶のように、軽やかな貴女。

 何人たりとも惚れぬ、母鷹のように凛々しい貴女。

 貴女の前では、青薔薇も色褪せる。

 貴女の温もりは、巨万の富も価値を成さない。

 この世で最も深く愛す、貴女。

 私の妻として、子どもたちの母として、貴女は幸せでしたか。

 貴女の、風花のように澄んだ声を……鈴のような笑い声を……

 どうか、もう一度だけ、聴かせて……。

 

 


10/14/2023, 2:34:38 PM

 もっと、もっと、上に成らなければ……。

 もっと、もっと、強く成らなければ……。

 あの頃は、かなり思い詰めていた。

 強さばかりを追い求め、いつも努めていた。

 強く成らねば、生きる意味は無い。そう、感じるほどに。

 己の有する全ての才能を、研ぎ澄ませることしか……眼中に無かった。

 若さ故に……無知が故に驕り、傲慢だった。

 かつて、誰よりも完璧で無ければ、己を許せなかった。

 かつての己は、苛烈で独善的だった。

 まるで反面教師にしていた、師匠のように。

 何も考えず、いとも容易く、躊躇も無く、淡々と命を奪ってきた。

 命の重さは、皆等しく同じだ。

 重罪人とて、それは変わらない。

 かつて、命を奪うことは己を強くする手段の一つでしか無かった。

 でも、今は違う。

 今の己は、命を奪うことの重さを知っている。

 己の強さは、他者を思い遣らねば、成立しないことを知っている。

 研ぎ澄ませてきた……己の強さは、他者が苦しまぬ為に在る。

 高みを見るのでは無く、眼の前のことに集中する。

 そして、その一瞬が生涯に幕を閉じる者の『人生』を決めるのだと思う。
 



10/13/2023, 10:47:56 AM

 あの純粋さを持ち続けたかった。

 なんて、今更思う。

 過去は悔いぬ、変えられぬものには、固執はしない。

 幼き頃、親に存分に甘えたかった。

 しかし、もうあの時には戻れない。もう、家族はいない。

 誰一人として、もう此の世にはいない。

 もう……やっと……血の呪縛から逃れられた。

 そう思っていた。

 そして、気が付いた。

 一度、汚れた手は……もう二度と綺麗になることは無いことに。

 此れこそが、血の呪縛という事に。

 ハハハッ…、嗤える。

 まるで、悲劇の主人公みたいに滑稽だ。

 ひどく嗤える話しだろ? 

 嗤ってくれよ、…………頼むよ。

 笑ってくれよ、…………子どもみたいに。

 




  

10/12/2023, 11:50:48 AM

 帰り道は、何気に好きだ。

 当たり前の風景は夕日で朱や紫に染まり、

 昼に見る風景とは、又異なる風景に変わる姿が好きだった。

 家々には、明かりが灯り始める。

 日が暮れ出すと、「家に帰りたくない。」と親に訴える、子どもたち。

 走って、帰える子どもたち。

 ふと、家庭環境によって、そのあたりは変わることに気づく。

 今の子どもは、働くことが出来ないことの方が多い。

 子どもたちがたくさん遊べたり、勉強や部活に集中できる良い面も有る。

 しかし、子どもが親から逃げられないという、悪い面も有るように思った。

 私の偏見だが、そういう親の子どもほど、頼れる人が居ない気がした。

 いつか、私が大人に成れたのなら、

 そういう子どもたちの第三の居場所を作りたいと思った。

 家や学校、職場の次に永く居れる場所。

 もしくは、家や学校、職場より永く居て良い場所を作れたらな。

 空間は難しいとも、そういう逃げれる場所を提供したいと思った。
 

 

10/8/2023, 11:23:04 AM

 休めることは、大事だ。

 私の故郷は、乾燥した内陸の国で主に貿易で栄えた街だった。

 ここの人々、いや、この辺り一体の人々は男も女もよく働く。

 時間があれば、仕事を探し、交渉し、働くほどである。

 それを見て育った子どもたちも、また、よく働く。

 たまに、働き過ぎだと感じるほどである。

 彼らは、贅沢を好まない。

 これは、旅路の話しである。

 私の旅路の移動手段は、荷が多い時はラクダ。普段は馬が多い。

 しかし、私の案内人は皆、馬にも、ラクダにも、乗らない。

 何故かと問うと、贅沢に慣れると困るからと、口を揃えた。

 そして、彼らは僅かな空白の時間を見逃さない。

 休む時は短くともしっかり休み、働く時は短くとも真面目に働く。

 恐らく、その習慣が彼らを支えいるように感じた。

 だから、この街やこの辺り一体は、貧しくとも栄えたのだろう。

 と、ふと思った。

 

 

 


 
 

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